マガジンのカバー画像

詩集

34
詩をまとめています。 恋愛詩多め。
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

詩|雨

朝から空が おんおん号泣しているから 今夜ばかりは何を叫んでも 誰の耳にも届かないだろう 雨がやんでしまったから、もう私の嘆きを掻き消すものはない。こんな日だけなのに。特に最近は空気が澄んでいるから、私の声は空を切り裂いてどこまでも飛んでいくだろう。だからこんな雨の日くらいだったのに。空ですら、私が嘆くことを許してくれないなんて。 慰めてくれるのは、初めて一人暮らしをしたときに買って、長い時間をかけて私だけのにおいが染み込んだ、鈴蘭柄のタオルケットだけだ。それに顔を埋め、

詩|もう会わない

数ヶ月離れてみて分かったの わたしたちもう会わないほうがいい 久しぶりに顔を合わせて、声を聞いて、体温に触れて、 あっという間に時間が過ぎて わたしの心に残った感情は ひとつだけよ 寂しい ただただ寂しい さっき離れたばかりなのに 寂しくて寂しくてどうにかなりそう 真っ直ぐにわたしを見ていたまぁるい瞳や わたしの名を呼ぶ声を思い出して 涙が溢れそうなの 寂しい、とても寂しい こんな想いをするくらいならわたしたち もう会わないほうがいい

詩|寂しい夜に、

きみは寂しくない? わたしはこんなに寂しくて、 でも疲れているきみに迷惑かけたくなくて、 自分の気持ちを 鎖でぐるぐる巻きにして、 ジャンプして、のしかかって、 ありったけの力を込めて、 押し殺すの。

詩|恋のいいところ

恋のいいところは階段を上る足音だけであの人だって分かることだわ、と。 コレットは言った。 確かにそうね。 かつんかつんとアパートの階段を上る音が聞こえる度、 わたしは何をしていてもすぐに手を止め玄関に急ぐ。 扉を開けた彼が不思議そうに首を傾げる姿が見たくって。

詩|彩る朝

足がぶつかるくらい小さくて白い 二人用のダイニングテーブルに 焼きたてのパンが入った籐のバスケットが置かれて すぐに珈琲の香ばしいにおいがこちらまで漂ってくる わたしはベッドで片目を開けて きみがコーヒーサーバーを揺らす様子をこっそり眺めていた 狭い部屋だ たぶん狸寝入りはばれている けれどそのくすぐったさも含めて わたしたちが帰る場所だ これからは何度でも こんな朝を迎えられるね

詩|群衆

来る日も来る日も わたしのステージに わたしは群衆として立つ 起伏のない物語に 拍手喝采のカーテンコールはない 誰も群衆を褒めない スクランブルの群れに埋もれたわたしを 見つける人なんていないのだから けれど、でも、わたしは、わたしも……嗚呼、