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『みんなちがって、みんないい。』を体現する環境。息子の笑顔が変わった! 【まるたんぼう保護者 Vol.2 乳原里織】

鳥取県智頭町森のようちえん「まるたんぼう」には、さまざまな価値観やバックグラウンドを持つスタッフや保護者さんがいます。

そんな多様なスタッフや保護者さんたちに、まるたんぼうの元保護者さんで、ライターとしても働かれている清(せい)さんが、インタビューをしてくださいました。

いろんな人の視点で見た、素顔のまるたんぼうを連載でお届けしていきますので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです!

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今回、お話を伺ったのは、まるたんぼう保護者の乳原里織さん(以下、さっちゃん)です。

さっちゃんは、大阪生まれ、大阪育ち。息子さんの子育ても大阪でされていたそうなのですが、子育てに少し悩んでいた頃に、たまたま鳥取を訪れ、鳥取の自然のダイナミックさに親子で感動。そこから、自然豊かな場所に移住して子どもを育てたい!と、心が動いたそうです。

智頭に移住され、息子さんをまるたんぼうへ通わせている現在は、
「鳥取の自然とまるたんぼうの保護者さんたちに助けられ、癒されています。」と、幸せそうに話すさっちゃんですが、縁もゆかりもなかった鳥取への、人生で初めての移住には、最初は様々な葛藤がありました。そんな不安を1つ1つ見つめ、解決していった、さっちゃんのストーリーを、ぜひお楽しみください!

【さっちゃん プロフィール】
大阪生まれ大阪育ち。
昔から自然の多い田舎暮らしに憧れながらも一歩踏み出せず40代に。子どものおかげでえいやっと智頭へ引っ越すことができました。自然とおいしい水に癒される毎日です。
趣味は初心者ながら畑。特技はシフォンケーキを焼くこと。

清(以下、ーー):さっちゃんは、まるたんぼうに息子さんを通わせるために、大阪から鳥取県智頭町へ移住してきたとのことですが、最初、どのようなきっかけでまるたんぼうに興味を持ったのでしょうか?

さっちゃん:以前は、大阪の都会の方の保育園に通わせていました。そこは、木で作られた園舎で、都会にありながらも体験型の行事をとても大切にしてくれている素敵な園で。季節に沿って、梅仕事をしたり、旬のお野菜でお料理をしたりと、私も息子もとても気に入っていたんですね。
ただ、仕方のないことなんですが、感染症の影響で、数年前からそのようなイベントが全てなくなってしまって。

同様にして、近所では、公園など屋外の遊び場では、子どもたちが自由に遊ぶということができなくなりました。息子も、丸一日室内で過ごすしかなくなったんですね。

息子は、本当に元気な子で、歩き始めてから止まったところを見たことがないくらいなので笑、そんな状況で、日々「何かこの子にとって良い環境はどんなのだろう」と模索していました。

その前から、やはり自然が少なく、車や人通りの多い都会での子育てに疲れつつあったというのもあり、「都会での子育ては、私たち親子には合わないかもしれないな」、と思い始めていました。

そんな中で、たまたま親子で鳥取を訪れる機会があったんですね。
初めて鳥取砂丘に行ったときに、私も息子も大興奮しました!
広い砂丘を、息子は、嬉しそうにばーーっと走り回っていて。その姿と笑顔を見たときに、「この子には、外で、広いところでのびのびできるところが必要!」と感じたんです。

そこから、自然の多い場所で、息子がのびのび動き回れるような保育園や幼稚園がないか調べ、「森のようちえん まるたんぼう」のホームページに辿りつきました。

ーーホームページを見て興味を持ち、その後体験入園に来られたんでしょうか。

さっちゃん:はい。まるたんぼうのホームページに掲載されていた写真がとても印象に残っているんですが、男の子が、楽しそうにどろんこになってカエルを捕まえている様子が写っていたんですね。それを見た時に、「これを我が子にやらせてあげたい!」と感じました。

まるたんぼうの保育内容も、とても共感することばかりでしたし、調べていくと、登園後や長期休みには託児*もあることがわかり、私のような働くお母さんでも通わせられそう!、と思いました。
また、シェアハウスもあるので、お試し移住もできるかもしれないと思いました。

そこで、私にとって、自分が働きながら「森のようちえん」に通わせることや、「移住」に対するハードルがとても下がり、「一度見学に行ってみよう!」と思い、体験入園に行ってみることにしました。

*)まるたんぼうは、9時~14時が森での保育の時間、14時~17時は古民家での託児の時間となっており、春夏冬の長期休み時も託児があります。

ーー実際に体験入園をされて、園児たちの印象や、息子さんの様子はどうでしたか?

