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自動車業界への意見具申

 所属した覚えはないけれど、私の業務上の業界は半導体・電子部品業界ということになる。細かい製品が多く、それら細かい物の製造装置に前職から合わせて20年以上携わってきた。その業界から自動車業界を見ると、ずいぶん甘やかされているというか、守られている業界だなと思う。特にメーカとその販売店(ディーラ)。なぜなら車を買ったら点検や車検が定期的に義務付けられ、ディーラ等に出せば、消耗品としてまだ使える部品まで交換されてその手数料が取られ、1回の車検で数十万円の請求をされることもよく聞く(100万円支払った同僚もいます)。

 ただし義務付けられた点検や車検によって、未然に防がれている事故もあることは承知しておかなければならないと思う。皆が皆、車に詳しくて乗っているわけではない。教習所で習った日常点検を常に行う人のほうが珍しいだろう。ブレーキパッドの残厚やタイヤの空気圧、オイルの交換時期はいつだっけ?そんな人でも安心して車が利用できるためには、強制的であっても点検・車検を義務付けることに異議はない。

 またそもそも自動車業界は我が国の基幹産業である。今の車には半導体や電子部品が多く使われており、液晶やカメラ、通信や制御、ケミカルや新素材等、あらゆる分野が関わっている。自動車業界が廃れないよう車検制度その他で守っていくのは国の政策として当然だと思う。

 そんな誰もが既に理解していることを論じたくて、こんな文章を起こしているわけではない。法に守られすぎて業界として立ち向かうべき安全性が蔑ろにされているのではないか、ということに不安を覚えている。

 2019年、池袋で痛ましい事故が起きました。若い母親と幼子が暴走してきた車に引き殺された。容疑者は車の不具合を訴え一貫して無罪を主張している。メーカの調査によれば容疑者の操作ミスが事故原因と結論されているにもかかわらず、だ。私が残された家族の立場であったら、自分の手で復讐してやりたいと思うだろう。しかし復讐しても失われた命は戻ってこない。

 先に言っておくけど、決して容疑者を擁護するつもりはない。ただ本当にメーカに責任は無いのだろうか?

 もちろん法的には問題ない。多くの人が同じ車種を何ら問題なく利用している。と同時に、同様の事故もこれまで多数発生している。原因は、アクセルとブレーキの踏み間違いと言われている。

 ちょっと脱線するけど、産業用ロボットと呼ばれる生産設備には非常停止スイッチの他にデッドマンスイッチというものが装備されている。一口に産業用ロボットと言っても色々なタイプがあって、小さなウエハや大きな液晶ガラスを運ぶもの、また溶接ロボット等も含まれる。それらロボットは同じ作業を同じ位置で繰り返し行えるようにプログラムされている。そのプログラムを行う際によく使われるのがティーチングボックスと呼ばれる機器(リモコンみたいなものです)。メーカによって多少異なるけど両手で操作するのが基本で、片方の手でセーフティスイッチを『半押し』し、もう片方の手でロボットを動かすスイッチを操作するようになっている。このセーフティスイッチ(メーカによって呼び方は異なります)はカメラのシャッタのように2段押しになっていて、押さないとロボットは動かず、半押し状態でロボットが動かせるようになっており、さらに強く押すと、ロボットは即停止する。この強く押したときというのが肝心で、あっと思ったときに手を放す人もいれば、逆に強く握る人もいるそうだ。この人間の反応を利用してより安全に作業が行えるように産業用ロボットは作られている。

 この機構、車にも使えるのではないか。危ないと思ってブレーキのつもりで踏んだのがアクセルだった。そのためさらに加速して気が動転してしまい踏みかえることができない。でもアクセルを強く踏み込むと上記のスイッチがあり、車が緊急停止するように働く。今やエンジンも電子制御されているので装備することは簡単だと思う。

 という意見をある大手自動車メーカに送りました。誰にも読まれないかもしれない“ここ”に書き込んでも仕方ないのでね。

 池袋の事故に関して、メーカに法的な責任はない。だからそのままで良いのか?今まで同様の事故が何件あった?それはこれから何件起きる?あと何人の被害者が必要なのだ?メーカだけの責任ではなく、より安全で、より良い車が社会の発展に貢献することを、自動車業界だけでなく、皆で考えていかないと犠牲が増えるばかりではないのか。

 車が好きだし、運転することが楽しいし、若いころプロを目指してA級ライセンスまで持ってたし。そんな自分が高齢者と呼ばれる年齢に向かっていく中で、ほんの少しでも意見具申できればと思って本文起こしました。それは自分のためでもあります。情けは人の為ならず、ということで。

追記:ちなみに私、早急なガソリンエンジン廃止にも今のところ反対です。その辺はまた後日。

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