見出し画像

「ワープロ 運命の最終テスト」プロジェクトX 挑戦者たち(後日談のほうが多い)

プロジェクトXの人気回が再放送されていました。東芝が開発した、世界初の日本語ワープロ「JWー10」の開発物語です。若い技術者たちが一生懸命開発して、会社の窮地を救うという感動的な話でした。「その後」どうなったのかを知りたく、調べてみたところ、こちらのほうが面白かったので投稿します。

結論から申し上げますと、プロジェクトメンバーの天野真家氏(湘南工科大学工学部情報工学科教授)が、2007年12月、退職時に日本語ワープロ開発の業績に対する栄誉が人事的に付けられないことを受け東芝を提訴しています。東芝と和解したのが2015年ですから、開発から数えると40年越しに終結したということになります。

裁判によると「リーダーであった森氏の発明に対する貢献は殆どない、JW-10の画期的な部分は天野氏の貢献がきわめて大きい」という認定がなされたそうです。

天野氏は番組で「自分には信念がある。ユーザーが苦労をするような製品は良くない。苦労は技術者がすればいい」と発言されていて、すごい気迫を感じました。

天野氏は自らホームページにて発信をされていますが、筆致も冷静で、文章も読みやすく引き込まれるものがありました。「JWー10の何が凄かったのか」については、ここを読むのが最も良いかと思います。

ただし、難しいのは、会社や事業というのは色々な事柄から成り立っているので、発明に対する貢献と、発明が事業になり収益を生むことへの貢献は、必ずしも一致しません。製造・営業の達人の寄与や、外部環境等々、発明による部分を切り出すのは難しいですね…

中小企業診断士としての視点では、本件のようなトラブルが起きないようにする助言をすべきと考えます。そのためには「職務発明規程」を整備することが有効になります。職務発明規程については下記を参照願います。

とあるお客様に「職務発明規程をつくりましょう」と助言を行ったときには「会社の仕事で発明したんだから、それは処遇で報いればいい」という反応でした。気持ちはわかりますが、判例が相当数出ているので、そこはもう割り切るしかないんですよね。私のほうも、本業ではないので、それ以上は申し上げませんでした。

ただし、職務発明規程があっても、結局は人の心の取り扱いの問題と考えます。功績を讃える気持ちがあれば、ここまで全国に会社の恥部を晒すこともなかったかと思われます。このあと東芝が辿る運命を鑑みると、当然の帰結であったかもしれませんが…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?