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研究書評(2024年度)


4月11日

著書名:地域新電力を巡る近年の情勢
著者名:芳賀 普隆
 この論文の序盤では、地域新電力に関する近年の情勢が議論されている。筆者は、東日本大震災後のエネルギー政策の変化、固定価格買取制度(FIT)の導入、電力小売の完全自由化など、日本のエネルギー環境がどのように進化してきたかについての概観や地域新電力の概要が述べられており、さらに、自治体と公民協働の視点から、地域エネルギー政策の研究に焦点を当てた上で、地域新電力の重要性とその背景について語られている。
 地域における再生可能エネルギーの活用とその意義についても議論がなされている。地球温暖化対策とエネルギー自給率の向上を目指し、化石燃料や廃棄物の削減を通じて二酸化炭素の発生を減らすことができると述べられている。再生可能エネルギーは地理的に偏在しており、特に農業や漁業などの第一次産業がある地域ではバイオマス発電を活用することが可能である。また、分散型発電源としての再エネの利点として、大規模集中電源に比べて停電リスクの低減が挙げられる。
  この論文では地域活性化にも触れられており、その中で筆者は、再生可能エネルギーを地域活性化の解決策として利用することを提案し、自治体エネルギー公益事業体の設立や地域新電力の導入に注目している。また、地域新電力は、地産地消のエネルギー供給と地域経済の循環を促進することで、地元企業や市民グループがエネルギー事業の主体となり、地域の再エネ活用が必要であるとされている。

4月18日

著書名:自治体新電力の現状と今後の課題についての研究
著者名:西哲生

  この論文は、地域の活性化を目指すために地方自治体が出資した新電力(以下「自治体新電力」と呼ぶ)の現状と課題について、私自身が自治体新電力の構想策定に携わった経験と、自治体新電力への訪問や電話インタビューの結果に基づいて議論している。
  筆者は、日本の電力市場において、新電力事業者の供給電力量の上位を見ると、大手エネルギー会社や通信事業者が主導していると繍帳する。例えば、テプコカスタマー(東京電力100%出資)やエネット(NTTファシリティーズが40%、東京ガス、大阪ガスが30%出資)、東京ガス、KDDI、大阪ガスなどが該当する。また、地域経済の活性化を目指すために生活協同組合や農業協同組合、自治体などが設立した地域新電力が小規模で存在している。
  自治体新電力の現状について、2014年度の環境省の調査によれば、全国の自治体のうち976自治体が回答し、その中で「具体的に事業を検討または実施している」と回答した自治体は144自治体(14.7%)、「構想を検討しているまたは策定している」と回答した自治体は75自治体(7.7%)、「内部で検討を始めた段階」と回答した自治体は45自治体(4.6%)で、全体の27%にあたる264自治体がエネルギー事業について検討を始めているという。また、現在約50の自治体新電力が創設されて稼働している。
  自治体新電力は、再生可能エネルギーの普及を後押しするFIT制度により、太陽光発電やバイオマス発電などの新たなエネルギー源を創出している。また、既存の廃棄物発電などで生み出される電気をベースに会社を立ち上げるケースもある。後者の場合でも、地域エネルギー会社の創設によって地域にお金が残るという点では、新たに電源を立ち上げる場合と同様であり、初期投資が少なくて済むという点では、こうした方法で会社を立ち上げることも有効である。
   自治体が新電力を創設するための方法として、以下のポイントが挙げられる。まず、自治体が環境計画でCO2削減目標を設定している場合は、新電力創設をその政策とリンクさせることが重要だ。エネルギー消費費用を地域内にストックさせる目標は大きな動機付けになる。また、地域内の既存の発電施設や潜在的な電力源を活用することも重要である。特に発電量の規模が大きい場合は投資期間が短くなる。最後に、自治体単独での立ち上げやエネルギーマネジメント会社の活用も検討すべきだ。柔軟な対応を心掛け、ハードルを下げることも重要である。
  自治体が新電力を創設するための方法として、以下のポイントが挙げられる。まず、自治体が環境計画でCO2削減目標を設定している場合は、新電力創設をその政策とリンクさせることが重要である。エネルギー消費費用を地域内にストックさせる目標は大きな動機付けになる。また、地域内の既存の発電施設や潜在的な電力源を活用することも重要である。特に発電量の規模が大きい場合は投資期間が短くなる。最後に、自治体単独での立ち上げやエネルギーマネジメント会社の活用も検討すべきであるという。柔軟な対応を心掛け、ハードルを下げることも重要である。
  自治体新電力各社は、まだ設立から2~3年という若い企業であるが、現在の優先事項は事業計画を着実に推進することである。2019年に発生した台風19号による大型災害のリスクや、電力供給の分散化への需要の増加は続くだろう。また、各社は公共施設から一般家庭や民間事業者への顧客拡大を図り、大手電力会社との価格競争にも直面する予定である。これに対応するためには、国の財政支援や自治体間の情報交流組織の設立が必要である。

