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「ひとりぼっちじゃない」④考察、感想

「ひとりぼっちじゃない」5回鑑賞後の考察、感想です。
★ネタバレたくさんあります★
★原作未読★

これで4回目の考察投稿です。
今まで5回鑑賞したのですが見事に見終わった後の気持ちが違うのです。
だから今までの考察を最初から読んで頂いてどんなふうに変わったのか、を楽しんで頂くのもいいですし、今回の考察だけ読んで頂いても楽しんで頂けるように書けたらいいなと思います。
時系列バラバラで過去の考察に触れている箇所もあります。
(触れていないところもあります。)

ゆっくりお時間のある時にどうぞ。



◆序章
冒頭からススメの不器用さとコミュニケーション能力の低さにいらいらしながらも自身にも覚えがある行動につい下を向きたくなる。
靴下の見えたつんつるてんのズボンにダサさも相まってなんとももどかしい。
あっという間にススメの性格が理解できる。すごいなあ。

宮子の部屋。初登場の黒い実をつける木。
蛾の幼虫かな?毒々しい毛虫がのそり。
う、気持ち悪い。
ジャボチカバという木なのか。

『ジャボチカバの花言葉は、「永代」、「芳醇」、「神秘」です。
ジャボチカバは実をたくさん収穫できるほどにするには数年がかかるとされています。しかし、一度植えたら孫の代まで実がなり、長く果実を食べるなど楽しむことができるのです。そのことから、「永代」という花言葉がつけられました。

「芳醇」とはジャボチカバの果実のお味そのものを表現した花言葉と言えるでしょう。ジャボチカバの果実は食べることができ、ジュースやジャムなどにも利用されています。若干の酸味がありますが、見た目が葡萄のような紫色の果実なことから、「芳醇」という花言葉になったのでしょう。

ジャボチカバの「神秘」という花言葉は花や果実をつける場所の特徴にあります。ジャボチカバは枝ではなく幹に花を咲かせるのです。花後は果実も幹につくため、見た目はとても変わっています。通常であれば、枝につくはずの花や果実が幹に付く様子は神秘的に見えたようです。そのことから「神秘」という花言葉がつけられました。』
(カッコ内、Green Snap様より引用)

ふんふん、なんとも意味あり気。
宮子さんのようではないの。妄想がむくむく膨らむ。

おや、窓にクジラが泳いでいる!なんだ、なんだ?と思っていたのだけど、ふと二人でプロジェクターを見ていたのだと気づく。うーん、深読みしすぎた。

そして朝。アサガオはよく「愛情」「さわやか」の花言葉を用いられるが、ここではツルの特性から「あなたに絡みつく」を選びたい。むー、不気味さが増してくる。
ウツボカズラも意味ありげ。


◆宮子に溺れる
夜道ススメが箱入りドリンクを持って歩く。オレンジ色の街灯がなんとも怪しげ。
きっとここからが宮子ワールドの入口。

101号室なのに降りていくところが謎めいていてとても好き。

初めての交わり。カットごとに敷いている布が変わる。そして昼、夜、朝?光と闇。
一晩の出来事ではなくて何日も交わりすっかり虜になったのだと理解。


◆蓉子
蓉子の部屋に宮子を描いたという絵が飾ってある壁左側に腰から膝の後ろ姿のヌードが描いてあるのを発見。
このくびれ、ヒップのふくよかさ、これって宮子よね。はあ、やっぱりただものではない蓉子。異様な好意、駄々洩れですやん。
ピラミッドみたいなものにぽかぁと開いた口、耳、鼻だけが中央にくっついている。
これも宮子?そして蓉子も覗き見していたのかと思った。味覚、嗅覚、聴覚の話、もしや聞いていましたか?とぎょっとする。
端々に見える蓉子の目力にぞくぞくした。 

そして思い出す。道路で横たわる宮子、珍しくピアスしていた。
おそらく男性からのプレゼント。
蓉子がヤキモチを焼いてもめたのだろうか。
二人の世界に入れずススメが可哀そうになるけど関係性がより密なのが伝わるシーンだったな。


◆狂っていくススメ

何度見てもここのあたりの様子が好きだ。
だからここはちょっとボリューミーに書く。

そもそも電話で会話はしているのか?
確かに会話していると思えたのは宮子の「してないよー。」と聞こえた時と観劇に誘われた時だけ。他は本当にお話ししていたのかしら。

そういえばススメを轢いた車のナンバーは「627」。同じ穴のムジナ?ってことかい?
ウツボカズラの甘い匂いに誘われ穴に落ちる虫たちの様子が頭に浮かんでゾクッとした。

骨折したからとススメの家に来てくれることになって嬉しすぎて仕事終わりにスタッフへ「お疲れ様でした」って声をかけるあたり浮かれている。かわいいな。
ネックレスを見ていたのに選んだのはアンクレット。足枷みたい。独占欲の表れか?

