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兄弟や姉妹のように。親密さが紡がれる、託児の時間。【まるたんぼうスタッフ Vol.2 託児スタッフ 中葉奈穂】

鳥取県智頭町森のようちえん「まるたんぼう」には、さまざまな価値観やバックグラウンドを持つスタッフや保護者さんがいます。

そんな多様なスタッフや保護者さんたちに、まるたんぼうの元保護者さんで、ライターとしても働かれている清(せい)さんが、インタビューをしてくださいました。

いろんな人の視点で見た、素顔のまるたんぼうを連載でお届けしていきますので、ぜひご覧いただけたら嬉しいです!

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今回、お話を伺ったのは、まるたんぼう託児(補助)スタッフの中葉奈穂(以下、奈穂ちゃん)です。

まるたんぼうでは、9時~14時までが森での活動。14時~17時が古民家で託児の時間となり、その託児スタッフとして働いてくれています。

奈穂ちゃんは、まるたんぼうの元保護者さん。とても優しく子どもたちに接してくれる小柄なお姉さんという印象なのですが、実は4人のお子さんを育てるお母さん。まるたんぼうを始め、智頭町の子育て環境に惹かれ、母子で移住してきました。芯が強く行動力のある女性です。

在園時は保護者として。今は託児スタッフとして。長くまるたんぼうに携わってくださっている奈穂ちゃんの視点から、お話を伺いました。

【奈穂ちゃん プロフィール】
まるたんぼう託児スタッフ。子育て支援員の資格を持つ。上は中学生、下は小学生の、4人のお子さんのお母さん。まるたんぼうにお子さん達を通わせたくて、千葉県から鳥取県智頭町へ母子で移住。学生時代は心理学を専攻。趣味は、暮らしの中で壊れたものの、繕い(つくろい)をすること。ちくちく縫い物をしたり。古い箒や椅子の座面をお直ししたり。割れた茶碗の漆継ぎも練習しているそう。

清(以下、ーー):奈穂ちゃんは、最初どのようなきっかけで、託児スタッフとして働こうと思ったのでしょうか?

奈穂ちゃん:子どもがまるたんぼうに通っていた頃、週に一度保護者同士で預け合いをしていた時がありました。子どもたちが遊ぶ隣りで、お茶を片手におしゃべりしているような緩やかな子守りです。

その延長で、卒園後も、「(何も特別な資格はないけれど)何か手伝えることがあれば声掛けて」と伝えたところ、託児スタッフとして働くことになりました。

ーー保護者として子どもたちを預かっていた時と、託児スタッフとして託児をしている時と、違いを感じますか?

奈穂ちゃん:保護者として子どもを預け合っていたのは、当然顔馴染みのある子どもたちだけだったので、気負いすることもほとんどありませんでしたが、託児スタッフとなると、毎年入園したての年少さんや途中入園の子どもたちが慣れてくるまではドキドキです。

それでも、私のことをすでに知っている年長や年中の子どもたちが、新しく入った子どもたちに「奈穂ちゃんだよ」と私を紹介してくれたり、おもちゃのお片付けの仕方について教えてあげたりと、上の子たちが状況を把握して下の子たちをサポートしてくれるんですね。もちろん、みんな遊びに夢中で、お片付けも何も進まない、、ってこともありますが(笑)。

いずれにせよ、日々、森の中で子どもたち同士で関係性を紡いでいて、託児の時間もその続きなんだろうなぁと思い、私はできる限り邪魔をしない、見守る、というようなスタンスでいるようにしています。

ーー「見守る保育」って、まるたんぼうがとても大事にしている部分ですよね。なかなか親としてはつい口を出してしまったりと、難しい部分でもあるので、託児でもそんな保育をしてくれているのは、すごく嬉しいです!
他にも、託児スタッフとして子どもたちと関わる中で、発見したことはありますか?

奈穂ちゃん:託児の時間は、森での活動とは違って室内や敷地内の庭だけで過ごすので、子ども同士の関係は深まりますよね。特に夏休みや冬休みは長期間朝から夕方までずっと一緒の時間を過ごすので、泣いたり笑ったりケンカしたり、くっついたり離れたり、兄弟や姉妹のような親密さです。

長期休み中は子どもとのやりとりに疲れてしまう時ありますよね。私は子どもが在園中に託児は利用しなかったので、利用しておけばよかったなーと思ってしまいます。

私自身の子どもはどんどん手が離れていくけれど、託児スタッフでいる限り、ずっと3歳から6歳の子どもたちと関われるということは私にとってとても新鮮なことです。

家では、もう絵本を読んでーと頼まれることも、絵本を読む時に私のひざを独り占めしたり、取り合ったりすることもなくなった今、託児の時間は時に懐かしく愛おしい時間でもあります。 

ーーここからは、奈穂ちゃんのお子さんの入園時のお話も伺っていきたいのですが、まず、奈穂ちゃんはどのようなきっかけでまるたんぼうを知ったのでしょうか?

奈穂ちゃん:初めてまるたんぼうを知ったのは、偶然見たテレビでした。「今すぐはムリだけど、近い将来私はここに行く!!」と直感する程の衝撃を受けました。当時長女は2歳、私は双子を妊娠5ヶ月程で私の親元の近くに引越しして間もない頃で。

当時、一般的な育児論には違和感があり思い悩むこともあったので、社会や人の意見に流されることなく、「ただシンプルに自分の感じるままにいていい!」「自分の感覚をもっと大切にしていい!」と勇気づけられた記憶があります

そして、せめて智頭へ行く前にと、比較的近場でシュタイナー系の園を見つけて、子どもの入園を決めました。
そこで初めて、「自分で選んで行動したら、分かり合える仲間にたくさん出会えた!!」という感動を味わいました。

その後、子どもたち含め、家族みんなで話し合い、まるたんぼうの見学に行きました。

ーー実際にまるたんぼうを見学して、どんな印象を持たれましたか?