4月25日

論文名:再生可能エネルギー発電設備に関する課題・方策への自治体の認識 -太陽光発電設備等の設置規制に関する条例を制定する自治体を対象として-
著者名:高久ゆう、杉田 早苗、土肥真人

  筆者は、本研究によって以下のことを明らかにした。自治体の課題と方策に関しては、「事業者と住民の関係」に関する課題が最も多くの自治体で認識されており、再エネ設置における最大の課題の一つである。この課題に対しては、住民の地域に対する価値観を重視しながら合意形成を進めることが重要であると考えられる。そのために、景観や住民への配慮条件を法令整備することも方策として考えられる。また「開発場所」に関する課題では、山林での伐採を伴う開発や管理されていない土地での開発が問題視されており、山林等の自然環境の保全や管理に関する方策と同時に考えていくことが肝要と言える。さらに「住民意識」に関する課題に対しては、住民意識の啓発だけでなく、地域へのメリットが期待できるエネルギーの地産地消の推進などより広い視点でのエネルギー転換の方策が必要である。
  また、条例を制定した自治体の実態によって分けられた8つのパターン毎の分析では、以下のことが明らかになった。きっかけの開発と住民意見の両方がある自治体では、規制や住民の反対への対応などの緊迫した課題に対応することが重視されている。一方で、比較的緊迫した課題が少ないと考えられるきっかけの開発はあるが、その代わりにこれといった住民の意見はない自治体では、エネルギー問題に対し最も幅広い視点での方策の認識があった。再エネ設備設置による問題が顕著化してしまうと、その対応に追われて幅広い視点からのエネルギー転換の方針の検討が非常に困難となることが考えられる。現在問題が発生していない自治体においても、早急に再エネ設備設置やエネルギー転換の方針が検討されることが求められる。

5月1日

論文名:風力発電の理解教育に伴う市民意識の変化 -千葉県銚子市の事例- 
著者名:安藤 生大

  2019年7月30日、経済産業省と国土交通省は、洋上風力発電の開発を先行的に進めるため、「有望な4区域」を指定した。これは、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」に基づくものであり、今後は地元自治体などを交えた協議会の設置や風況・地質調査の準備が始まる予定である。
  筆者はこの論文において、上述した「有望な4区域」に指定されている千葉県銚子市に位置する国の指定天然記念物である屏風ヶ浦にて将来的に予定されている、東京電力による大規模な洋上風力発電の建設の際に地域住民の風車建設に対する理解を得ることが、風力発電のスムーズな導入において必要不可欠なポイントとなると考察し、調査を行った。
  調査では、筆者が大学で行った講演の前後で受講者の環境意識の変化を調査した。省エネ、省資源の意識、電気代に対する認識、銚子電力の認識、屏風ヶ浦と洋上風力発電に関する意識、地域への帰属意識(コミュニティアイデンティティ)、地域への愛着(トポフィリア)に関する質問を設定した。
  調査の結果、その地域に風力発電の設置を目指して地域住民からその理解を得ようとする場合、風力発電の環境的な意味(低炭素な電力供給媒体としての役割)に加えて、設置場所のでき方や地形、地質、気候的な特徴を説明すると、より深く風力発電をその場所に設置する必要性が理解され、肯定的な理解につながりやすいことがわかった。さらには自治体新電力を利用したエネルギーの地産地消や他地域との差別化の観点を取り入れた理解教育を行うとより効果的であると考えられる。

