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構造化読書(大量の本、書類、情報の素早い読み方)

目次

0.情報に埋もれないために
1.目次、見出しの活用
2.サーチリーディング
3.スキップリーディング
4.自分で文章を書く場合への応用
5.その他(趣味の本、外国語の本)
6.おわりに(速読と理解度はトレードオフではない)
追記.オフラインでの質問への回答

0.情報に埋もれないために

ごく短時間で仕事がらみの大量書類(例.契約書、覚書、メモ、参考資料、注文書・発注書・仕様書など)を読みこなして、何かを考える・作る必要が出てくると泣きたくなることがあります。

仕事ではなくても、今の時代はあらゆる情報であふれかえっているので、うかうかしていると何もしないうちに1日が終わっていきます。今年は本を30冊読もう、とか思ってもなかなかこなせないものです。

そこで、古くから言われる速読法を行うわけですが、これには色々な手法やコツがあります。主として、目次・見出しの活用、サーチリーディング、スキップリーディングを使うのが有効です。

1.目次、見出しの活用

何百ページもあるような本、書類、データを、何時間かかるか分からずに頭からゴリゴリ読んでいくのは時間計画が立ちません。何より「どこまで続くぬかるみぞ」、と気持ちが滅入ってくるので、精神衛生上良くありません。

そこで、無理を承知で時間制限かけます。
「この書類(本)は200ページだから1時間で概要をつかもう」
とかいう目標です。最初は慣れないと中々出来ないですが、常にこの意識を
持つと、
「どんな内容ならば、自分は1時間当たり最大どの程度読みこなせる」
という物差しができてます。これをどんどん早めていくのが良いです。

この物差しを作るための第一歩は、目次とか見出し(俗にヘッドラインとか、小見出しとか言われる類のもの)を活用します。

これらをざっと眺めて、まずは全体の構造はどういうものか?全体で何を言わんとしているか?の推測をして頭に入れます。これをやった上で、本文を読み始めるのと、やらないのでは、単位時間でこなせるスピードがかなり変わってきます。

2.サーチリーディング

次の選択肢は、「いかに読まないか」です。

情報を拾い読みするには、必ずしも文章をきちんと読む必要はないです。但し、契約書や法律のように、敢えて文章を難しくして「読み間違えたらあんたが悪い」的なトラップがあるようなものはきちんと読まないと危険です。

サーチリーディングは重要単語や表現のみを斜め読みして、その前後には重要なことが書いてあるはず、という推測で拾い読みする方法です。

具体的にはこんな感じでやります。
1)目次・見出しで文章全体や章の内容の当たりをつける。
2)各段落の最初の文を読んでいく。
 (きちんと構造化された文章は、段落も構造化されています。
  このため、段落最初の文にその段落で言いたいことが出てきます)
3)最初の文で見つけた単語、その後何回も出る単語を見つける。
4)その単語をキーワードと当たりをつけて前後を拾い読みしていく。

2,30年前は英文でこの手法ができても、和文でこの手法が使えるものは少なかった印象です。ただ、これだけ情報化社会が進むと、きちんとした書き手は文章の構造化、論理性を重んじて書いているので、この手法が使えます。

また2000年頃までは、この手法は大学入試の英語長文読解や、TOEICの大量文書読解で有効と言われてましたが、近年この方法は流行らないとか言われているようです。ですが、大量の書類をこなすためには、依然として有効な方法と思います。

3.スキップリーディング

スキップリーディングは、
1)主語述語だけ読んでいく(形容詞や補語は読まない)。
2)段落の最初の文だけ読んでいく。
 (2.サーチリーディングで挙げた、2)だけ実践する方法です)

短めの連絡文や、webサイト情報、などではスキップリーディングが有効なことが多いです。

ただ、こなすべき量が多い場合(例.数百ページの本)、スキップリーディングだと内容がつかみにくいので、サーチリーディングと併用して、何とか短時間で概要をつかむようにします。

また、スキップリーディングは、単語や短文だけ拾い出したい場合に有効で、サーチリーディングは主題が変化していく長文の読解に有効です。

4.自分で文章を書く場合への応用

私はこうした速読法を構造化読書と読んでます。この構造化読書スキルは、自分が文章を書く場合にも応用できます。

「読者は情報を読みたいのであって、表現方法に拘って読むわけではない」
「構造化された文章こそ、読み手に優しい良い文章である」
という前提で書く習慣をつけると、複雑な内容であっても短時間で把握できる文章が仕上がります。

例えば、
・段落の1行目にその段落で言いたいことをキッチリ書く。
・その後の文は1行目の説明を詳細なバックアップ情報として書く。
・こうした段落、章を構造的に積み重ねることで、言いたいことを書く。
といった方法です。

5.その他(趣味の本、外国語の本)

構造化読書の例外が2つあります。

1)趣味の本
小説とか、趣味の分野の情報書類、などです。
これは内容を味わうことが目的なので、構造化読書になじみませんし、そもそも書き手もこういった意識で書いてはいません。

昔、小林秀雄さんの随筆で、
「私の文書は読み難いという人がいるが、それは意識的にそう書いている。何回も返り読みして分かってもらえるようにして、そこに味わいが出るような評論を書いてる」
といった主旨を読んだ記憶があります。
こういう世界の文書、書類は厳然としてあります。

また、小説などは登場人物が多く、性格などを書き込んでいるため、早く読むと何が何だか分からなくなります。

2)外国語の本
外国語学習のために大量速読するのはありですし、外資系企業等で仕事上やむを得ず大量の外国語を読むこともあるでしょう。また、日本語翻訳されていない情報を素早く大量につかみたい場合もあると思います。