さっちゃん:園児さんたちが、とにかくキラキラしていて、元気で、可愛かったですね!集合場所で会ったときから、「すごく可愛い!楽しそう!」という印象でした。

森の中では、園児さんたちが、「見せてあげる!」と、花や大きなミミズをとって、私や息子に見せてくれました。ちょうど、秋で、キレイな落ち葉が降り積もる森の中でみんなと過ごして、息子も楽しそうに一緒に遊んでいて、「まるで夢のような世界だな~」と思いました。終始みんなイキイキしていて、逞しかったですし、ありのまま、素のままで活動しているのを感じました。

スタッフさんともたくさんお話しできたのも良かったです。
子どもに対しても、親に対しても、ジャッジせず受け入れてくれる、その人間性にも惹かれました。

ーー体験入園でスタッフや子どもたちと接して、「まるたんぼうに通わせたい!」という思いが強くなったんですね。実際に移住するまでは、やはり不安もあったかと思うのですが、さっちゃんは、どのようにして移住を決めたのでしょうか。

さっちゃん:そうですね。まるたんぼうにとても惹かれ、通わせたいとは思いながらも、息子が繊細なところがあるので、環境の変化に対応できるかどうかも心配でした。

そこで、もう一度冬に智頭に来て、体験入園をさせてもらったんです。
その際に、まるたんぼうのスタッフの方に言われた言葉が今も胸に残っているのですが、子どもにとって、「まるたんぼうでの体験はかけがえのないもの」というお話をしてくださったんです。本当にその通りだと思いました。学校に入る前のこの幼児期に、智頭の森の中で、素晴らしい保育士の方々に見守られて、のびのび過ごせる時間は、とても貴重だと。

また、大阪のお友達も背中を押してくれました。
「あかんかったら帰ってきたらええやん」と言われ、それもそうだな、と心が軽くなり、移住することを決めました。

ーーまるたんぼうに入園して、良かったと思うことはどんなことですか?

さっちゃん:智頭の森の中で、スタッフに見守られながら、毎日活動できる価値は、何ものにも変え難いですね。

スタッフの方の知識経験が素晴らしく、森をよく知っている皆さんだからこそ、子どもたちを、危険が起こらないギリギリのところまで好きにやらせてあげられる。そんなふうに見守られながら、何かの目的のためや、仕事のため、ではなく、ただただ夢中になって遊べる毎日の尊さを感じます。子どもたちが森で遊んでいる姿は、神々しく感じられるくらい、夢中になって輝いています。

自分だったら森の中で、こんなにのびのび子どもを遊ばせられないなと、スタッフの皆さんに感謝しています。

ーーまるたんぼうスタッフの安全管理のレベルの高さには、私もいつも驚かされ、安心させてもらっています。

さっちゃん:先日、スタッフが開催してくれた「保護者向けの安全講習会」に参加させてもらい、私たち親も、保育をするスタッフの目線で、「危ない場所はないか」「ここではどのようなリスク(怪我や事故)が考えられるか」をスタッフとシミュレーションしながら森を歩きました。その際にスタッフの方が「子どもの活動の『自由度』は、大人の『知識と経験』で決まる」と言っていて、まさにその通り!と思いました。

その先の道がどうなっているのか、危険な場所はないか。
道端に生えている草や葉っぱが食べられるものなのか、触っても安心なものなのかどうか。
そういうことを大人が知っていたら、先回りして何でもかんでも「ダメ!」と言わなくていいんですよね。ギリギリまで、子どもの思うがままに経験させてあげられるんですよね。

スタッフそれぞれが、本当に森での保育のことをよく知っていて、どのくらいのリスクがあるのか、どこまでのリスクを排除するかを常に話し合い、その「ボーダーライン」を共有しあうことで、子ども達もスタッフも守りながら、子どもの自由を最大限尊重する保育ができる。
智頭町で10何箇所もの森をフィールドとして活用し、森のようちえんを行うということは、生半可なことではない、と改めてスタッフの力量の凄さを感じました。

ーーまるたんぼうに入園してから1年経ち、息子さんはどんなふうに変わりましたか?

