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詩集

34
詩をまとめています。 恋愛詩多め。
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#片想い

詩|いつかドラマで見たように、

いつかドラマで見たように カーテンの中に隠れてみようよ 窓からなだれ込む風で カーテンがさらさら揺れて わたしたちの影を隠すのよ 隠されてみようよ 揺れるわたしたちの心も

詩|曖昧

雪が降りだしたと思ったら 急に青空が広がって いつの間にか雪が雨に変わり あちこちから水蒸気が上がっているから 「はっきりしてよ」と 空に向かって言ってみたら 隣できみが笑った 曖昧な態度でわたしを振り回す きみに向けての言葉だとは 夢にも思わないという様子で

詩|ドーナツの穴

ドーナツの穴になりたかったの。 生地から型を抜いて、抜いて、抜いて、捏ねて伸ばして型を抜いて、抜いて そうして残った、たったひとつのドーナツの穴。 それを食べられるのはひとりだけだから。手に入れた日は自分が特別だって思えて。 そんな風に、誰かの特別になりたかったのに、ね。

詩|刺繍

ハンカチに 自分の名前を刺繍するように きみの心にも わたしの名前を刺繍できたら 一日の中で二秒くらいは わたしを思い出してくれるのかな 二秒でいい 二秒でいい、のに

詩|まだ帰りたくない

運転席のあのひとを 横目でずっと盗み見ている そして祈っている 赤信号で停まるたび 盗み見をやめなくてはいけないから どうかこの先の信号も その次の信号も タイミングよく青にかわってくれ、と でもそうするとすぐに到着して すぐに別れの挨拶をしなくてはならないから どうかこの道が 不思議な力で数キロくらい伸びてくれ、と わたしはそんなジレンマに踊らされ 途方に暮れながら気付くのだ これが恋というものか

詩|リップクリーム

わたしの下唇はいつも荒れていて、 それを見る度きみは「リップ塗ったら?」と呆れた顔をして、 ついにはどこにでも売っている安いリップクリームを買って来てくれたけれど。 きみは知らないの。 わたしの下唇が荒れている理由を。 きみがあの子と一緒にいるのを見かける度、その悔しさを、唇を噛んだ痛みで紛らしているんだよ。

詩|盗人

この楽しい時間が、 砂が落ち切ったときに終わるのなら。 私は全力で、それを阻止したい。 彼の目を盗んで、 砂時計をひっくり返し、 この時間を永遠にしたい。 たとえ盗人だと咎められようと、 今、この瞬間、 彼の時間を私のものにできるなら。 何度だって盗みを犯すよ、なんて。

詩|宝石

ね、見て。綺麗な宝石でしょう。 ずっと前からこっそり集めていたの。 きみと会えない日はね、涙が溢れるの。 その涙はこぼれ落ちると宝石になって、 手元に残ってキラキラ輝くのよ。 不思議でしょう。 もう瓶いっぱいになったのよ。 だからもっと会いに来て。

詩|日ごと、

あの人に出会った瞬間 わたしの心に 小さなダイヤが生まれた ダイヤは日ごと大きくなり、 光輝き、 嬉しくなって大事にそれを育てた、 のに あの人が他の誰かと話す度 あの人が他の誰かと笑う度 ダイヤが黒く染まっていく 今じゃあもう光はない まるで燃え尽きた炭のようだった

詩|恋文

今から内緒話をするね わたし、あなたが好き 好きで好きで好きで あちこち痛いの ひとを好きになることが こんなに痛みをともなうなんて あなたと出会う前は 知らなかったの 痛いのはきらい でもたとえ痛みで のたうち回ったとしても わたし、あなたがすき

詩|きみの笑顔

曰く人見知りで 表情の乏しい 無口なきみが 最近は満面の笑みで わたしの話に声を出して笑って そのせいでずれてしまったマスクを 何度も何度も直すから 明日は何の話題で 笑ってもらおうかな、なんて 毎晩ベッドで考えている

詩|まばたき

もしかしたら、知らないうちに まばたきがシャッターで 脳がフィルムで 保存した記憶をいつでも自由に プリントできるようになっているかもしれないから わたしはまばたきのシャッターを切るの きみといるとき まばたきが多いのはそういうことだよ