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森だからできる、「自分から動ける力」を育む保育。子どもたちと共に成長していく。【まるたんぼうスタッフ Vol.1 山本淳司】

鳥取県智頭町にあるNPO法人「自然体験まるたんぼう」には、さまざまな価値観やバックグラウンドを持つスタッフや保護者さんがいます。

そんな多様なスタッフや保護者さんたちに、まるたんぼうの元保護者さんで、ライターとしても働かれている清(せい)さんが、インタビューをしてくださいました。

いろんな人の視点で見た、素顔のまるたんぼうを連載でお届けしていきますので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです!

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今回、お話を伺ったのは、まるたんぼうスタッフの山本淳司さん(以下、あっちゃん)です。

もともと都会で保育士として働いていたあっちゃんですが、田舎で、畑で作物を育てながら働く暮らしを始めたいと思っていたそうです。その後、奥さんが智頭町とご縁ができ、一緒に移住。そこでまるたんぼうと出会い、スタッフとして働き始めました。

プライベートでもキャンプや山登りを楽しみ、子どもと自然が大好きで、いつもにこにこ子どもたちや保護者のお話を聞いてくれるあっちゃんに、まるたんぼうでの日々の保育のことを、詳しくお話を伺いました!

【あっちゃん プロフィール】
まるたんぼうスタッフ。札幌の都会で保育士として働いていたが、田舎で「半農半X」の暮らしを始めようと、鳥取県智頭町への移住を決意。スタッフとして働く傍ら、農業を営み、音楽活動もしている。趣味はキャンプや山登りと、お料理やお菓子作り、最近は米粉のパンづくりも楽しんでいる。

清(以下、ーー):あっちゃんは、長年他の場所で保育士をされていてたとのとですが、まるたんぼうで働き始めた頃、最初はどんな印象を受けましたか?

あっちゃん:そうですね、特に印象的だったのは、ここでは、「大人が必要以上に介入しない」ことと、「頻繁にスタッフ間で情報共有やミーティングをする」ということですね。

子どもたちが、何かをやりたいときに「自分から動ける力」を身につけてもらえるよう、僕たちスタッフが情報共有しながら見守り、子どもたちの動きを信じて待つようにしています。そういう環境があるまるたんぼうってとてもいいな!というのが最初の印象です。

ーー私も、自分の息子をまるたんぼうに通わせてから、その「自ら動ける力」が身についていると感じさせられることが、たくさんあります。あっちゃんから、ぜひ具体的なエピソードをお伺いしたのですが。

あっちゃん:日々たくさんのエピソードがあるんですが、ちょうど今日あったお話をしますね。

こがね(年少)の女の子が、給食やクッキング*の時に、配膳にこなかった、ランチを食べられなかったということがありました。本人は食べたい気持ちがあるように見えたし、他の子どもたちも「食べていいんだよ」と声をかけていました。

食べない理由を聞いたら、「もう帰る時間になるから」、「みんなに置いていかれるのが嫌だから」、というようなことを話してくれたんですね。帰るまでまだ時間もたっぷりあったし、森に置いて行ったことなんてもちろん一回もないんですが笑。

それが、次も、その次も続いて、2週間くらい経ったんですね。

僕たち大人が、「食べられるように」とお膳立てすれば、もちろんすぐに食べてくれたと思うんですが、スタッフは、彼女の様子を観察しながら、「食べたかったら食べてもいいんだよ」ということは伝え、敢えて誘導はせずに見守っていました。

すると、今日は、自分から給食の配膳に来て食べたんです。彼女の気持ちの変化やペースを尊重しながら、「やりたい時に動ける力」が育まれるのを待っていてよかったなと思える瞬間でした。

*)まるたんぼうでは、毎週月曜日は給食の日、金曜日は子どもたちみんなで昼食を調理するクッキングの日、そのほか火~木はお弁当の日となっています。

ーーまるたんぼうは本当に「見守る保育」を徹底していて、すごい!といつも思います。スタッフさんたちは、どんな気持ちで見守っているのか、どうしてそんなにも子どもを信じて待つことができるのか、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?

あっちゃん:まず、常にスタッフ同士の情報のシェア・話し合いがあるから待てる、というのがあります。お互い、色んな角度から子どもの様子を見て、例えば前述のエピソードでは、「3日前にこんなことがあったからかな」とか、「彼女がこんなことを言っていた」という情報を集め、彼女の気持ちを慮り、もう少し待ってみることにしました。

あとは、「食べなきゃいけない」ということがないからですね。
「これをしなきゃいけない」というルールがなく、一人一人の自由を尊重している、というのがまるたんぼうの保育のベースにあります。

ーーなるほど。スタッフさんたちが、子どもたちの個性や自由を尊重してくれているから、子どもたちもとてものびのびしていて、互いに相手を尊重し合う雰囲気が生まれるんですね。

あっちゃん:まるたんぼうの子どもたちは、互いに相手を受け入れ、相手を変えようとせず、そこをベースとして、「じゃぁ色んな人がいる中で自分はどうしようか」と考えられる力が育まれていると感じます。

何かをやりたい時に、最初は、「みんなにどう思われるか」不安になり、「やめておこう」、と思うと思うと思うんですね。でもそんな子どもたちも、「やっぱりどうしても自分はこれをやりたいから、みんなにどう思われても、言ってみよう!やってみよう!」と主体的な動きができるようになっていきます。すごく強さがいることだと思います。

