人形にブチ切れられた話
小学生の頃、友人が人形を買ってもらったから乙女ちゃんも何か持ってきて一緒に遊ぼうと言われた。
お気に入りの猫のぬいぐるみを持って行ったが、「人形じゃないと遊びにならないじゃん!」と言われ、渋々抱き人形を持って行った。
友人の人形は有名玩具メーカーから当時発売されたばかりの、横にすると目を閉じるお世話人形だった。
私の人形は私が小さい頃におばだか祖母だかが百貨店で買ってきてくれたフランス人形風のもので、幼心にあんまり外に持ち出して遊ぶものではないと感じていた。
私の人形も横にすると目を閉じるタイプだったので、友人の人形と一緒に寝かしつけたり、傾けると中の液体が減ったように見える哺乳瓶でミルクをやったりした。
ある日、自室のドアを開けて廊下に出ると、私の人形が逆さまに吊るされていた。
人形は目を閉じ、ぐったりと手を垂らしている。
「大変、早く降ろしてあげなきゃ!」
慌てて人形を縛るロープを解こうとするが、ふと気づく。
「このお人形、横にすると目を閉じるけど、逆さまにしても目を閉じたっけ?」
人形がカッと目を見開いた。
人形には、目が三つついていた。
そこで目を覚ました。
暴れる心臓が落ち着くのを待ちながら、私はこんなことを考えた。
お人形、おもちゃになんてしちゃいけなかったんだ。
怒ってるんだ。
それ以来、友人に人形遊びをしようと言われても断った。
人形は「ごめんなさい」とよく謝って、もとしまってあった場所にしまいこんだ。
それをきっかけに人形が苦手になることはなく、高校でできたドールオタクの友人に話を聞いてむしろとても好きにはなったが、お迎えするのは申し訳ないと思い、眺めるだけにしている。
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