5月16日

論文名:地上再生可能エネルギーから宇宙太陽エネルギーへの拡大 
著者名:石川 容平, 松室 堯之, 篠原 真毅 
 
第5次エネルギー基本計画はパリ合意の影響を受け、再生可能エネルギーを主力電源とする方針を示した。2050年までに温室効果ガスを80%削減する目標がある。具体的な手法として、海洋インバースダムと水素貯蔵システムを組み合わせた洋上エネルギーセンターの構想がある。この洋上発電所は高速な需給調整機能を持ち、再エネ拡大を推進できるが、このような洋上発電所の展開には地政学的問題がつきまとう。ただ、これは宇宙太陽光発電の最小規模の地上基地局となるため、地政学的問題に左右されない宇宙再エネシステムが構築できる。宇宙太陽エネルギーは共有資源であり、エネルギーの冗長性と国際紛争の軽減が期待される。
我が国のエネルギー基盤は自給率が低く、エネルギー安全保障上大変脆弱である。現状では、原子力再稼働への国民感情の悪化もあり、火力に頼らざるを得ない。しかし、全世界で再エネは受け入れられており、我が国も取り残されている。筆者は、我が国の排他的経済水域には豊富な再エネがあり、海洋国家として独自の再エネ開発が可能であるとする。我が国独自の再エネ開発はCO2削減にも当然効果的であり、我が国のエネルギー問題の解決にも貢献できる。
温室効果ガスのみが気候変動の要因ではないが、温室効果がなければ地球表面の平均温度はマイナス18度と計算される(Stefan–Boltzmannの法則)。地表の平均気温との差は33度であり、赤外線を吸収するCO2ガスのみで33度の効果がある。過去100年間での濃度上昇100PPMで3.3度の気温上昇に相当するが、気象庁のホームページによると、この数字は0.73度である。
CO2の濃度増加は温暖化の負の要因ではなく、全世界がCO2排出削減に取り組むことは合理的である。また、CO2濃度の上昇を防ぐために海洋植物や熱帯雨林が重要な役割を果たしていることを忘れてはならない。海洋汚染や森林伐採などにも対策が必要であり、自然災害の激化を減らすためにはCO2の削減と環境保全の両方が必要である。再エネは環境を変化させず、生物のバランスを崩さない範囲で利用されるべきである。
再エネの利用方法を開発することが重要であり、NEDO再生可能エネルギー技術白書によると、再エネの利用可能な量は限られている。しかし、数千年から数万年の範囲では実質的に無限といえる再生可能エネルギーも存在する。技術開発の可能性を見据え、地球温暖化要因を正確に把握することが重要であり、有効な技術開発を進めるために効果的に資金を使う必要がある。2100年には、省エネ技術が進んでおり、電力使用量が劇的に減少していることを期待する。
日本は省エネ技術の先端を行っており、2100年には電力使用のモデルとなる技術を持っている。途上国が存在しない2100年の世界の総電力使用量は、一人平均1kWを用いることができると仮定すれば、110億kWとなる。地球が受ける太陽エネルギーは約120兆kWであり、再エネで世界の総電力需要を賄った場合には地球の平均温度がわずかに低下する程度の影響がある。再エネは様々なエネルギーに変換され利用されるが、地球の慣性モーメントを利用するなど、さらなる技術開発が必要である。再エネの利用は、生物多様性に悪影響を与えない組み合わせが重要である。

5月23日


論文名:地域における再生可能エネルギーの導入とリスク応対
―カリフォルニア州のCCA(Community Choice Aggregation)を事例に―
著者名:奥 愛(立教大学経済研究所研究員)

この論文で筆者は、カリフォルニア州のCCA(Community Choice Aggregation)に着目した上でさあらに具体的に公的な非営利電力供給業者であるMCE(Marin Clean Energy ≒ 自治体新電力)を取り上げて分析する形で、日本の自治体がエネルギーの地産地消を目指して再生可能エネルギー供給する事業に関わる際に直面するリスクへの対応について検討している。
筆者はMCEから日本の自治体新電力が学びとれることとして、ガバナンス面では地域選出の代表理事により理事会が構成されており理事会での意思決定プロセスが積極的に情報開示されていること、財務面では関与している自治体からの補助金に頼らず事業からの収益で活動が成り立っていること、CCA と地域電力会社の間で役割分担がなされていることを挙げている。
MCEでは価格変動リスクへの対応として、基金の積立てや短期間の電力調達契約を迅速に締結できるようリスク管理方針の改定,急な電力遮断への対応としてディマンドリスポンスができるプログラムの開発やマイクログリッドの整備等を行っている。
また、長期の対応として、長期電力購入契約の活用や再生可能エネルギーの固定価格買取制度プログラム(日本で言うFIT/FIP制度)を通じた長期買取りを行っている。長期の対応としては、長期電力購入契約の活用や再生可能エネルギーの固定価格買取制度プログラムを通じた長期買取りを行っている。
常時の対応としては、太陽光パネルと蓄電池をセットで普及させMCEが顧客の蓄電状況をモニターし、管理してピーク時間の調整や仮想発電所を活用した電力供給の調整等を行っている。これらの取り組みは日本の自治体新電力にとっても参考となるだろうとしている。
カリフォルニア州のCCAの事例を通じて確認できたことは、電源を再生可能エネルギーへとよりシフトさせながらも電力価格を低下させる仕組みが制度設計のなかにうまく組み込まれていることである。また、この仕組みを成り立たせるCCA自体は住民合意のもとに成り立ち、活動状況を情報発信することで地域参加者が理解できるよう積極的な広報活動が行われている。

