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読書抜き書き1_井深大「わが友 本田宗一郎」

さっきもいった通り、人生は見たり、聞いたり、試したりの三つの知恵でまとまっているが、その中で一番大切なのは試したりであると僕は思う。ところが世の中の技術屋というもの、見たり、聞いたりが多くて、試したりがほとんどない。僕は見たり聞いたりするが、それ以上に試すことをやっている。その代り失敗も多い。ありふれたことだけど、失敗と成功はうらはらになっている。みんな失敗をいとうもんだから、成功のチャンスも少ない。本田が伸びた伸びたって、最近みんながどうも不思議がるが、種を明かせばこれ以外にない。やっているだけ知っているということだ。その点、僕自身がいくらかよその技術屋よりも試しているから意志が強い。本に書いてあるから大丈夫やれといって指示するのと、おれがやってみて大丈夫だったからやれるというのでは、やる方も全然感じが違う。安心してやれる。だから僕は、試すことが一番大切だとつくづく思う。

井深 (以前は)ひとつの専門を非常に狭く深くやったといって社会的に大変高く評価された。だけどこれからは、専門が段々薄れていって、今まで言われなかったことを一生懸命やるということが、二十一世紀に必要なことになってくると。言い換えれば、コンピューターで答えが出てくるようなことは、いくらやっても専門であるという評価は出て来ないんじゃないかという気がするんです。全体として眺めるということが非常に重要になってくるから、手っとり早く言うと、左脳の世の中じゃなしに、右脳の世の中になってくると思うんですがね。そのためには、教育をまるで変えなきゃだめであると。


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