久しぶりに三味線屋に行った話


小物(糸)の在庫が無くなって来たので、三味線屋さんに行った。

コロナ禍になってから、その三味線屋さんに行ってなかったので三年ぶりか。

店主の髪はボウボウに伸びていた。月日が流れるのは早い。

色々と話をした。

三味線屋さんの不況は今に始まったことではなく、もうずっと厳しいそうだ。

「うちは持ち家だから、テナント料(賃料)を払ってないからやって行けてるけど、それを払ってる三味線屋は全部潰れてるよ。」

なんとも世知辛い話だけど、これが現実で、そうだろうなとも納得してしまった。

もちろん店にもよると思いますが、顧客を大量に抱えている店を除けば、街の小さな三味線屋の現実はこんな感じなのでしょう。

「店を畳もうと思ったこともあるけど、じゃあこの大量に抱えた在庫の数々をどうする?って考えたら、まあとりあえずやってくか、って感じだよ。」

僕のようにたまに近くに小物を買いに行くって時にはとても便利なのだけど、それだってはっきり言えばAmazonでも買うことができる世の中になってしまった。

三味線屋は皮が破けないと仕事が減ってしまう。破けない人工皮の登場で、三味線屋さんの仕事はこれからさらに減るだろう。

それに加えて海外生産の三味線が増え、国産の三味線よりもかなり安い値段で紅木(舞台用で使う高価な棹のもの)の三味線が手に入る世の中になってしまった。

ちなみに僕は三味線に関する小物は通販では買わない。

頼んでも良いのだけど、実物を見て買いたいと言うのと、店主と話をしたい、と言うのがあるから通販では買わないようにしている。

年に数回しか行かない三味線屋でもそこにあるだけでありがたみがあるので、やはり無くなると困るし昔からある三味線屋が無くなるのはやはり寂しい。

その店でもう一つ衝撃だったのが、鼈甲の撥の値段で、その値は驚くほど上がっていた。

おそらく僕の下積み時代の値段からすると3倍くらいの値段になっており、「こりゃあ、初心者が気軽に買える値段じゃないな。」と正直、思ってしまった。

今、三味線屋さんは時代のニーズと日本の経済事情(不況)もあって過渡期だと思いますが、

末永く街の小さな三味線屋さんが続いて欲しいなと思う今日この頃なのであります。



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