低い音

 その昔、それは古生代(ウソ)、わたしの家には絶滅種「家具調テレビ」なるものが居間に鎮座しておったという。後々、それは壊れて、壊れたことをいいことに親に解体を申し出たところ受け入れられ、その分厚い合板で組まれた筐体(ボディ)と、その中に組み入れられた鉄のフレーム(鉄骨といってもいいほど頑丈)、そこに組み付けられた重いブラウン管と回路に刺さっている真空管(!、そう真空管がまだ現役だった時代があったのだ)と金属パッケージされたトランジスタ、なによりしっかりとした楕円形スピーカー1個が印象的だった。今も思い出すと長い方はおおむね10センチ、短い方は5センチくらいだっただろうか。子供らしく、紙製コーンを破って解剖し磁石を取り出したか、スピーカーとして流用したのか、そこは覚えていない。
 合板筐体の厚みは2センチほどあっただろうか。「家具調」のために表面は木目調の貼り物がされていた。合板を目隠ししていた。その厚い木の枠とさほど大きくもないスピーカーから出された低音は、本当によかった。
 ……『宇宙戦艦ヤマト2』冒頭の白色彗星登場の、パイプオルガン音はわたしと妹を恐怖のずんどこに、いや、恐怖のどん底に突き落としたものだった。あれは心底怖かった。
 アニメーションは私に取って「目で見る」ものであることよりも、「耳で聞く」ものであったように思う。アニソン大好き!で歌いもしたし。下手だけど(苦笑)。
 テレビアニメ『ジャングル大帝』のシンセサイザーあたりに触れるのが公平な態度なのだろうけれど、再放送などで見たことがあったはずなのにあまり記憶にない。テレビアニメ『伝説巨神イデオン』の少し前に家具調テレビはお亡くなりになった。廉価な白黒テレビで『イデオン』を見ていたため、イデオンは青色!と勝手に思い込んでいたものだった(数ヶ月後に代替のカラーテレビが導入され、その誤解は解かれた)。イデオンのサウンドトラックLPレコードは、私が初めて自分で買ったレコードだった。効果音?BGM?にフルオーケストラを導入したという珍しい作品だった。
 テレビアニメ『あいうら』のエンディングソングの冒頭は、低い低いダブルコントラバス?か何かの爪弾く音で始まる。普通に聞いていると無音の間のような部分。低音を再現していくれるイヤーレシーバーでも付けてないと気付かない。良い音よね。
 低音って点ではテレビアニメ『化物語』シリーズで、詐欺師・貝木が語り部の『恋物語』冒頭も低い弦の響きで始まる。こちらは割と聞き取りやすいと思う。
 低い音話はここまで。これにて。あとは蛇足。

 テレビアニメ専業声優は、たとえ絵がなくとも「声」だけで演技が完結する。そこまで演じてしまう面が強いように感じている。それが良いことなのか、悪いことなのか。1年で4つ4種類別々の作品が発表されるという製造スケジュールの中で、作品成立というのか、物語成立のためにこういう高度な演技スキルは、製造し売る側としてはさぞありがたいことだろう、と想像する。洋画吹き替えなどだと、確実に「絵」があって、その絵にマッチする(テレビアニメ出演に比べれば)「控えめの」演技をしなければ、訴求が過剰になって「演技がクサい」ということになるのだろう。製品となった吹き替えにしか消費者側は接する機会はないので、これも憶測、想像でしかない。
 蛇足も、これにておしまい。

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