薬になることは、誰かの毒になるということ
「毒にも薬にもならない」という言葉がある。
それって、実はものすごいことなんじゃないか。
大学生の頃、教養科目で「毒と薬」という授業が大好きだった。
あらゆるものごとには、「しきい値」というものがある。それを下回れば効果はでない。上回ると効果が現れる。そこで現れる効果が望ましければ薬、望ましくなければ毒と呼ばれる。
規定の量を飲むと病気が治るなら薬、死んでしまうなら毒。
同じ効果でも、ある程度までは望ましいが、それ以上は望ましくないということがある。
たとえば、砂糖。糖分は、全く摂らなければ脳がエネルギー不足に陥るが、摂り過ぎれば肥満や高血糖など望ましくない効果をもたらす。摂らなすぎても、摂りすぎてもいけない。
また、同じものを同じ量摂取したとしても、ある人には薬でも、ある人には毒ということもある。
高血圧の人は降圧剤を飲んで血圧を標準値まで下げるが、低血圧の人が飲めば血圧が下がりすぎてかえって危険だ。
ことばも、そうではないだろうか。
ある人には救いになることばが、ある人にはひどい責め苦かもしれない。
ある時には嬉しく思えたことばが、別の時にはカチンとくるかもしれない。
誰かのためになれば、と思って多くの人の目に触れるところに何かを書くとき、このことばが傷つけるかもしれない誰かのことを忘れずにいたいと思う。
自分が誰かのことばに良くない何かを引き起こされたときには、「これは私のためのことばではなかったな」と思えるようでありたい。
よろしくお願いします!