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今週のTop Tier VCニュース!#13(2022/4/24週)

株式市場の不安定さは続いていますが、スタートアップへの投資は引き続き活発です。2022Q1の世界のベンチャー企業の資金調達は 8,835 件で$143.9Bに達し、前四半期比 19%減となったものの、2022Q1は過去4番目に大きな資金調達額となりました。先週(#12)までの傾向とは少し異なり、今週はLater-stageの投資案件も幾つかピックアップしましたが、株式(Equity)と負債(Debt financing)の合わせ技での資金調達手法が現在のマーケット状況を反映した特徴なのかもしれません。

今週の投資先ハイライト

■ コードテストの"SonarSource"が$4.7Bの評価額で$412Mを調達

主な投資家

  • Insight Partners

  • General Catalyst

概要

SonarSource Inc.は、General CatalystとAdvent Internationalが、Permira Holdingsとともにリードし、既存投資家のInsight Venture Partners参加したPE Growthラウンドで、$4.7Bの評価額で$412Mを調達し、調達総額は$457となった。

スイス・ジュネーブに拠点を置くSonarSourceのオープンソースおよび商用プラットフォーム(SonarLint、SonarCloud、SonarQubeと呼ばれる)は、29のプログラミング言語にわたって自動コード修復を提供します。同社によると、同社の製品は35万社の500万人以上の開発者に利用されており、そのうち2万人が有料顧客となっています。

このソフトウェアは、Bitbucket、GitHub、GitLabなどの一般的な統合開発環境内に組み込むことができ、バグやセキュリティ脆弱性がないかコードを継続的にチェックし、クリーンなコードを直接開発プロセスに埋め込むことができます。

SonarSourceの年間売上は現在$175Mで、毎年50%ずつ増加しているといいます。収益の約45%を北米で得ているにもかかわらず、米国では比較的知られていません。


■ "Harness"がSeries Dで$3.7Bの評価額で$230Mを調達

主な投資家

  • Norwest Venture Partners

  • Battery Ventures

  • GV (旧称: Google Ventures)

概要

Harnessは、2021年1月の前回ラウンドから2倍以上の評価額となる$3.7Bで$230Mの新規資金調達を完了したことを発表しました。Norwest Venture PartnersがリードしたSeries Dでは、新規投資家としてJ.P. Morgan, Capital One Ventures, Splunk Ventures等が参加し、ServiceNow, Menlo Ventures, IVP, Citi Ventures, Battery Ventures, Alkeon Capital, GVなど全ての既存投資家が参加ました。同ラウンドは、$175Mの株式と$55Mの負債による資金調達が含まれています。

最新のソフトウェアデリバリープラットフォームを提供するHarnessのCEO兼共同設立者は「今日のソフトウェア経済において、企業はソフトウェア開発チームの迅速な技術革新に依存しています。我々は、革新的で安全なソフトウェアを大規模に提供するために必要な完全なソフトウェア・デリバリー・ソリューションを開発者チームに提供し、一流のチームが求める開発者体験を提供し続けていきます。」と説明しています。

開発はあらゆるベンチャー企業にとって最も重要な部分の1つであり、特にテクノロジーやソフトウェアに関わる場合はそうです。だからこそ、DevOpsソリューションは非常に価値があり、Harnessに多くの注目が集まっているのも同じ理由です。Harnessは、AIを使ってDevOpsプロセスを簡素化します。ユーザーがこの強力なソフトウェア・デリバリー・プラットフォームを使用する理由は、継続的デリバリー、継続的インテグレーション、クラウドコスト管理などが挙げられます。

Harnessのミッションは、世界中の2,700万人のソフトウェア開発者一人ひとりが、エンドユーザーにコードを迅速、安全、確実、かつ効率的に提供し、開発者の体験を劇的に向上させることです。


■ "Upside" としてリブランドしたキャッシュバックアプリのGetUpsideが $165Mを調達

主な投資家

  • General Catalyst

  • Bessemer Venture Partners

概要

Upside Service Incは、Series Dで$1.5Bの評価額で$165Mを調達した。同ラウンドはGeneral Catalystがリードし、既存投資家のBessemer VenturesとBuilders VCが参加した株式による$65Mと、負債による$100の資金調達です。本日のラウンドと同時に、同社はアプリの名称を GetUpside から Upside に改称し、顧客と企業の両方に「アップサイド(上昇)」を提供するという信念を反映させると発表しました。

キャッシュバック・アプリケーションのプロバイダーであるUpsideは、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、一部のレストランや食料品店など、地元の参加企業で買い物をすると現金報酬が得られる、わかりやすいキャッシュバックアプリです。アプリ内の地図上にボーナスを獲得できる店舗が表示されるので、ユーザーは簡単に見つけることができます。

Upsideのアプリは好評で、5万社以上のビジネスパートナーと3000万人以上の消費者が、アプリまたはパートナーアプリを通じて自社のキャンペーンにアクセスでき、キャッシュバックを通じて総額$550M以上を地域社会に還元していると説明しています。


