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  • 聖書の中で語られる愛について

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装飾タイル

以前にも書きましたが、この写真の建物である キハーノ邸(奇想邸)はその形もさることながら 装飾も極めて斬新でとても珍しいものでした。 望楼の壁には、まわりにタイルがびっしりと貼り付けられていました。これは、緑の施釉のタイルに、ひまわりがレリーフされた装飾タイルで市松模様になるように配置されています。ひまわり (スペイン語でgirasol)には、太陽を巡る花という 意味合いがあり、この建物が建っているスペイン北部の気候風土から陽光への希求が感じられます。 レンガ積みの外壁を、

    • ミラ邸

      バトリョ邸の完成に刺激を受けたその友人の ペレ・ミラが巨大な建物の設計をガウディに 依頼しました。ガウディはミラのためにまるで詩のような作品を作り上げました。ミラ邸は、 「ラ・ペドレラ(石切場)」とも呼ばれました。 石の断崖に似ているからでしょう。屋上の彫刻は、煙突や空調用の管を装飾するものですが、 砂の城のような雰囲気があります。 この建物は人を夢見心地にさせ、その中庭からは、空が見えます。ミラ邸の正面は、波打つ砂丘のようです。 屋上の彫刻の形を見ると、一見して煙突や空

      • バトリョ邸

        1904年、いくつもの工場を経営する、 裕福なジュゼップ・バトリョがガウディに 別の注文を出しました。ガウディ独特の方法で ある建物の手直しすることを依頼したのです。 バトリョはそこに、彼の大家族を住まわせるつもりでした。その結果は、本当に想像を超えたもの でした。 この家の屋根は、龍の背中に似ています。バルコニーは、鳥の巣のようで、建物の正面は波打っていています。また、ガウディは内装全体も構想し、家具もいくつか考えました。 バルセロナでは、バトリョ邸のことを、 「骨の家

        • グエル公園

          おそらくはサグラダ・ファミリアと同じくらい有名なガウディの作品としてグエル公園があると 思います。 バルセロナの富豪エウゼビ・グエルは1900年、 ガウディに新たな注文を出しました。それは、 60軒の家、食堂、学校、公園などを備えた巨大な住宅地でした。残念ながら、この計画はとても お金のかかるものだったので、実現したのは公園のみでした。しかし、その公園だけでもサッカー場30個分の広さがありました。 この公園は、賑やかな色の壁で囲まれています。 その壁は110メートルもあっ

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        記事

          ベリェスグアルの塔

          建築家としての安定した評価と社会的地位を 獲得していくと同時にガウディは深く熱心に カトリックを信仰していくようになりました。 また、自分のアイデンティティのよってたつ ところである、カタルーニャの地にも強い 愛着を覚えていました。バルセロナの近くで 家を1件注文されると、再びお城のような家を 構想しました。その家には、中世を思い起こさせる、塔や屋根のギザギザ、細く高い窓などが ついています。この時代、カタルーニャはまだ、 スペインの他の地域から独立していました。そして、ガウ

          ベリェスグアルの塔

          アストルガ司教館

          35歳になったガウディは既に著名な建築家と なっていましたが、同時に信仰心も強くなって いきました。食事の量を減らし、より多く祈りを 捧げるようになっていったのです。ですから、 知り合いの司教から、アストルガ大聖堂のそばに 自分のやしきを建てて欲しいと依頼があると、 ガウディは躊躇わずに引き受けました。これは、 自身の才能を神のために捧げる絶好の機会でした。2年の間、ガウディは設計図を検討し続けました。 この住居はパリのノートル・ダム大聖堂のような中世の教会をモデルにして構

          アストルガ司教館

          グエル邸

          ガウディを信頼し、とても親しくなっていた バルセロナの富豪グエルはバルセロナ市内に 自分の「邸宅」を建てることをガウディに 依頼しました。これに対しては、大きな2つの 門がある、巨大な建物が構想されました。これは 細かいところまでたくさんの装飾で飾られました。また、引き伸ばされた楕円のアーチを使用 するのをガウディは好みました。 また屋根の上には、冒頭の写真のような色 とりどりの奇妙な小さな塔が設えられました。 それらの中には、暖炉の煙突と、家の空調管が 隠されています。ガ

          グエル邸

          トレンカディス技法

          産業革命後の大都市出現とそれに伴う 人口急増から発生した建築需要に答えるべくして登場した、若き建築家アントニ・ガウディでした。 そうした中、様々な独特の手法を編み出していったガウディですが、その中でも有名なのが、 トレンカディス技法というものです。 トレンカディス技法とは、陶磁器やガラス、 食器の破片などを集めて適切な形にした、モザイクのことです。これは、建築物の防水・防塵に 役立つばかりでなく、太陽の光を受けてキラキラと輝き、カラフルでとても美しいものです。また、これら

