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2024年6月13日 ゼミCA ~学校給食無償化の是非について~


記事

「給食費無償化」とは、学校給食の費用を生徒の保護者から徴収せず、自治体や国が公費を用いて賄う制度のことである。法律では「義務教育の無償」が定められているが、これは授業料が徴収されないという意味で、給食や修学旅行などの費用は各家庭の負担となる。この中で負担が重いと言われているのが給食費だ。公立学校の小学生1人あたりの給食費年額は1994年度で3万8213円だったが、2018年度では4万3728円(文科省『子供の学習費調査』)。この四半世紀で5000円以上、上がっている。親年代の給与が減っていることもあり、負担が重いと捉えられるのは当然だ。月額にすると3644円、一食あたり200円弱で廉価とも言える。だが子どもの育ちを社会全体で支えようと、「栄養のある食事を無償で提供すべき」という声も強く、青森市や練馬区を除く東京都区部のように、給食の無償化に踏み切る自治体も出てきた。しかし世界と比べてみるとまだまだその制度は整っておらず、2017年の時点で無償化を実施している自治体は4.7%である。そんな中、給食費の未払いが発生している公立小学校は2016年の時点で41.6%という問題もある。貧困家庭や少子高齢化問題の解決策として期待されるものの、「学校給食の無償化」を全国で実施するにはまだまだ問題が残っている。時間があれば給食の存在意義についての是非も議論したい。

私は無償化に反対の立場を取りますので、皆さんは賛成の立場で議論をお願いいたします。

〈追記〉
現在教育基本法では、給食費の未払いを理由に給食を食べさせないのは「教育上差別」とされ禁止されている。ただし「学校給食法」において、その費用は保護者が負担することと明記されている。つまり、教育基本法で禁止されているからといって給食費を払わなくていいことにはなっていない。

前提

議論の範囲は小学校に限定する。
Q 今回の議論はすべての小学校で無償化すべきか。
A その通り。
Q 給食無償化は現段階は自治体負担で行われているが、国策として無償化すべきか。
A 現段階は自治体負担で行うこととする。

意見・論点

1. 財政負担

給食費には食材費だけでなく、光熱費や人件費なども含まれる。無償化してしまうと限られた予算から捻出する必要があり、その結果、新たな税制が導入されるか、他の教育施策や施設の改善などが滞り、教育全体の質に対する投資が不足する可能性がある。
Q 文科省の調査によると、現在全国のうち3割は給食無償化を実施できている。このことからも、財政面では全国区での給食無償化は可能ではないか。
A 自治体によっては財政状況から無償化が不可能なところがある。
Q 給食費無償化という政策には、物価高騰や子育てによる保護者の金銭的負担の軽減という側面もあるが。
A 物価高騰によって、自治体の財政負担も増加している。

2. 保護者の意識低下

給食費未納問題の主な原因は、「保護者としての責任感や規範意識」60.0%、「保護者の経済的理由」33.1%という。経済的な理由よりも、保護者の意識や価値観の問題を理由とする割合が高い。無償化はこういった意識低下を助長し、その結果食べ残しなどの問題が発生する可能性がある。

Q. 公共財への投資に対して。
A. 食べ残しをキーワードにしたかったわけではなかった。
Q.「保護者としての責任感や規範意識」60.0%とあるが、調査が少々ずさんで根拠にするには弱いのでは。
A. 調査不足。
Q. それから、文部科学省の調査によると小学生一人あたりの必要費用のうち6割ほどが給食費に用いられており、教育費(教科書代など)自体には対して投資をしていない。このことから、給食費無償化によって子育ての経済的なハードルが下がるのでは?
A. 金銭的に子育てのハードルが下がるとあったが、その結果としてネグレクトなどにつながるのでは。

3. 給食の質や量の低下リスク

「食」は、育ち盛りの子どもの体を作る大切な基盤である。無償化によって食材費や調理費の削減が発生すれば、質や量を今まで通り維持できるか懸念される。
Q. 食育の観点から、財政的に厳しくてもおかずだけ提供する(補助給食)といった給食無償化の施策を実行しているが。
A. 完全給食でない以上、足りない食品は家庭で用意する必要がある。その結果、栄養バランスなどにばらつきが生まれるのでは。
Q. 憲法上、義務教育は無償で行われるべきである。そして食育も義務教育の一環と言えるため、給食無償化は実施すべきであると考えるが。
A. 学校給食法によると、給食費は保護者が納入するものとされている。
Q. 給食無償化されても給食の質が下がることはないのでは。
A. 一旦回答は保留する。