■ 次世代5G RAN技術を提供する"Verana Networks"がSeries Bで$28Mを調達

主な投資家

  • Spark Capital

概要

Verana Networksは、ミリ波帯向けの画期的な5G RAN技術の商用化に向け、Series Bで$28Mの資金調達を実施し、2020年創業以来の累計調達額は$43Mに達しました。同ラウンドは、Series Aの投資家でもあるDC Investment Partners(DCIP)がリードし、Spark CapitalなどSeries Aの投資家がすべて参加しました。新たな投資家には、Taiwania CapitalとTDK Venturesが含まれます。

5G New Radio(5G NR)は、信頼性が高く大容量で低遅延の無線接続を必要とする幅広いアプリケーションのための世界的な通信規格として登場しました。5Gは、サービスプロバイダーだけでなく、企業や防衛用途にも採用されつつあります。Verenaは、高密度な屋外スモールセルの展開に優れた経済性をもたらす専用設計のソフトウェア定義型ハードウェアで、新しい5G技術プラットフォームを一から構築しています。

2020年4月の創業以来、Veranaは米国とインドで70人以上の従業員を抱えるまでに急成長しています。今回の資金調達により、Veranaは今後12カ月で50%以上の成長を遂げ、研究開発、マーケティング、営業、技術サービスの各チームを拡大する計画です。

革新的な5G無線アクセスネットワーク(RAN)ソリューションを開発するVerana NetwroksのCEO兼共同創業者は、「ギガビットの固定無線アクセスからメタバースまで、数十億ドルの収益増加をもたらす5Gアプリケーションは、ネットワーク容量の大幅な増加を必要とします。Verana Networksは、サービスプロバイダが広帯域の5Gアプリケーションを提供するために、豊富で安価なミリ波帯をコスト効率よく利用することを可能にします。この最新の資金調達ラウンドは、以前のラウンドで確保した資金と同様に、次世代5Gネットワークに対するVerana社のビジョンに対する投資家の信頼を示すものです。」と述べています。


■ グローバルな分散状態を管理を可能にする"Convex Systems"がSeries Aで$26Mを調達

主な投資家

  • Andreessen Horowitz(a16z)

  • General Catalyst

  • SV Angel

概要

Convex Systemsは、Andreessen Horowitz(a16z)がリードし、General Catalyst, Netlify, Neo, 個人投資家などの既存投資家が参加たSeries Aで$25.7Mを調達した。1.5年前に創業したスタートアップの評価額は$128Mで、Andreessen HorowitzのパートナーであるMartin Casadoがボードメンバーに就任しています。

開発者向けソフトウェアのConvexの創業者たちは、過去10年の大半をDropboxで働いていました。彼らは、何十億GBものユーザーファイルをAmazonのクラウドから自分たちが構築した社内システムに移行するという、驚異的な偉業を達成するのに貢献しました。そして今、彼らはその技術の限界に嫌気がさしています。Convexの共同設立者兼CEOは「私たちは世界最大のデータベースをいくつか作りましたが、今では私たちでさえ、ほとんどの人にとって最適なツールではないと確信しています」といいます。

昨年、Netlify($2.0B)とVercel($2.5B)をユニコーン評価額に押し上げた波に乗り、Convexは、データベースとサーバーのパッチワークであることが多いフードの下のウェブ開発を、データベースに全く頼らずに単純化するというアイデアを持っています。

NetlifyとVercelなど、フロントエンドとバックエンドのプログラミングを分離するソフトウェアが登場し、ウェブ開発が身近になりました。開発者はウェブサイトやアプリを更に容易に作れるようになったものの、顧客と接する製品が正しく動作するためには、バックエンドのエンジニアが必要です。

Convexのソフトウェアは、アプリの「状態」を管理するという難しいバックエンドのタスクを引き受けることで、フロントエンドエンジニアにバックエンドの機能を提供することを目的としています。

2020年後半に創業され、2021年11月にSeed資金を調達し、今回の
Series Aは、同社がまだベータテスト中の製品で収益を上げる前の段階です。現在、ベータ版は数百人の開発者に公開されていますが、このような人たちを最初に参加させるのが、Convexのビジネス戦略です。開発者たちの間で評判が広まれば、彼らが働く会社に製品を広める可能性があるため、個人向けの無料版と、企業向けの有償版の両方を提供する予定です。この「ボトムアップ」のアプローチは、Netlifyやその前のGitHubと同じです。両社ともその賭けで成功し、現在では収益の半分以上を法人顧客から得ています。


■ 荷物保管スタートアップの"Bounce"がSeries Aで$12Mを調達

主な投資家

  • Andreessen Horowitz(a16z)

  • General Catalyst

概要

Bounceは、Andreessen Horowitz (a16z)リードし、General Catalyst (2021年12月のSeed Roundのリード投資家) と他の多くの投資家が参加したSeries Aで$12Mを調達しました。