奈穂ちゃん:初めて見学に来たのは秋晴れのいいお天気。空は青く、空気は澄んでいて、木々は美しく、紅葉もちらほら見られ、川の水は清らかで。見るものすべてが美しくうっとりする景色の中で、「子どもたちは、それぞれの場所で各々の時間を自由に過ごせるなんて!!」ととてもうらやましく思いましたね。私は一番下の子をずっと抱っこして終わったような、、

2度目の見学はまさかの大雪で、智頭駅に降り立つと一面真っ白な銀世界でした!!何もかもが雪で覆われて、鉛色の空からは大粒の雪がどんどん降り続ける中、まるたんぼうの子どもたちがたくましく遊ぶ姿には圧倒されました。

見学の後、数日智頭に泊まったんです。見学の時は、ただただ圧倒されて雪遊びを楽しむ余裕はありませんでしたが、その数日の間、大量の積雪と大量の除雪された雪とで埋もれそうな智頭の片隅で、子どもと私は、まるたんぼうで子どもたちが繰り返し遊んでいたすべり台をそれぞれ見よう見まねで作っては滑り、修正しては滑ってをひたすら繰り返しては楽しみました。 

ーー初めての雪の中、数日で楽しく遊べるようになるなんて、すごいですね!
その後も、お子さんたちはますますたくましく成長されたのかな、と思うんですが、奈穂ちゃん自身も、まるたんぼうに入園して、子どもとの関わり方や子育てに対する考え方は変わりましたか?

奈穂ちゃん:毎日たっぷり森で遊んで帰ってくる、子どもの服についた泥やヨゴレが、愛おしくなりました!(笑)
以前は、泥やヨゴレは、毎回ゴシゴシ手洗いしてから、洗濯機に入れていました。
「汚れたままにしてはダメ」と思っていました。
アウトドアに出かけると、「土の上に置いたらバッグが汚れる」「座ったらお尻が汚れる」と、汚れが気になっていました。

でも、智頭へ移住し、自分自身も自然に沿った暮らしを始め、毎日森で過ごす子どもたちを見ていて。
ある時、ヨゴレは自然のものだよな、汚らわしくないんだよな、と、不快感を感じなくなったんです。

子どもが、服にものすごい泥汚れをつけて帰ってきたら、「今日は思い切り遊べたんだな」と、微笑ましく思えました。入園当初は、カッパがそれほど汚れていなかった。次第に、カッパに、長靴に、服に、顔に、泥や草をつけて帰ってくるようになった。親として、その変化が嬉しくなりました!

子どもが、汚れが落ち切らない服でも、愛用して着ているのを見ると、「あの時にあれをして汚したんだよね」と思い出し、愛おしく感じます。

洗剤を使って潔癖なまでに洗っていた自分は不自然だったな、と思い、そこまで神経質になって子ども服を洗うことをやめました。毎日森で使うカッパなどのアウターは、水洗いで十分です。
本当は、自分も子どもも気にしていなかったのに、人の目を気にして「服を汚しちゃダメ」という常識に縛られ、疲れていたんだなーと、今となっては思います。

ーー子育てをしていると、常識や固定観念のようなもので自分自身を縛ってしまうこと、ありますよね。

奈穂ちゃん:まるたんぼうに入園してから、自分を縛っていたものを、1つ1つ、手放していけたような気がします。

母親として、まず自分が健やかであることを最優先するようになりました。自分自身が疲れていて余裕がないと、イライラして子どもや家族に当たってしまうので、自分の心と身体を満たすことが先です。

それから、子どもが失敗しないように、痛い目にあわないようにと、声をかけて手をかけて、子どもがやろうとすることを邪魔しない。子どもが自ら成長しようとする力を信じて、見守る。手助けを求められた時だけ応えるスタンスで。という心積もりでは一応います。

ーー子育て以外の面で、自分自身が変化していったと思うことはありますか?

奈穂ちゃん:以前は、自分はこれが出来ないあれも苦手と、今の自分を否定して、「もっと上手くできるようにがんばらなきゃ」と「でもやっぱり、できない」の狭間で辛かったんです。

でも、まるたんぼうでは、子どもの個性を良いも悪いもなくそのまま受け入れてもらえるので「できない自分も含めて私なんだなー」とある時すっと受け入れられるようになって、出来ないと否定していた自分すらも愛おしく思えてきました。おかげさまで、自分に甘くなりました。

割れた茶碗の継ぎや、ちくちく縫い物が趣味

 ーー最後に、入園を検討されている方に向けてメッセージをお願いします!

奈穂ちゃん:私は、子どもが4人いますが、まるたんぼうに入園してから、私自身が変化していろいろなことを手放せたり、子どもを育てる楽しみ・観察する楽しみも味わえたことで、子育てがラクに楽しくなりました。

そんな風に、少し肩の力を抜いて子育てができる親御さんが増えてほしいと思っています。少しでもまるたんぼうが気になった方には、ぜひ一度見に来てもらえたら嬉しいです!
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私も、働きながら子どもをまるたんぼうに通わせていたので、平日夕方まで託児があり、長期休暇も預けられることに、とても助けられていました。

奈穂ちゃんのように、子ども一人一人を愛おしく思い、個性をありのまま受け入れてくれている託児スタッフさんがいること。
保護者が心から安心できる託児環境をつくってくれていることに、改めて嬉しくなりました。


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