予想される反論・再反論

1. 貧困家庭にとって大きな助けになる。給食費を払えない家庭は少数だが一定数存在する。

「就学援助制度」を活用すると、自治体によって条件は異なるが、給食費が全額免除になる。また、自治体によっては分割納付できるなどの対応が可能。
参考:茨木市では、市内小学校在籍で、一世帯の合計所得が所得基準額を下回っているか、生活保護を受けている人が対象。

Q. 給食費無償化によって自治体の財政負担は増えるということだが、現在の給食費免除制度も自治体が負担している。また、現在の免除制度は自治体によって偏りがある。給食費無償化によって、自治体間の偏りがなくなるのでは。
A. 貧困層がいるから現在の制度は存在しているといえるのではないか。また、自治体間の偏りは自治体の税収の違いなどからどうしても発生するのではないか。
Q. 現在の制度は個別に免除する制度だが、認知不足や制度を利用することへの抵抗感などによって貧困層を完全にはカバーできていない。このことから、現制度には限界があるのでは。
A. 制度について調べる人は調べるので、認知不足は発生しないと考える。
Q. 制度に取りこぼしが発生するのでは。
A. どうしても発生してしまうので、規定などを定めるべき。

2. 無償化することで、給食費の集金事務や滞納対応の解消になる。給食費が無償化されると、給食費を集金する手間が減るだけでなく、滞納があった場合の催促といった手間が省けるため、教職員の時間や精神的負担を軽減させることができる。

最近、給食費回収には「公会計化」が導入されつつある。公会計化とは、学校給食費を自治体の会計に組み入れることである。2022年の時点で、公会計化を導入しているのは26.5%で、導入の準備・検討段階の自治体を含めると全体で57.1%に上っている。この「公会計化システム」を促進させるにより、教員の業務負担の軽減(一校あたり年間190時間の業務削減効果)・保護者の利便性の向上(12の金融機関から納付可能)に繋がる。

Q. 未納入家庭に関して、給食費未納という事実は子供への精神的負担を与える。それを解消できるという意味で、無償化は行うべきではないか。
A. 教員と保護者の連携が重要で、子供には罪はない。給食は子供に与えられた権利であるから、全員に等しく与えられるべきである。

参考文献

一般社団法人 全国PTA連絡協議会
https://zen-p.net/scog/g211.html - gsc.tab=0
https://zen-p.net/spta/p321.html - gsc.tab=0
日本の学校は、先進国中で特に無償給食の実施率が低い
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/10/post-99824.php
学校給食費の法的根拠
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/50990.pdf
給食費が払えないとどうなる?払えない時の対処法や未払いの割合も解説
https://www.a-tm.co.jp/top/cardloan/no-money/school-lunch-fee/ - de9a02b7bd507497
学校給食費未納の問題について
https://benesse.jp/kyouiku/200711/20071122-76.html
学校給食費の公会計化について①〜概要〜
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/09/04/1420661-1_1.pdf
給食費未納はモラルの崩壊か?―背景に隠れた子供の貧困とは
https://synodos.jp/opinion/info/18478/
(3)学校給食費の公会計化について
https://www.city.kitakata.fukushima.jp/uploaded/attachment/43474.pdf
学校給食費徴収・管理に関するガイドライン
https://www.mext.go.jp/content/20230821-mxt_kenshoku-100003364_4.pdf
23区で唯一、給食が無料ではない練馬区。子育てしやすい街ではなかったのか?
https://iwasetakeshi.net/2023/09/subsidy-for-school-lunch-fee/ - :~:text=その中で、唯一導入,て対応しています。
茨木市 就学支援制度 
https://www.city.ibaraki.osaka.jp/kikou/kyoikuiinkaikyoikusoumu/gakumu/menu/shugakuenjo/shuugakuenjo.html

先生のコメント

重要な話で、もともとこの政策は貧困対策が目的であった。現在までこの問題が残っているのは、政策が協議された当時の政党(自民党 vs.社会党)間の妥協によるものである。現在、国民が金銭的負担の増加に反対しているために無償化政策は協議されているが、もし給食費を無償化をするのであれば、やはり増税は必至となるだろう。ただ、この問題は重要なものであるため、今後の選挙には注視していくべきであろう。


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