          トレンカディス技法

          奇想邸

          ビセンス邸着工の同じ年、裕福な実業家が スペイン北部に建てる夏用の別荘をガウディに 注文しました。通称エル・カプリッチョ(奇想邸) と呼ばれるこの建物は中世のお城と中近東の 建築の混じり合った建築様式で建てられました。 このような建築様式はガウディの特色のひとつ となりました。 この印象的な塔は城塞の塔にも似ていながら、 イスラムのモスクも連想させます。 塔の頂上にはミラドールという見晴らし台が ついていて、そこに登ると遠くに海が見えます。 色彩豊かなところも、ガウディらし

          ビセンス邸

          ここで少し、サグラダ・ファミリア以外の ガウディ作品にも触れてみたいと思います。 1883年、アントニ・ガウディの最初の 大工事が始まりました。それは、お金持の 銀行家マヌエル・ビセンスの邸宅を建てることでした。 これを建築するに当たっては、建物の内側と外側の全体が調和するように考案されました。そして、その全体が調和するためには、全体が同時に作られる必要がありました。木、鳥、花など自然の要素を取り入れるのがガウディのお気に入りでした。それらをふんだんに装飾に用いたのです。

          ビセンス邸

          カタルニャの外側へ

          ガウディと同じカタルニャ出身の画家である ダリが「嫌悪感を抱くほど」と評した ガウディの超写実主義ですが、個々の彫刻を 見る限り私には嫌悪感は湧いてはきません。 それぞれの彫像は、石に彫刻する前に、粘土、 続いて石膏で、4分の1、半分、最終的寸法の 塑像が作られました。 その作業に打ち込むガウディを想像するにつけ 思い浮かぶのは、可哀想と思えるほどに実物に忠実な形を再現しようとする建築家の姿であって 嫌悪感を抱くようなものではありません。ダリの評価は恐らく、生誕のファサー

          カタルニャの外側へ

          ガウディと自然

          サグラダ・ファミリアは、どれほど比較を 絶したやり方がこれを生み出したかを知らずには理解することが出来ません。 「人がどこまで極端に走れるものか知らねばならない。」カタルニャでは、常に、どこまで 極端に走りうるかを知ることが重要だ。これが あらゆる生成の過程なのである。植物や生きた器官の全てがこうして形成される。並はずれたヴィジョンと緩慢で困難な建築上のメカニズムから 生まれ出た<サグラダ・ファミリア>は、このようにして造り上げられた。」 次のような大聖堂がひとたび完成さ

          ガウディと自然

          極端な写実主義

          サグラダ・ファミリアの塔はごく遠方からも 煌めいて見えます。その様々な面に、ヴェネチア陶器の金色、白、赤が煉瓦のくすんだ黒と入り混じり、生誕のファサードのむき出しになった石と 好対照をなしています。「建築は色彩を放棄すべきではない。反対に、形と量感をいかすため色彩を用いるべきだ。色彩は形を補うものであり、生のもっとも明快な表現である。」 鋳型の倉庫にはこの写真のような装飾の ための模型がびっしりと収められていました。 それらはガウディの作品の極端な写実主義を 裏付けています

          極端な写実主義

          斬新なカトリック

          唯一ガウディ自身により完成されたサグラダ・ ファミリアの生誕のファサードには3つの門 があります。 そのうちの左側は望徳の門で聖家族(ヨセフ、 マリア、キリスト)のエジプトへの避難を表しています。これは海に最も近い門です。この門は 水の世界に捧げられ、白蓮、パピルス、棕櫚、 あひる、水かきのある亀などが表されています。 そこには、ナイル川のあらゆる草木が花開いて いるかのようです。 右手にある信徳の門には大工の徒弟であるイエスが表されています。こちらは、カタルニャの丘に

          斬新なカトリック

          聖なるものへの憧憬

          生誕のファサードの塔に沿って登ってゆくと 「SANCTUS 聖なるかな」の文字の彫刻モチーフがあります。これは釉薬をかけた極彩色の陶器 で出来ていて、粗い地肌の石から浮き出ており、 鐘塔の螺旋状の渦巻型を強調しています。 これについてある詩人は書いています。 「塔に沿って渦巻く、SANCTUS, SANCTUS, SANCTUS……は、3つがそれぞれ父と子と聖霊の三者に献げられている。御父に献げられた最初の SANCTUS は、太陽の光のごとく黄色に、聖霊に献げられた2番目の

          聖なるものへの憧憬

          イトスギ

          サグラダ・ファミリアの生誕のファサードの 真ん中にある愛徳の門の頂上にはこんもり としたイトスギが飾られています。(もちろん 彫刻ですが) イトスギは生命の象徴と言われています。 このイトスギの実が熟してはじけると、 十字架のような形をしています。ガウディは このはじけたイトスギの実を一番上に飾ることで カトリシズムの力とエネルギーを象徴している のです。 あくまでも、自然にこだわり、その要素を 彫刻に取り入れて表現しようとしました。 自然に身近なところにある、動物や植物に

          イトスギ