世界中の都市で旅行者向けの荷物預かりサービスや、都市住民向けの荷物受取サービスを提供するBounceは、今回の資金調達で、イタリア、フランス、ポルトガル、英国を中心としたヨーロッパへの進出を加速させるとともに、中小企業へのさらなる収益拡大のためにさらなる垂直統合を図る計画です。同社は、実店舗を持たずに世界最大の小売チェーンを構築することをミッションとしています。

Covid-19が旅行業界に与えた影響にもかかわらず、Bounceはパンデミックの間だけでも100万ドル以上を地元企業に支払ったといいます。

BounceのCEOは「この機会を利用して、さらに多くの地元企業が収益源を多様化できるようにすることに興奮しています。特に、多くの中小企業が生き残るためにピボットするのを見たように、パンデミックは、複数の収入源を持つことの重要性を浮き彫りにしました。今回の資金調達は、世界中のローカル・ストアの既存ビジネスの拡大を支援すると同時に、Bounceのユーザーに対して、物理的な持ち物に縛られない生活を送る機会をさらに提供するという、我々の取り組みにおける大きなマイルストーンとなります」と述べました。

Bounceはヨーロッパで拡大を続けており、ロンドンで約200社、パリで170社、さらにマドリッド、ローマ、ブダペスト、ドブロブニクなどの都市でパートナーを獲得しています。また、2021年に38倍に成長した大陸での成長に備え、昨年リスボンに新たなヨーロッパ本部を設立しました。

2018年に設立されたバウンスは、北米、ヨーロッパ、アジア、オセアニアの世界7000以上の拠点で事業を展開しています。


■ 人材争奪戦勝利を支援する報酬プラットホームの"Ravio"がSeedで$10Mを調達

主な投資家

  • Spark Capital

  • Northzone

概要

Ravioは、ステルスから抜け出し、Northzoneがリードし、Spark CapitalとCherry Venturesが参加したSeedラウンドで$10Mを調達した。

急成長するデジタル企業にリアルタイムの給与データと分析を提供するRavioの主なベンチマーク製品は無料で利用できます。シェアリングモデルに基づいており、企業はワンクリックのコネクターを使って目立たないように安全にデータを提出することができ、その代わりに市場のベンチマークにアクセスし、類似の企業と比較することができます。

業績評価サイクルの実行から、ストックオプションに関する応募者の教育まで、Ravioの幅広いツール・ポートフォリオによって、企業は社内で報酬を管理・説明することができます。

Ravioの共同CEOは「初日から報酬を正しく設定することは非常に重要であり、規模が大きくなればなるほど難しくなります。私たちが成長していく過程で、チームメンバー一人ひとりの適正な報酬を決定するのに役立つ、信頼できるリアルタイムのデータを見つけることができませんでした。その結果、優秀な人材を失い、重要な人材を採用する機会を逸してしまったのです。この問題に対して、まだ誰もより良い解決策を構築していないことに驚いています」と述べています。


投資環境

● 世界のベンチャー投資は2022Q1に冷え込んだが、世界のユニコーン数は最高値を記録した

  • CB Insightが「State of Venture Q1'22 Report」を発行

  • 2022Q1の世界のベンチャー企業の資金調達は 8,835 件で$143.9Bに達した。前四半期比 19%減となったが、2022Q1は過去4番目に大きな資金調達額となり、米国だけで資金調達総額の約半分を占めた

  • 新たなユニコーン誕生数は前四半期比15%減の113件であったが、世界のユニコーン数は1,070件となり、前年同期比62%増で過去最高を更新した

  • メガラウンド($100M以上)は350以上のディールで73.6Bに達し、世界の資金調達総額の51%を占めた

  • M&Aは7四半期連続で増加し、Q1'22には2,983件と過去最高を記録したが、IPOとSPACは大幅に減少し、ともに前四半期比40%以上減少した


● 地政学的な対立にもかかわらず世界のM&Aは好調を維持

  • PitchBookの最新の「Global M&A Report」によると、2022年第1四半期の世界のM&A活動は、ロシアのウクライナ侵攻による不透明感から発表済みの案件が減少する一方で、交渉済みの案件が予定通り完了するという二極化したものとなった

  • 2022年第1四半期の最終取引件数は、2021年後半に見られた熱狂的な活動から減少したが、過去5年間と比較すると健全であった。

  • PEは引き続きディール活動の中で大きな割合を占めており、最大規模のディールでもかなりの割合を占めている。当四半期に成立した大型案件20件のうち8件は、金融スポンサーが買収したものであった。


● 米国のマイクロファンドは2021年に強みを発揮した

  • 米国のマイクロファンド($50M以下の資金調達したベンチャーキャピタルファンド)は、2021年に過去最高の339に達し、$5B近くを集めた

  • マイクロファンドは、大規模なファンドには真似できない独自のメリットをVC業界に提供しており、例えば、製品化前の若いスタートアップに対してリスクを取ることができ、地理的にもセクター的にもポートフォリオを多様化させることが可能です

  • 2021年に記録されたSeedスタージの中央値$2.6M規模では、依然としてマイクロファンドが資金調達に参加したり、希望に応じてリードすることも可能である

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