さっちゃん:なんだか笑顔が変わりましたね!もう、ニコニコ全開で笑うようになりました。

お友達と遊んだり、相手に物を渡せるようになったり、お友達とも上手に関われるようになったと思います。

入園直後は、森に行くのを嫌がっていた時期もありました。彼は気に入ったものしか着ない性格なので、最初は、着慣れないカッパも長靴も、帽子も嫌がっていました。
ただ、次第に、森の中でオタマジャクシやアカハライモリを見つけたり、川の中で魚を見つけたりと、そんな話を私にもしてくれるようになって、だんだんと行くのが楽しくなっていったようでした。
お友達と遊んだ話もしてくれるようになって。。自然と生き物達、そしてお友達の力のおかげですね。もう今では、「まるたんぼう、めっちゃ楽しいねん」と言って、毎日嬉しそうに通っています!

あと、入園前、2、3歳の頃なんですが、息子は、一緒に出かけても時折親の手を離れて、ぱーっとどこかへ行っちゃうことがあったんですね。迷子になってしまうこともありました。
「もし森でも同じように、先生の目の届かないところへ行って逸れてしまったら・・!?」と心配になり、入園時に、スタッフの方へ手紙を書き、入園願いと共に渡したくらいです。笑
もちろんスタッフの方からは、「大丈夫」と言っていただけて安心したんですが。

森の中で他の子どもたちと歩いている時も、一人だけ少し先の方へ行ってしまうことはあったようなのですが、だんだんとみんなの様子を見ながら活動できるようになったみたいです。
先日、もえぎ(年長さん)の女の子が、少し先の方を歩く息子を見て、「でも○○君は、もう一人でどこにも行かないよ。ちゃんとわかっているよ。」と言ってくれたみたいなんですね。
1年かけて、いろんな学びがあり、仲間に合わせて歩けるようになった、成長したな、とホッとした瞬間でした。

ーー最初は少し戸惑っていた息子さんも、今は本当に楽しそうに通っていて、よかったですね!

さっちゃん:そうですね!春から夏にかけて、森に行くことも、お友達と関わることも、次第に積極的になって行きました。まるたんぼうでは、森の中で理由なく制限されることがなく、「好きなことをやっていい」ということがわかったんだと思います。

例えば、まるたんぼうでは、森に小児科の先生が来てくれて、子ども達の健康診断をしてくれるんですね。入園後初めての健康診断で、息子は、その時気に入った木の棒を持っていて、診断を受けるためにはそれを手から離さないといけない、注意されると思い、診断の列に並ばなかったんです。それで「棒を捨てなくてもいい?」とスタッフの方に聞くと、「いいと思うよ」と言ってもらえた。そこで、安心して健康診断を受けたという話を聞きました。

やりたいことをやり続けられる、やめなくてもいい、受け入れてもらえる。
まるたんぼうのそういう環境が分かってきて、安心して通えるようになったんだと思います。

ーー最後に、まるたんぼうへの入園を検討されている方へ向けて、メッセージをお願いします!

さっちゃん:私は、毎日、鳥取の自然とまるたんぼうの保護者さんたちに助けられ、癒されています。保護者さんたちは、皆、まるたんぼうに来た事情も様々で、国籍も違ったり、得意なことや専門性も違い、それぞれに多才でしっかりと芯があり、とても魅力的な人たちばかりです。「みんなちがって、みんないい」という言葉を体現しているような人たちに囲まれて、息子だけではなく、自分にとっても移住して本当に良かったと思っています。

少しでもまるたんぼうが気になったら、見に来てみてくださいね。そして心で何かを感じたら、ぜひ入ってもらえたら嬉しいです!

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「好きなことをやっていい」環境に安心しながら。
森と生き物たち、信頼できるスタッフや子どもたちと共に。
一歩一歩自分の居場所を見つけていく息子さんのお話しが、とても印象的でした。

息子さんや家族のことを思い、入園前に何度も見学に来たり。
入園後も、息子さんの変化を丁寧に見て、気持ちに寄り添うさっちゃんの姿がとても温かくて、母親として見習いたいなと思いました。

こがね(年少)の1年間で大きく成長した息子さん。
これからくわのみ(年中)、もえぎ(年長)と、まるたんぼうでさらにどんなふうに変化していくのか、楽しみですね!

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