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2024/07/11 競争力CA「SNS上で親が子をコンテンツ化することの是非」


今日のテーマ

SNS上で親が子をコンテンツ化することの是非

記事

導入

みなさんこんにちは。今回は「ソーシャルメディア上で親が子をコンテンツ化することの是非」について議論したいと思います。
やや研究領域に近いテーマになってしまっているのですが、主に研究している分野とは離れているのでお許しを。
さて、以下で記事を紹介しています。信ぴょう性の低い記事ですし、なんならソーシャルメディア上での出来事でもないのですが、問題の本質はここにあるのではないか、と思ったのでこの記事を選択しました。

記事の内容

日刊ゲンダイ『「毎日かあさん」西原理恵子氏の娘が告発 浮かび上がる“実録エッセイ”と家族のあり方』
「毎日かあさん」の作者、西原理恵子は娘である鴨志田ひよからブログで告発を受けていた。(現在は削除済み)その中には自らの個人情報を漫画にして出版することに対する苦しみが綴られており、そのことを母(西原理恵子)に言い出せなかったようである。

議論の立場と前提

ソーシャルメディアの台頭により、親が子の動画や写真を投稿するということは増えているようだ。さらに、プライバシーの問題や子の同意に関する問題等、議論の余地がある。
そこで今回は「SNS上で親が子をコンテンツ化することの是非」について議論したい。
私はソーシャルメディア上で親が子をコンテンツ化することに対して「賛成」の立場から立論します。皆さんソーシャルメディア上で親が子をコンテンツ化することに対して「反対」の立場から立論してください。

議論の前提
・今回の議論における「子」は未成年者を想定する。
・今回は規制における制度設計上の議論はしない。
・賛成=推奨ではなく、賛成=容認という立場で立論する。
・アカウントの所有者は親であり、「鍵アカウント」ではなく公開されたアカウントであることを想定する。
・子の写っている写真・動画もしくはそれらを題材にした漫画・エッセイを公開することを「主目的」としたアカウントを想定する。
・収益化の有無は議論の制限として設けない。

意見・論点

1. SNSは表現の場であり、むやみに規制することは筋が良くない

子の様子をSNSに上げ、シェアすることそのものを社会的に反しているとは考え難い。また、内容に問題があった場合はコンテンツモデレーションといった機能が働き、適正に対処される。

2. 子育てにおける重要な情報源となりうる

地域コミュニティアプリ「PIAZZA」を利用した調査(n=998)では子育て中に孤立・孤独を感じたことがあると回答した女性は全体の74.2%にも上った。そのような状況下で、子育て「あるある」や役立つライフハックといったリアルな情報を知ることができる意義はある。また、明治とボーネルンドによる子育てに関する調査(n=1,214)では、子育てに関する情報源に当てはまるものとして「ネット検索、育児系アプリ、家族・友人」に次ぐ4位に「SNS」が位置している。また、子育てに対する不満やパートナーに対する不満を紹介する投稿では、多くの共感の声が寄せられていることから、子育てにおける心の支えとなっている可能性もある。

3.(特に2に関連して)なんらかの特性を持った子たちについて知る機会となる

障がいのある子や、境界知能・グレーゾーンと呼ばれる子の認知が世で進んでいるのは一種SNSの影響が大きい。また、難病や関わり方の難しい発達障がいのある子への関わり方の参考になる情報も多い。さらに、それらの情報を参考にすることによって、自分の子になんらかの特性があった場合に早期発見に繋げやすい。
Qグレーゾーンなどの認知向上にはなるとは思うが、それをマイナスのベクトルから目をつける人たちもいるのでは(ネガティブイメージの流布など)。
Aまずは親の素質。昨今はコンテンツの細分化が進んでいるし、コメント欄閉鎖などの措置だったりもできる。
Q
A

4. 子役という職業がSNSに移行しただけなのではないか?

自分の子が不特定多数の人々の目に晒されるというのはSNSの対等によってもたらされたわけではない。その一例として子役が挙げられる。TVや雑誌といったメディア露出の場がSNSに移行し、親→事務所というマネジメントの構図が、親が直接的に子をマネジメントするようになったと考えることもできるだろう。そのため、仮にアカウントを収益化していたり、アフィリエイト案件を受けていたとしても、それらを児童労働とみなすことは困難ではないか。
Q子役はそれ自体がコンテンツとなっている(ドラマやバラエティーなど)。SNSでドラマなどではなく日常生活を掲載することがメインとなるため、完全に移行したとは言えず、プライバシーの確保が問題になるのでは。
A確かに、小役という職業が完全にSNSに移行したとは言えない。プライバシー確保などの危険性は既に予想される反論再反論の4で回答した通り。
Q親のネットリテラシーに関連して。子役と親のSNS運営の違いはコンテンツ提供の主体が私人か法人かが大きな違い。法人は緊急時の対応などといった体制が整っているが、私人(素人)によるSNS運営はそれがない。それによる問題はないか。
A今後もSNSは発展していくので、リスク・リテラシーなどの対策も今後発展していってほしい。

