ロマンティック準備中〜推し不在のオタクの嘆き〜

「ロマンティック準備中」
チーム8の岡部麟がキャプテンを務める(自分で書いててよく分からなくなる)新生チームA、最初のチーム曲です。
「Teacher Teacher」のTypeAに収録されているこの曲。5/30に発売され、劇場公演でも披露はされているので聞いたことのある方も多い……と信じていますが、どうなのでしょうか。

少なくとも、歌詞に関して読み解いている方がそんなに多いとは思えませんが、少し読み解くと面白い気がしたのでつらつらと書いてみます。
皆さまの過去のオタ活、現在のオタ活、今後のオタ活で何かに悩んだ際には読んで哀しみを共有していきましょう。

"どこかで空砲聴こえたら
そろそろ始まるよ
真っ青に晴れてよかった
素敵なフェスティバル
ロゴ入りTシャツに着替えて
身も心も浮かれて
まだ早いけど
広場に行ってみよう"

「どこかで」聞こえた空砲により、フェスティバルの開始を感じとる。
「身も心も浮かれて」いる彼は「まだ早いけど」「広場に行って」みます。

浮き立つ気持ちが素直に表現されていて、テンションの上がっている感じ。
ここで少し注目しておきたいのは最後のフレーズですかね。
「身も心も浮かれて」「まだ早いけど」「広場に行ってみよう」
気持ちは浮かれているんだけど、まだ始まっていないんですよね。そして、とりあえず広場に行ってみる。
この始まっていないのは「フェスティバル」なのか、それとも、、、

"どんな場所も人が集まれば
何かが起きるよ
誰かと誰かは
きっと恋も生まれる"

ここは、まぁつなぎのフレーズではありますかね。
ただ、ここで取り上げておきたいのは、「誰かと誰かは」「きっと」「恋も生まれる」でしょうか。
確信性がない。
恋が生まれるのは「誰かと誰か」
そこに「自分」は不在です。
しかも、「きっと」と付いているのでさらに確信性が薄まっています。
そこに見えるのは、浮かれる気持ちとは正反対の冷めた視点、、、のように私には思えます。

ここからサビに入ります。

"行くぜ!"
気合いを入れます。

"ロマンティック 準備中
ロマンティック ときめきながら
君を!そこの君を!
僕は待ってるよ"
ここの「君」の使い方。
「君」の対象が不在なんです。
秋元康の歌詞で「僕と君」の関係性を描く歌詞の場合基本的に「君」は二人称代名詞であって明らかに特定の誰かを指す言葉です。
ただ、この「君」は三人称なんですよね。
存在しない「君」に向かって虚空に向かって話している。
その「君」を「僕は待ってる」

"行くぜ!
ロマンティック 準備中
ロマンティック 夢を見ている
群衆の中で運命は巡る"
「夢を見ている」
「君」に出会える夢を見ているんです。
けれど、「君」には出会えない。
「運命は巡る」つまり時間が止まらない。

"恋をしたい
付き合いたい
出会いたい"
この最後のフレーズ、「出会いたい」に全てが詰まってますね。

さて、ここまで読んできて分かるように(?)、この曲は「推し不在のオタク」の歌です。
身も心も浮き立ってはいるけれど、特定の「推し」には出会えていない。
「きっと」ほかのオタクたちは「誰か」と出会って推していることだとは思う。けれど、自分はそんな対象とは出会えない。
ただ、オタ卒したいわけではないんです。いつも、ここで「準備」をしているんです。「まだ早い」かもしれないけれど広場には行ってみている。
この、推し不在の悲壮感、哀しみは2番になってくると更に分かりやすく表現されてどんどん加速されていきます。

"One Two Three
OK! Alright...!"
大丈夫だと自分に言い聞かせている感じですかね…

"逸(はぐ)れた風船見かけたら
迷子がいるってこと"
「逸れた風船」「迷子」どちらも自分と重ね合わされる哀しみが見え隠れします。
例えば、色が不安定(推しサイの色の定まっていない)ペンライトと推し不在のオタクみたいな(笑)

"爽やかな風が吹いてる
懐かしいミュージック"
推しが不在だから、グループの曲すらも「懐かしい」わけですよね…

"噂のカップルとすれ違って
もうやってられないよ"
目の前で推しサイ、団扇を振り、推しにレスを送られるオタクが目に入る。
自分には特定の推しがいないことを思い知らされる瞬間です。

"さあお目当ては
どこにいるのかな"
今見ていた子じゃなかった。
この子推しのオタクはここにいた。自分の運命の相手(推し)ではなかったと悩みはどんどん深くなっていきます。

