蟹 (小説っぽい何か)

 「よっこらしょ」と佐々江女子が大荷物を背負ってやってきた。
 「なんですか、それ」
 と後輩の私は気安く訊ねる。
 「蟹です」
 天才肌の人の言語表現は、やはり天才肌だ。
 かに?
 先輩はかすかに笑みを浮かべる。
 「つまり……こういうことです」
 左右の肩紐らしき部分から突き出しているハンドルらしき部分に、ついていると思しきボタンのようなものを左右それぞれを握りながら触れたかと思うと、背負っているには左右に広がった。
 天に向かう挟みこそないが、左右に広がる様は確かに蟹のようだ。
 なるほど
 というこちらの表情を読み取って微笑はしてやったりの笑みとなりさらには、これからよと澄まし顔になった。
 細い脚のようなものがぐいと全体を持ち上げた。ハンドルらしきものを動かすたび背中の荷物が変形した蟹らしき機械は左へ右へと先輩を連れ回した。動きはあまり速くないが。
 「すごいですね」
 感心した。感心したけど先輩にしてはギミックが足りない気もした。やっぱり蟹なら挟みが欲しい。あと飛び出した目玉も。
 「試作品なんですよ。改良の余地があります」
 表情を読んだのか、先輩は付け足した。
 「挟んで左右に一人づつ、二人くらいは搬送できるようにする予定ですよ」
 やっぱり佐々江先輩は天才肌だ。

------------------------------------------------------------------
 あー。なんでこんなん書いたんだろう……思い当たるのは『シメジ・シミュレーション』の第2巻を最近読んだので影響されたんだろうか。……あれに出てきてたっけか?一巻の最後にタカアシガニっぽいのが出てたか?超デッカいの。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?