小さな約束
子供の頃
「また明日ね!」
と言うのがどんどん苦手になっていった。
楽しい時間が終わる寂しさを感じるたびに
その時間が有限だということを
子供ながらに察知していた。
楽しい時間を過ごせば過ごすほど
寂しさは込み上げてくる。
気づけば、「またね」という日はきっと来ない。
小さな約束は果たさなくてもいい約束なのかもしれない。
そう思うようになった。
大人になるということは
小さな約束に気づかないふりをすることなのだろうか。
それは違う気がして
僕はそこに抗うようになった。
小さな約束こそ、果たすべき一番大きな約束だと……
「試合見にいくね!」
「そっち行ったら、連絡するね!」
「ご飯行こうね」
もしもその小さな約束を果たせていたら、
誰かの人生がちょっと動き出したかもしれない。
22歳のとき、胸騒ぎがしたのに
病室に戻らなかった自分がそこにいる。
ほんのちょっとだけ
誰かのために小さな約束に時間を使いたい。
いや、自分のために小さな約束を果たしたい。
小さな約束を果たすことが
巡り巡って、自分の幸せになると思うから。
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