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詩集

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詩をまとめています。 恋愛詩多め。
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2024年1月の記事一覧

詩|嘘吐き

彼はいつも「大丈夫?」と問う 心配をかけたくなくて、私はいつも 「大丈夫だよ」と答えていた 彼にも自分にも嘘を吐き続けた 彼はもう「大丈夫?」と問わない もう私を気にかけてくれない 「お前は強いから、俺がいなくても平気だよな」 彼の言葉に私は「そうだね」とまた嘘を吐いた

詩|曖昧

雪が降りだしたと思ったら 急に青空が広がって いつの間にか雪が雨に変わり あちこちから水蒸気が上がっているから 「はっきりしてよ」と 空に向かって言ってみたら 隣できみが笑った 曖昧な態度でわたしを振り回す きみに向けての言葉だとは 夢にも思わないという様子で

詩|ドーナツの穴

ドーナツの穴になりたかったの。 生地から型を抜いて、抜いて、抜いて、捏ねて伸ばして型を抜いて、抜いて そうして残った、たったひとつのドーナツの穴。 それを食べられるのはひとりだけだから。手に入れた日は自分が特別だって思えて。 そんな風に、誰かの特別になりたかったのに、ね。

詩|醜くおぞましい

まさかわたしの中に、ここまで強烈で、醜くおぞましい感情が存在しているなんて。 明るく誠実で、どんなことでも楽しもうという矜持が、揺らぐ日が来るなんて。 この感情の名前は聞いたことがある。嫉妬だ。わたしは今日、生まれて初めて嫉妬に出会った。

詩|刺繍

ハンカチに 自分の名前を刺繍するように きみの心にも わたしの名前を刺繍できたら 一日の中で二秒くらいは わたしを思い出してくれるのかな 二秒でいい 二秒でいい、のに

詩|まだ帰りたくない

運転席のあのひとを 横目でずっと盗み見ている そして祈っている 赤信号で停まるたび 盗み見をやめなくてはいけないから どうかこの先の信号も その次の信号も タイミングよく青にかわってくれ、と でもそうするとすぐに到着して すぐに別れの挨拶をしなくてはならないから どうかこの道が 不思議な力で数キロくらい伸びてくれ、と わたしはそんなジレンマに踊らされ 途方に暮れながら気付くのだ これが恋というものか

詩|フラジール

あなたは随分、わたしを大事に扱うのね 高価な陶器でも触るよう丁寧に、慎重に、細心の注意を払って、 まるでフラジールのラベルが貼られているみたいに 大事にしてくれるのは嬉しいの でももう少し雑に扱っても構わない なんなら、そうだ、うなじをがりりと噛んだっていい

詩|どうか絶望よ、

胸の中で育てた絶望に頬ずりして 火照りを鎮める 太陽を手に入れようだなんて そりゃ無理な話だったんだ 太陽のそばに居られるだけで 充分だったはずなのに いつからかわたしは贅沢になった だからどうか絶望よ、 その冷たさで わたしの目を覚ましておくれ

詩|ドクターフィッシュ

身体中に開いた 数え切れないくらいの傷口に ドクターフィッシュを住まわせて 負った傷の原因を 全部丸ごと食べてもらえたらいいのに

詩|リップクリーム

わたしの下唇はいつも荒れていて、 それを見る度きみは「リップ塗ったら?」と呆れた顔をして、 ついにはどこにでも売っている安いリップクリームを買って来てくれたけれど。 きみは知らないの。 わたしの下唇が荒れている理由を。 きみがあの子と一緒にいるのを見かける度、その悔しさを、唇を噛んだ痛みで紛らしているんだよ。

詩|おめでとう、

 その報告を受けたとき、わたしは人目も憚らず飛び跳ねて大喜びした。  長い時間を一緒に過ごしてきた幼馴染みと、職場で一番仲が良い友だちという、わたしの人生においてなくてはならない大切なふたりが、付き合い始めたのだ。飛び跳ねたくもなる。 「おめでとう、お幸せにね」  張り上げた声は、風船みたいに膨らんで、上擦っている。  感情が溢れそうな声に、ふたりは目を丸くしたあと顔を見合わせ、フフと笑った。とても幸せそうに。とてもそっくりな笑顔で。まるでわたしには見えない、ふたりだけ

詩|空洞

ねえ、どうしよう 心の空洞を埋められるだけのものが まだ見つからないの 詰められそうなものは 何でも詰めてみようと 試しているのだけれどね 例えば庭の落ち葉も詰めたし 木工用ボンドも流し込んだ 角砂糖もあるだけ詰めたのよ でもだめみたい あなたがいい あなたが恋しい

詩|盗人

この楽しい時間が、 砂が落ち切ったときに終わるのなら。 私は全力で、それを阻止したい。 彼の目を盗んで、 砂時計をひっくり返し、 この時間を永遠にしたい。 たとえ盗人だと咎められようと、 今、この瞬間、 彼の時間を私のものにできるなら。 何度だって盗みを犯すよ、なんて。

詩|きっとふたりなら

空に浮かぶあの きらきら輝く大きな光まで ジャンプして 頬ずりしてこよう わたしたちならできるよ そして地上に戻って来たら ふたりで頬ずりして 「よくできたね」って称え合おうよ