5月30日

論文名:市街地更新を景気とした地産地消型の熱電併給事業展開のあり方に関する研究 -札幌都心部と高外部の連携に着目して-
著者名:小森廉太  村木美貴

論文要約:
  本論文では、札幌市の再エネ導入の現況と、郊外部における再エネの発電ポテンシャルを分析する事で、地産地消を目的とした再エネ導入の可能性を明らかにしている。
  筆者の調査によれば、札幌市市街地では現在、木質バイオマスなどの再エネを活用した熱供給(冷水や温水等を一カ所でまとめて製造し、熱導管を通じて複数の建物に供給する事業のこと)が多く行われているが、全建物のうち70.4%が熱供給設備に接続されていない現状にある。ただ、脱炭素達成目標年の2050年までにいくつかの建物が耐用年数超過などで建て替えられることを考えると、今後の熱供給設備への接続率は向上していくことが考えられる。
  札幌市郊外部における再エネ発電ポテンシャルは、札幌市が積極的に活用を促進している廃棄物発電(ごみを焼却する際の熱により高温高圧の蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すことにより発電を行う方法のこと)と太陽光発電を主な電源として想定して計算したところ、合計で50.9MWhとなる。これは現状の札幌市都心部の消費電力量の約8割に相当するという。
  このことから、筆者は都市部と郊外部が連携した再エネ熱電併給拡大が重要であると主張する。例えば、建て替えといった市街地更新による熱電併給システムによる電力と、郊外部の廃棄物発電や太陽光発電の電力をコージェネレーションシステムによって一括受電し調整して供給するという事業モデルを作り上げることで、地域に賦課した再エネ導入が可能になると分析している。
  また、地域に賦課した再エネ導入のためには、適切な事業性評価体制の整備も大切であると筆者は主張する。この事業モデルは地域経済効果を目的としたスキームであるため、どうしても公共が費用対便益を踏まえた新電力事業者などへ出資を行うことが必要となる。その際、適切な出資(費用対便益が1.0となるレベル)を可能とするために、対象地域内での評価体制の拡充や事前の事業計画評価を緻密に行うことが必要であろうと筆者は分析している。

6月6日

論文名:福岡県におけるエネルギーの地産地消事業に関する事例調査
著者名:堀 英祐

 この論文では、福岡県内における地方新電力がどれだけエネルギーの地産地消にむけて事業展開しているか(「エネルギーの地産地消事業」)などについて、各自治体へ向けてヒアリング調査し、それぞれの事業形態や独自の取り組みについてまとめられている。
 その結果、新電力は福岡県内では2050年の脱炭素社会の実現や供給信頼性の高いエネルギー供給システムのための分散型エネルギーシステム、新たなエネルギービジネスによる地域活性化などの目的で注目され、普及してきていることがわかった。ただし、エネルギーの地産地消を全面に押し出している事業者などは福岡市、北九州市、糸島市など24の事例のみであった。また、「エネルギーの地産地消」を押し出した自治体の中でも、事業規模や発電規模、年間調達電力のうち地元資源由来の電力割合や販売電力の地元販売割合といったものには新電力によって様々な違いがあることがわかった。
 なお、筆者は地元資源由来の電力割合や電力の地元販売割合の違いについて特に着目しており、実際にデータなどで電力割合を示している事例は決して多くはないことが調査からわかっていることを付け加えたうえで、「エネルギーの地産地消」をエネルギーの割合で捉えるところまでは考慮されていないのが実態として見えてきたという。
 このことから、今後は地元資源を活かした更なる地域活性化や脱炭素社会実現のため、「エネルギーの地産地消」事業の事業実態をより分かりやすく表現して、発信していくことが求められるのではないだろうか。