"知らない人と袖振り合うも
多生の縁だし…
ホントはとっくに
会ってるかもしれない"
もしかしたら、気づかなかったけれど推しになれる子とは出会っているかもしれない。
新しい子ばかり目をやっていたけれど、意外とそうじゃなくて長くいるメンバーの中から推しが見つかるかも?と視点を変えてもみます。

"マジで!
ドラマティック 期待中
ドラマティック 奇跡のように…"
もう、だんだん縋り付くような雰囲気になってきます。
お願いだと、最早「奇跡」だとまで行ってしまっていますが、それでも「期待中」です。

"君か?そこの君か?
僕の恋人は…"
もはや、なりふり構っていられず、パッパッパと目を移してみます。
僕の推しはどこにいるんだ!という心の叫びが目に見えるように現れてきている。

"マジで!
ドラマティック 期待中
ドラマティック 未来のために
今来た道をもう一度歩く"
「未来のために」「今来た道をもう一度歩く」
きっと過去には推しがいたんでしょう。前の推しと出会えたときと同じようなことをしてみれば次の推しに出会えるんじゃないかと信じて、同じようなことをやってみもします。そう、「未来のために」
それに、「ホントはとっくに会ってるかもしれない」わけですから、来た道を振り返ると本当に出会えるかもしれないんですよね。

"キスをしたい
抱きしめたい
見つめたい"
接触がしたい。レスが欲しいという訴えを強く感じます。

もう、2番までくると推し不在の哀しみを隠すつもりがなくなって、周りへの羨望も強くなって、「なんであいつには相手がいるのに僕にはいないんだ!」みたいな叫びも強くなっていっています。

"紙吹雪と揺れるフラッグ
ねえもしも よかったら
僕と踊りませんか?"
低姿勢になり、縋り付きレベルも限界突破ですね。

"愛に溢(あふ)れパレードは進むよ"
自分には愛はないけれど…

"行くぜ!
ロマンティック 準備中
ロマンティック ときめきながら
君を!そこの君を!
僕は待ってるよ
行くぜ!
ロマンティック 準備中
ロマンティック 夢を見ている
群衆の中で運命は巡る
恋をしたい
付き合いたい
出会いたい"
ここで1サビを繰り返すことで、まだ余裕のあった頃を思い出している感じもしますね。
この頃はまだよかったな…って。

"One Two Three
OK! Alright...!"

ここで、OK! Alright...が何度も繰り返されるわけですが、自分にまだ大丈夫だ、まだ大丈夫だと語りかけている感じがしてきますね…

というわけで、「ロマンティック準備中」という「推し不在のオタク」の哀しみ、嘆きの溢れた歌詞をざっくり読み取っていきました。

これね、これが「研究生楽曲」だったら分かるんですよ。
この中から推しを見つけてね!というどちらかというとポジティブな意味合いも見出せる。

でも、これって「新生チームA」の楽曲なんですよね。
これ、秋元康の嘆きなんじゃないかと。
つまり、今、秋元康はチームAに推しが見つけられていない。
その悩みをダイレクトに表現している。
推しを見つけたいという気持ちはあるものの、何か運命の出会いみたいなものを信じて探している雰囲気。
色々試そうとはしているけれど、やはり見つけられていない感じ。

「だから今のAKBはダメなんだ」とか言いたいわけではないんですよ。だって、いつでも「準備」はしているわけだから。
これはまだ諦めてないんですよ。だったら、まだ延命できる。今のAKBは秋元康の推しを見つけてあげるターンなんですよ。

だから、今後もしっかりチーム曲を重ねていって、秋元康が推しを見つけていくまでのドキュメンタリーを描いていってほしいななんてそんなことを思っています。

それで、この曲が劇場で披露されているという事実も重要で。
この曲は明らかに劇場で披露されるべき曲だから。

柏木さんが、「アイドル修業中」公演の話をしているときにおっしゃっていたんですが、「そばかすのキス」で全員が一列に並ぶときがあって、そこで推しを見つけてほしいと。
この曲も、「OK! Alright...」のところで一列に並ぶんですよ。
これ、ここで推しを見つけて!ということだと思うんです。
この曲は推しを探し求めるオタクの歌なんですから、ちゃんと推しを見つけるような構成になっていると信じるべきだなって。

チームAには推しがいないという皆さんも劇場に足を運んで、公演の最後に披露されるこの曲で推しを見つけるのも面白いのではないかと思います。

そのときは、秋元康に「俺は見つけたぞ!」と勝ち誇っておきましょう。

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