こういう場合、外国語原文のままで構造化読書をするのも有効です。

ですが、今の時代は翻訳情報が本で出ていたり、インターネット上で情報が出ていてサイト上のツールで日本語翻訳できることもあります。
こうした場合は日本語で構造化読書した方が効率的です。疑問点が出たら原文に当たれば良いと思います。

6.おわりに(速読と理解度はトレードオフではない)

こうした速読法(構造化読書)を薦めると、早く読むことで理解度が落ちるのではないか?と質問されることが良くあります。

しかし、頭からのんびり読み進めて終わるまで長時間かかると、最初の方は忘れている、といったことは良く起きます。よって、速読したら理解度が落ちるのではなく、むしろ概要をつかむ力は上がるはずです。

もちろん、ゆっくり読んで内容を嚙み締めた場合の理解度を100とすると、構造化読書は80程度にはなると思います。それは掛けた時間が違うのですからやむをえません。

しかしながら、80を100にするためには多大な時間と努力が必要となります。下手をすると、0を80レベルにするのと同じくらいの努力が必要だったりします。

それならば、80を満点と考えて、残った時間を休憩に当てたり他に有効活用する方が、遥かに良いと思います。

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追記1(2023.8.15) オフラインで受けた質問への回答

次のような質問を頂きました。
「筆者が本文で書いていることは分かるが、そもそもこうした読書法になじまない文章、本といったものがあるのではないか?」
「例えば哲学書、語学習得のための学習書、数学理論理解のための専門書、金融工学を理解するための経済学(マクロ、ミクロ他)や数学学習のための専門書などは、この『構造化読書』では無理ではないのか?」

答え

その通りです。
対象とする本、書類等と自分の現在の知識、経験レベルによって、
a.誰でも簡単に読み進められる本(書類)
b.ちょっと考えながら読む必要のある本(書類)
c.難解でかなり時間を掛けないと理解できない本(情報)

といったものはあります。

例えば、哲学や論理学に素養のない人がビットゲンシュタインの論理哲学の翻訳本を読もうとすると(解説本ではなく)、かなり厳しく数十時間以上は楽にかかると思います(上記分類c)。

本文で私の書いた構造化読書は、上記分類bのようなものを対象としていて、読む本(書類)にある程度の知識、素養があることを前提にしています。

さらに例を挙げれば、私は経営管理、会計領域等を専門の一つとしてきたので、会計理論、簿記論、経営管理論の本を読むには構造化読書が使えます。が、金融論が大前提となった本を読む場合は、読みこなしは上記分類b~cくらいの難度に跳ね上がります。
(えーっとこれはこうだったから…と思い出すステップも読書中に必要になるので)

対象となる本の「自分にとっての難度の見極め」は極めて重要です。

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追記2(2023.8.18) 追記1に対する質問への回答

上記で書いた追記1について、続けて次のような質問を頂きました。
「筆者はカテゴリーbについて書いているというが、カテゴリaは恐らく、b以上のスピードで読解(理解)することを意味していると思う」
「カテゴリaの構造化読書について教えて欲しい」

追記1への回答で書いたカテゴリは、もっと正確に書くと以下になります。

a1.前提知識を必要とせず万人が簡単に読み進められる本
a2.最低限の前提知識があればだれでも簡単に読み進められる本
b.ちょっと考えながら読む必要のある本
c.難解でかなり時間を掛けないと理解できない本
z.非常に読みにくく理解できない本

カテゴリaは一般的な啓発書とか、HowTo本的な物が多いです。
これは図表が多く、また本文もかなり構造化されていて、章・段落分けがロジカルです。なおかつ重要部分に線が引いてあったり、太字になっていたりします。
(但し万人にとっての太字で、あなたにはどうでもよい情報かもしれない)

カテゴリa1の読み方


極端なスキップリーディングをします。図表や、太字、章内の小目次などをページを繰りながら眺めて、ページをどんどんめくります。
200ページくらいの本ならば30分以内に「目を通す」(しかし概要は理解する)という読み方が良いです・
ちょっと理解不足だな、と思ったら、もう一回カテゴリbの読み方を2-4時間程度でやれば良いです。
(目次活用、サーチリーディング、普通のスキップリーディングなど)

なお、カテゴリa2も基本は同じです。ただ、ページをめくるスピードをもうちょっと遅くしても良いかと思います。

意識の中では、
 カテゴリb読書=速読(構造化読書)
 カテゴリa1&2読書=超速読(高速スキップリーディング)
です。

カテゴリzの読み方


読むか読まないかの決断を早くすることです。

このカテゴリには、
 z1.今の自分では全く知識不足で基礎知識の習得から必要とする本
 zz.論理的でもなく、論旨展開も不自然で理解できない本

があります。

z1の例としては、金融工学の本を読むのに、基礎的な数学知識がないような場合があります。
(マクロ経済、統計論、偏微分、重積分などの基礎知識がないと読めない)
回り道のようでも、基礎知識の本をこなす必要があります。

zzの例はかなり多いです。
・独善的な推論をしている本。
・言葉の定義が途中で変わってしまう本。
・使用用語がどんどん変わり、それが同義なのか異議なのか不明の本。
・論旨に論理的なつながりがない本。
などなど。

これを見極めたら、その本は即廃棄処分にすべきです。
それが仕事の資料、書類等だったら、書き直しを命じる等を必ず行って、その未熟レベルの書類を使って会議等をしないことです。これが、会議資料や仕事上文書の、完成前レビュー、という工程に該当します。

そもそも、本、書類は全体量の2割でも役に立つことがあれば、かなり優秀な方、というのが経験則です。zz本はこれがほぼ0%なので、未熟な本、書類に関わるのは時間の無駄です。

a1読書法(超高速速読)、b読書法(構造化読書)で経験を積むと、なんとなくこのzzカテゴリ本が見えるようになってきます。

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