6月13日

論文名:地方自治体主導による再生可能エネルギーの生産・販売と新電力事業者の選択に関する住民意識の構造分析
著者名:川波匠・高橋義文・佐藤剛史・矢部光保

【本文要約】
  本論文は、従来の大手電力会社から地元の新電力事業者への電力購入先切り替え行動に関する要因を分析したものである。その結果、新事業に期待している人ほど、切り替えに積極的であることがわかったという。具体的には、地産地消に貢献できること、地域経済の活性化につながること、より安価で良質な電力サービスが提供されることに高い期待が寄せられているようだ。
   また、分析の結果、電力サービスと共に付帯サービスも期待されている。具体的には、高齢者安心見守りサービス、災害情報・不審者情報提供サービスが挙げられる。
  さらに分析を進めると、地元に愛着のある人ほど、新事業への期待が大きく切り替えには積極的であることがわかった。そのため、地元に愛着のある人が多く集まる地域行事などにおいて、宣伝・営業活動を行うことが有効であろう。
  分析を踏まえた今後の課題として、筆者は本調査は電力の自由化開始前に行ったものであるためとして、以下の点を課題として挙げている。電力事業者変更に伴う料金等の「メニュー探索コスト」や「変更手続きコスト」等の阻害要因を考慮していないことと、回答者に対しての情報提供が十分でなかったことである。
  これらの課題を踏まえて、さらにより詳細な分析を行うことで、地元新電力事業の導入に取り組む地方自治体等に有益な施策を提言することが期待される。

6月20日

論文名:自治体風車の今後の活用について
著者名:出野 勝、延命 正太郎

〈論文要約〉
地方自治体における再生可能エネルギーの普及は、風力発電所によるものが多いために地方自治体と再生可能エネルギーの関係ンに関する課題を探る上で有効なものに成るのではないかと考えたた選んだわけだが、筆者は、自治体風車の現状として、日本においての再生可能エネルギーの導入規模が300MWを超えており、地域の再生可能エネルギー導入の普及や啓発に貢献した事実を強調。一方で自治体風車に多い単機の風車や小規模な風力発電所でのリプレイス (機器更新)については、同規模の風車の生産がすでに終了していることや、維持費が高額であり採算性が取れないこと、また国による支援制度の未構築を理由に難しくなっているという現状を挙げた。今後の自治体新電力として、再生可能エネルギーへの取り組みの多様化を図り、自治体新電力への参入や、合成出力によるハイブリッドエネルギーサイトの構築、自家消費システムとしてのスマートグリッドの構築を目指すことを挙げられている。これらを組み合わせた施策を取ることで、採算性の取れた再生可能エネルギーの地方への普及が進んでいくのではないかとしている。

6月27日

論文名:自治体新電力の現状と課題 ~アンケート調査及び地域付加価値創造分析を通して~
著者名:稲垣 憲治、小川 祐貴

〈論文要約〉
  本論文では、日本における自治体新電力の現状と課題を把握するため、全国各地にある40の自治体新電力に対してメールなどを通じて調査を行った。
 その結果から、電力の調達や供給先の不足、大手電力会社と比較した営業力の弱さなど、自治体新電力の現状の課題が明示された。また、現状の自治体新電力は前述した課題から全体としてはその目的を十分達成しているとは言えず、今後は組織としての強化がさらに必要であるとした。また、鹿児島県日置市のひおき地域エネルギーを対象とした、法人企業統計の値や従業員の名目所得、そしてヒアリング調査などを用いた地域付加価値創造分析を行い、事業実施に伴う経済付加価値などを定量的に評価した。その結果、地域付加価値総額は2,700,000円などとなった。この結果から筆者は、事業形態によって当該値は大きな違いが生じうるとしたうえで、地域内での専門知見・ノウハウを蓄積し、実施可能な部分から業務の内製化・地域化を図ることが1つの重要な戦略となると分析している。また筆者は、本論文においてはデータの制約からひおき地域エネルギーのみの分析に留まったが、今後、様々な事業者へ広く協力を仰ぐことで、様々な自治体新電力を事業形態ごとの地域付加価値の比較分析の対象とし、多様な運営形態・戦略を地域経済循環の観点で評価していきたいとしている。また、本論文では深く検討できなかった自治体新電力をいかに発展に誘導するか、また、発展要因の分析や自治体の役割について、主に農村振興・地域経済分野等で展開されてきた内発的発展論を踏まえ検討していきたいとしている。


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