松島茂アナウンサー

当たり前だったことが当たり前ではなくなる、その喪失感。

特にファンだったわけではなく、ラジオがそもそも苦手な私はそこまで熱心なリスナーではなかった。
それでも、関東地方に住んでいるライオンズファンなら、文化放送ライオンズナイターのお世話になっていない人はほぼいないわけで、松島さんはそこの看板…エースアナウンサーだ。ライオンズのリーグ二連覇で記者会見とビールかけの司会が二年連続彼だったことからもそれが判る。

昨日の夜、普段通りTwitter、それも裏アカを見てた。中居正広独立会見の余韻を引っ張っていたので、SMAPのファンの人のツイートを読みたくて。
しかし、そこで目にしたのがこのツイートだった。

https://twitter.com/joqrpr/status/1231875886325977088?s=19

衝撃だった。体調を崩されて休養したのは知っていたけど、まさかそこまで深刻だったなんて。

この日はちょうど彼のレギュラー番組「岩本勉のまいどスポーツ」放送日。慌ててradikoのタイムフリーを立ち上げる。
いつものハイテンションなオープニングはなく、アシスタント長アナの「この時間は『岩本勉のまいどスポーツ』をお届けします。」という言葉から始まり、文化放送アナウンス部長、太田英明アナから訃報が伝えられ、長谷川太アナは、入院時の様子を語るも涙が堪えきれない。
番組の逐一は語らないけど、みんな辛そうだった。
岩ちゃんは最初から泣きっぱなしだったし、冷静に努めよう努めようとする長さんも堪えきれず。番組常連でこれきっかけで結婚もした柏原竜二さんも、声つまらせてた。えのきどさんと東尾さんが何とか場をもたせようとしてたけど。いや、東尾さんはあのまんまかも知れないけど。

断続的に泣いている。
スポーツアナなのにいつものんびりとした空気を漂わせている長谷川さんが声をつまらせるのを思うたびに。冷静に努めようとしてかなわない長さんを思うたびに。
駅伝好きの私はそちら関係のアカウントをたくさんフォローしている。彼らからの哀悼の言葉を見るたびに。

私は斉藤一美も真っ青、というほど(判る人にしか判らん例えですが)涙脆いので、ちょっとくらい泣いててもまあまあ誤魔化せるし、と思ってたんですが、会社で「大丈夫ですか?」って言われた。マジか。

文化放送に記帳に行ってきた。
私の前に6人くらいいた。気がついたら私の後ろにも同じくらい並んでた。
この前ここに来たのは、文化放送とテレ玉とNACK5の合同イベント「Q玉ナック」のときだったな。
まいどスポーツの生放送の途中からいれてもらったんだった。
岩ちゃんと松島さんのいつものトークで盛り上げて、そのあと、ライオンズナイターの実況陣と、ライオンズチャンネル、サンデーライオンズのMC陣と、ほんとに楽しかったなあ。
そうそう、ラジオ大好き秋山翔吾も来たんだよ。
人にやさしくなんて登場曲のくせに自分にも人にもきびしくだめだしするんだからなあまったく。
ほんと、楽しかったよなあ。

あれから、たった11ヶ月。
こんなかたちでここを訪れるなんて。

記帳って、普通は名前と、住所くらい書いておしまいなんだけど、一人二行まで想いを書いてほしい、という趣旨の説明書きがあった。
どうしよう、この二行で何が書けるだろうか。
すると、場内に実況が流れて来た。優勝決定の日のZOZOマリン。泣いちゃうじゃん。やめてよ…。

とはいえ、待っている人もいる。書かなければ。
手に取ったサインペンは、すでにみんなの想いを充分に受け止めていて先がふわふわ。
私の悪筆では、ほとんど何を書いているか読めないかもしれない。入りきらずに尻窄みな言葉を残す。
一礼して傍らにおいてあったクリアファイルを手にする。
説明書きはうろ覚えだけど
「本日はありがとうございました。松島アナも喜んでいると思います。良かったら松島アナのポストカードをお持ち帰りください」

格好からして、まいどスポーツで舞台に立ったときのものだと思う。
載せていいか判らないので載せないけど。
その舞台、見ていないけど。
昨日のまいどスポーツで流れた松島さんの気持ちのこもったセリフとこの写真を、合わせてみるのが一番いいも思うのだ。

ずっと気になってたことがあった。
私は斉藤一美と松島茂がライオンズナイターのツートップだと思ってた。
この二人は、お互いのことをどう思っていたのだろうと。
二人とも熱いタイプだけれど、斉藤一美の実況は自己主張の強いタイプで好き嫌いが分かれる。松島茂は、マルチタイプの実況だった。意識していないはずはないだろうと。

少々お時間、頂戴致します。
松島茂アナウンサーは、わたくしよりも四歳若い喋り手でした。
彼とは20年以上ともにスポーツアナウンサーとしして仕事をしております。
周りに、一人の敵も作らない、とにかく優しい男です。あまりに人に優しいので、こちらが苛立ったこともあります。何度も。
でも、今思うとそれも、わたくしが到底まねできないくらい誠実なナイスガイでしたから、彼にジェラシーを感じていたのかもしれません。
松島君が入社4年目、神宮球場のヤクルト戦へ二人で取材に行きました。97年の春です。
忘れないですねー、あれ。
隣に座って彼の実況を初めて聴いた時、素直にこう感想を伝えていたんですよ。
「上手いっ!!モノが違うっ!!」
さすがに、照れてましたね。
松島君の一番の凄みは、
「文化放送で扱うスポーツ中継は全て実況できる男でありたいんです。」
こういう信念を抱き続けたところにあります。
野球しか喋れなかったわたくしの遥か上をいった男です。
妙な話になるんですが、彼もわたくしも、自分の相撲の強さには自信を持っていました。
一度真剣勝負したかったですね。今となっては叶いませんが。
仲間の他界、つらいですね。
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2020年2月25日 斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI より

感情過多で感激屋、涙脆いことで知られる彼が、時々わずかに呼吸を乱しながらも、冷静に、抑制したトーンで語っていた。それが、また、胸に来る。

まとまらないまま、だらだら書いてしまった。
そうこうしているうちに、時間は過ぎていく。
ライオンズエクスプレスでは、楽しげな選手のトークを伝えている。
松坂大輔が実戦登板で1イニング2失点だか、この時期の最速141は悪くない数字だ。
新型コロナの影響はあるにせよ、みんな前に進んでいくんだ。
まもなく、プロ野球開幕。
彼の分まで、なんて偉そうなことは言えないけど、私たちはライオンズナイターを聴いて、ライオンズを応援していく。

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