5. 子の進路を広げる可能性もある

fotowa家族フォト総研によれば(n=459)子供の写真をSNSに投稿して良かったこととして、22.3%が読者モデルのスカウトがきたと回答している。他にも楽器演奏に長けた子どもに対してメーカーがオファーをしたり、メディアからのオファーが来たりすることもあるようだ。才能ある子にとって、SNSはチャンスと捉えることもできるかもしれない。
Qやはり子供は親の支配下にある以上、親の考えに流されてしまいがちである。なので、ゆたぼんの事例のように親の考えによっては進路を狭めてしまう可能性もあるのでは。
Aゆたぼんの事例は父親がモンペであり、彼が変わったのはSNSの反響(主に批判)があったから。親の民度が低いとSNSへの露出が増える傾向にあるようだが、そういう人がSNSへ露出することで、SNSの反響などがあってむしろ改善するきっかけになるのでは。
Q毎日かあさんは突然告発されて問題点が明るみに出た。SNSへの露出によって家庭の性質が変わることもあるとのことだが、これは一般論とは言えないのでは。
Aゆたぼんのように炎上を狙った戦略でない場合もある。
Q子供本人が主張すればよいのでは。
A年齢的には厳しいものもある。

予想される反論・再反論

1. 子へのプライバシーの侵害となる

親と子は別人格であり、子のプライバシーは親であっても侵害してはならない。アメリカでは子のプライバシーは親の権限を超越しないが、日本はその限りではない。また、子の発達段階によっては、自らの意思を表明できなかったり、親の意見に逆らえなかったりすることがある。
→これに関しては反論の余地はない。子とのコミュニケーションを行い、両者合意の上で投稿することが望ましいのだろう。また、子の意思表明が困難な場合は両者合意という形は困難かもしれない。そこに関しては「赤ちゃんモデル・子役」なども存在しているのだから、ある程度は仕方のないことなのだろうか。

2. デジタルタトゥーの危険性

やや1に関連して。子が望まないコンテンツを公開された場合、SNS上でデータを完全に消去することは非常に困難である。悪意ある第三者に利用される可能性も十分にある。自分のいわば「黒歴史」が半永久的にインターネット上に残り続ける可能性があり、これらは子にとって重大なリスクとなる。
→明確に有害と看做されるコンテンツ、例えばアダルトコンテンツや暴力的なコンテンツはコンテンツモデレーションによって削除される。また、ユーザによる報告でも投稿が削除されることはあるので、SNS上の自浄作用はある程度はたらいていると言える。
Q自浄作用はあるにはあると言われるが、どの程度なのか。
A(数値的には)ない。感覚的にはあるとは言えるかも。
Q黒歴史に関して。本人の感覚とSNSの運用ポリシーのズレはあるのでは。
A本人の感覚は完全には推し量れないが、裁判などのアプローチでプラットフォームに削除させるよう動くことはできる。

3. 誹謗中傷、トラブルの危険性

海外では「愚かな行動をする子供」を揶揄する投稿や、それに対して誹謗中傷を行うネットミームのようなものが数多く存在している。子供の動画が炎上・バズった際には、場合によって無実の子供が謂れのない誹謗中傷を受ける可能性がある。
→近年は開示請求による裁判が一般化しつつあるので、子を守る術はある。
Q.トラブルの危険性について。SNSによって代理ミュンヒハウゼン症候群を助長するという海外の研究結果がある。子ども本人は健康にも関わらず、親が子供を病気だとして拡散したりして利益を得ようとする動きがあるが。
A.だからといって子供をSNSに掲載するな(規制)というのはすこし違うのでは。今回の例であれば医薬品が絡んでくるので、関係機関の連携などによって改善すべき。
Q.たしかにごもっともだが、この問題の根底はSNSにあるのでは。
A.病気などの発信については、新たなガイドラインを制定する必要性があるのでは。あとは親のネットリテラシー次第。

4. 親のネットリテラシー

現役世代・親世代のネットリテラシーに依存する部分が多い。実際、他の子供にモザイクをかけなかったためトラブルになった、極めてプライベートな情報を発信してしまったといった事例も発生している。
→これは重大な問題と言える。一方で、今回の議論の射程に含んでいるのは子の写っている写真・動画もしくはそれらを題材にした漫画・エッセイを公開することを「主目的」としたアカウントであるため、アカウント運用における知識を学んでいる親であればリテラシーは一定程度保たれていると考える。
QSNSで子供を掲載することによって、場所が特定されてストーカー被害などにつながるのでは。
Aこの問題はSNS全体の問題であると考えられる。ただ、親のネットリテラシーの低さは問題なので、技術面・機能面での解決を期待したい。

5. そもそも子をSNS上に投稿する意味とは?

SNSに子を投稿する意味は果たしてあるのだろうか?上記のような多くの問題点があるのであれば全面的に子をSNSで投稿することは全面的に禁止すべきなのではないか。
→SNSは更なる成長を遂げ、より深く私たちの生活に根ざすことになるだろう。アルバムを作る感覚と同じような感覚でSNSを運用すると考えても不自然ではない。それに、現在このような投稿が多く見られるのはすなわち、インプレッションで示されるニーズがあるためである。
Qこれはそもそも子供のためになるのか。
A子育ての問題は普遍的にある。SNSにも起因するものもあるが、そもそも家族の日常生活というコンテンツの宿命なのでは。コンテンツ主によって育てられた子供はそのこと(子供をコンテンツにすること)を不幸だとは思わない。

【ビジネスの観点からの質問】
Qプラットフォームのブランドイメージの維持といった運営の観点から、子供をコンテンツ化しないほうがよいのでは(ビジネスの観点から)。
Aたしかにそうだが、このような動き(規制よりは緩和)はトレンドといえる。運営はその動きに乗らないとはいえない。

【先生からのコメント】

子供をSNSを通じて不特定多数へ露出させることは、ネットリテラシーの観点からみてもやはり問題だろう。話題に上がったテレビにせよ、今回の議題であるSNSにせよ、問題の本質は変わらない。この問題を解決するには法制度面やプラットフォーム側の機能変更といった規制が不可欠になる。ただ、SNSによって成り上がっていった人が多いのは事実なので、そこには留意したい。


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