それができるようになると、次は、他の子どもたちから、否定されたり、ブーイングを受けたりすることもあります笑。
そこで、「ここがダメだったのかな」「みんなはこんな気持ちになるのか」と考え、「じゃあ今度はみんなが不快にならないよう配慮しよう」と、相手の気持ちがわかってくるんでしょうね。

そうやって主体的に動く力と、相手を配慮する気持ちが育まれていく
それを見ているので、まるたんぼうを卒園する子どもたちに対して、小学校や次の場所へ送り出すにあたって、心配することってあまりないんですよ。
どんな集団の中でも、自分の居場所をつくっていけると思っているので。

ーーそんな風にたくましくしなやかに育っていくには、今あっちゃんが言ってくれた、「見守る保育」やひとりひとりの「自由を尊重すること」に加えて、「森の力」も、やっぱり大きな要素になると思うのですが、あっちゃんから見て、子どもが森の中で過ごす価値って、どんなところにあると感じますか?

あっちゃん:安全管理さえしっかり大人側がしておけば、なんでもやらせてあげられる、というところですね。公共の場所や室内と違い、森だからこそ、子どもたちの自由を尊重し見守る保育、というものができると思います。

あとは、森の中では、本当に危険を感じさせるようなことや、人間の力ではどうにもならないことが起こる。それを体験することに価値があるんだろうなと思います。

深く雪が積もって、広い場所でお弁当を食べたくて歩こうとしても、足が埋まって全然進めなかったり。川で濡れてしまって、雨も降ってすごく寒くて、焚き火をしたいけど、うまく火がつけられないとか、、。
子どもたちみんな、想定外のことを日々たくさん経験しています。

ーー想定外のことが起こる森で、子どもたちの安全管理をしながら、信じて待つ保育をするって、とても難しいことですよね。

あっちゃん:やっぱりヒヤヒヤすることもあります。もう見てられない、これ以上は自分が助けられない、待てない、というときは、理由とともに「もうやめてほしい」と伝えます。包丁を使っているときや、火に近づき過ぎの時、かなり高い場所から、下を見下ろしている時など、、。

やらせてあげたいけど、安全も守りたい。
どこまで待つか、そのぎりぎりのラインを決めるのは、いつもすごく考えさせられる、スタッフ同士でもよく話す部分ですね。

ーーあっちゃんは、いつも笑顔で働いてくれていて、保護者としてはとてもホッとさせられます。まるたんぼうで働く楽しさをどんな時に感じますか?

あっちゃん日々のつながりの中で、子どもたちの小さな成長を感じられるところですね。自分で見たり、他のスタッフの話を聞いたり、子どもたちの変化をたくさん発見できて、おもしろいです。

あとは、単純に、四季の森で遊ぶことを、僕自身楽しんでいます!
1年前に知ったことを、次の年の同じ季節に、また体験できたり、深めていけたり。例えば、去年の秋、美味しいキノコが生えている木を何本か見つけました。今年もここに生えるかな、今年はもっと良い状態を見極めてキノコをとってみよう、と思って楽しみです。

キノコだったり山菜だったり木イチゴやグミだったり、森で何かを摘んで食べるって、子どもたちも僕たちも、本当に幸せな気持ちになります。自分で見つけたり、去年は年上の子に採ってもらったけど今年は自分で採った、とか、そんな想いや体験がプラスされているからなんでしょうね。

ーー日々まるたんぼうの子どもたちと過ごす中で、あっちゃん自身も変化したな~と思うことはありますか?

あっちゃん:子どもたちのように、自分も、やりたいことを「言ってみよう」「やってみよう」と思えるようになりました。

人との衝突を避けたくて、やれなかったことがよくあって。それを相手のせいにしていたな、と思います。本当は、やりきれなかった自分の責任でもあるなと思えるようになりましたね。

やりたいことを言える自分になれるよう、子どもたちと一緒に成長中です!

ーーやりたいことを臆せず言うって、大人でも難しいですよね。子どもたちは、その勇気や強さを育ててもらっていると思います。
では最後に、今後、まるたんぼうでチャレンジしていきたいと思うことはありますか。

あっちゃん:もっともっとナチュラルに子どもたちと関わっていきたいと思いますね。

やっぱり、余裕がないときや、危ないと思ってしまった時など、その子をつい動かしたくなる気持ちが、まだまだあるので。もっとナチュラルに、「僕はこうしてほしいと思っている」と、素直に、強く表現できるようになりたいと思います。

他のスタッフたちみんな、とても話が上手で、、僕はちょっと話すのに自信がなかったりして、聞き手に回ってしまうところがあります。スタッフに対しても、「どう思われるか」を気にしすぎず、どんどん自分の思いを伝えていきたいな。そんな大人の姿を子どもたちが見て、「自然体でいいんだ」ってより思ってくれたらいいな、と思いますね。

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森の中で、安全管理を徹底しながら、子どもの「やりたい」を最大限やらせる。
親としてはなかなかできないことなので、そのような環境を整えてくれるまるたんぼうのありがたさを、お話を聞いて改めて感じました。

あっちゃん自身が、日々ワクワク楽しみながら子どもたちと接してくれている姿も、親として幸せな気持ちになります!

「子どもたちと一緒に成長中!」というあっちゃんの言葉が、心に残っています。
スタッフも保護者も、子どもたちも、自然の中でみんなフラットに。
学び合い、磨き合い、共に豊かになっていける。
大人も子どもも共に成長できるまるたんぼうって、改めて素敵だなと思いました。


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