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経済成長とデフレ解消に国内生産再構築を!

1.グローバリズムで貧しくなった日本

 日本は中国生産に熱中し、結果として貧しくなりました。誰しも、低コストでモノ作りをすれば儲かると思っていました。
 しかし、低コストで作った商品は低価格で販売されます。半額で販売して、二倍の数量が売れれば売上は同じですが、消費には限界があります。アパレル製品の場合、身体は一つなので、下着やシャツが半額になっても、二倍の数量は買いません。
 価格を下げて数量が伸びないと、売上が減少します。利益も減少します。更に、価格競争が厳しくなると、利益率も下がります。儲かるつもりで中国生産を行ったのに、気がついたら儲からなくなっていた。しかも、元には戻れません。価格競争の中で更に安く作ろうとするからです。
 中国で安い製品ができると、国内製造業が淘汰されます。国内製造業を守るのなら、関税を掛けるべきですが、自由貿易が正義とされていたので、政府は関税をかけません。むしろ、WTOなど関税撤廃の方向で動いていました。
 その結果、製造企業の倒産、廃業が増え、雇用も失われました。
 経済学では、失業した人がすぐに新しい仕事に吸収されるので問題ないという設定らしいのですが、現実はそうではありません。新しい仕事には新しいスキルが必要です。また、就職にも学歴や年齢の制限があります。日本では労働力の移動は容易ではないのです。
 というわけで、日本全体の所得も減少しました。日本は貧しくなったのです。
 
2.中国生産依存の弊害

 新型コロナウイルスの感染が中国から広がり、世界中の経済活動が停止しました。感染防止のために、世界はマスクを必要としましたが、マスク生産が集中していた中国では、中国政府がマスクを輸出禁止にしました。世界中がマスク不足になりました。
 世界各国は、中国に生産を依存していたことを反省し、グローバルサプライチェーンを見直す動きが出てきました。
 更に、「中国発のパンデミックは中国政府の情報隠蔽により拡大した」ということで、世界各国では中国政府の責任を追求する動きが出てきました。
 日本のアパレル産業は中国生産に依存しています。そのため、中国からの輸入や、中国生産を止めることはできません。しかし、ウイルス禍がいつまで続くか、分からないし、第二波、第三波の感染があるかもしれません。そうなったら、中国政府が税関を閉鎖するかもしれません。
 こんな不安定な状況でビジネスを継続することはできません。最早、コストだけの問題ではなく、ビジネスの存続の問題なのです。
 おそらく、日本企業は中国生産集中から、ASEAN諸国に生産機能を分散することになるでしょう。しかし、それでデフレが解消するわけでもないし、日本が経済成長するわけでもありません。
 といっても、国内生産回帰は困難です。生産を戻そうにも工場がありません。もし、政府が協力に国内製造業の再構築を考え、本気で国内生産を増やすならば、新たな工場を新設することになります。
 企業単位で考えれば、工場の新設という選択肢は出てこないでしょう。中国製品との価格競争に勝てないし、結局、採算割れになるからです。
 
3.国内生産再構築が成長戦略

 しかし、国として取り組むのなら話は別です。国が国内生産の再構築を政策として掲げ、工場を新設すれば、大きな設備投資需要が生まれます。国内総生産も上がります。デフレも止まるでしょう。
 そこで、国内生産再構築を日本の経済成長戦略として提唱したいと思います。
 具体的な方法は、改革開放当時の中国政府がお手本になります。新規工場建設及び設備投資に対する優遇政策です。
 例えば、不動産取得税、固定資産税等を免除する。期限付きで法人税も減免する。
 日本政府が海外工場を日本国内に戻すための補助を行わずに、市場原理に任せておけば、国内に工場が戻ることはないでしょう。しかし、それでは安心安全な国民生活を維持することができません。
 そして、公共事業として、政府、国家公務員、地方公務員等の制服を設定し、国内生産に限定します。これにより、公的な需要が生まれ、国内工場の安定的な生産が保障されます。
 もちろん、国内生産の条件のもと、厳正な競争入札を行うことが求められます。
 また、百貨店、量販店、大型専門店、大手ネットショップ等では、国内製品を一定比率取り扱うことを義務化することを法制化して欲しいと思います。
 これらは経済問題ではなく、安全保障問題です。国民生活の安全保障のために、国内に最低限の生産機能を維持するために必要なことであれば、国民にも納得してもらえるでしょう。
  
4.国内生産再構築をアベノミクスの成長戦略に

 アベノマスクに押され、アベノミクスという言葉も聞かれなくなりました。アベノミクスは3本の矢で構成されています。
 第一の矢が、「大胆な金融政策」。異次元金融緩和が行われましたが、残念ながらデフレは解消されていません。
 第二の矢が「機動的な財政政策」。経済対策予算を組むといいながら、緊縮財政は変わらず、しかも、消費増税を行ったために、需要を創造することはできませんでした。
 第三の矢は、「民間投資を喚起する成長戦略」ですが、規制緩和というむしろ供給を増やす戦略であり、目玉となる政策もありませんでした。現在に至るまで、成長戦略は見えていません。
 国内製造業再構築の政策は、大幅な需要創造になります。海外依存の製造業を安全保障政策の一環として日本国内に戻すことは、大幅な設備投資につながりますし、産業全体の構造が変わるので、大きな資金需要にもつながります。これにより、ようやく流通する資金量が増えるでしょう。
 また、グローバルな製造業ではなく、日本のアイデンティティに根ざし、日本の風土に対応した製品が増えれば、価格競争ではなく、文化競争力がつくと思います。
 デザイナーやクリエイターの活躍する場が広がり、世界に日本の美意識やデザインを広く訴求することになるでしょう。
 これは大きな成長戦略になり得ます。アベノミクスは建前はデフレ克服ですが、具体的にはインフレ克服の政策を続けたために、効果が出ませんでした。
 むしろ、トランプノミクスの要素を取り入れ、減税とインフラ投資、保護主義的な国内製造業の回帰を進めることで、結果的に成長戦略を達成できるはずです。
 新型コロナ禍により、世界的にグローバリズムが見直されます。このピンチをチャンスに変えることができれば、日本は新たな時代の勝者になると確信しています。

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