車いすに乗せられた人=宮子が捕らえた人と思った。
ススメが見た人は小劇場の最前列に座っていた人かな。

けれどもススメは宮子の特別ではないと気が付いていく。
不気味なおばさんとのレモンとキャベツのやり取りでなんとなく他の異性の存在が漂ってくる。
小劇場で会ったスーツの男性、最前列の白いシャツの青年、キリン男。そして繰り返される無言電話や道路に横たわっていた宮子のピアスも匂う、匂う。

宮子の部屋でせっかくの二人きりの時、鍵をかけておいたのに誰かが来たら入れるしね。
ある時部屋に突撃したら鍵がかかっていていくら呼び鈴押してもでてきてくれなかったのに。
カギかけて出てきてくれない時はお兄ちゃんかと思っていたけどお兄ちゃんは鍵かけない人だからまた違う人が居たのだろう。
自分は鍵をかけても他の誰かの入室を許す存在で、ある人の時は中に入れてもらえない特別な存在。
覗き見を決意したときプリンも食べたくて食べたわけじゃなくて、マウントを取りたかっただけのよう。急いで掻き込んでいたことから「俺だってここに来ていますよ。」というアピールだと思った。

そして物置からの目の演技、すごかった。目は口ほどにものを言うとはこういうことなのか。
ある夜、帰宅した宮子のワンピースに何やら書かれている。
ススメが聞くとクレヨン…、かな?わかんない、といつものほんわりした様子。
クレヨン…かな?ってわかんないのは脱いでいたからだよね。あー、あー、あー。

ああ、自分は特別じゃないと気づき唸り声となる。イラつくよね。うんうん、と共感。
木彫りの宮子だけでもそばに置いておきたかったのかな。
やけくそで蓉子と交わるけど結局宮子の優先順位は変わらない。
がっかりするススメ。そして少しずつ離れる決意が芽生えたのかな。



◆ウサギ
自死したの、小劇場bubで見かけた最前列の青年かな?
ウサギ、青年が飼っていたのかも。面倒見てあげられないから、とウサギを預けた感じがする。もしあの既婚者だとしたら家族が面倒見てくれそうだもんね。
前の考察でも触れたけど監督は「牛柄」にこだわりがあるとのこと。
調べたら肉食動物には迷彩柄に映り見つかりにくくなるのだとか。
ふーん。これ以上誰かが宮子を食べられないように?目隠し?
わからないけど迷彩柄、とそう考えるのが私は面白い。

◆宮子との別れ
特別にはなれない、そう感じてか別れを決意するススメ。
引き出しに髪の毛の糸巻きはまだあったのか?なかったのか?ここ不明だよね。
あったとしたらほかの男性の匂いがするし、なくなっていたのなら蓉子が持って行ったのか?
あ。もしやすでにお別れして物置に?
あー、さっぱりわかりません。
あってもなくてもどっちでも面白いけれど「綺麗なんですけどね。」って蓉子が言っていたから見てみたいな。それはとても気持ち悪く美しいのだろう。

「僕は…。」
このあとのセリフ、いっぱい考えたけれどやはりススメのように言葉としてまとまらなかった。嫉妬、独占欲、愛されたい欲望、そして感謝。ないまぜになった感情が言葉を詰まらせたような気がした。
がんばれススメ、振り返るんじゃない!と思わず応援したくなるシーンだった。



◆お母さんとともこさん
はあ。ここまで書けてやっとほっとする。
お母さん、ともこさんと三人でカニを食べているところ。
現実空間にやっと戻ってこられた気がする。

いやいやしかし、おっ⁉と思ったのがお母さんの後ろに見える花瓶。
ウツボカズラモチーフの木製っぽい花瓶があるじゃない。
枯れたウツボカズラのようにも見えた。

もしかしたらお母さんにも宮子のような時期があったのかな。
今は穏やかな恋愛?パートナーとの出会いに身を委ねていてとても幸せそう。
長崎行きを前向きにアシストしたともこさんも素敵だったし、何かあったの?と本気で心配するお母さんの真剣なまなざしもぐっときた。

やっと微笑むススメに私も力が抜けてくる。
良かったね、ススメ。がんばれ!と晴れ晴れとした気持ちになった。



◆最後の宮子の部屋

色別のゼラニウムの花言葉
白のゼラニウムの花言葉は
「あなたの愛を信じない」
赤のゼラニウムの花言葉は
「君がいて幸せ」
ピンクのゼラニウムの花言葉は
「決意」
深紅のゼラニウムの花言葉は
「憂鬱」
黄のゼラニウムの花言葉は
「予期せぬ出会い」
1回目の考察でも触れたけど最後まで花を咲かせることがなかったゼラニウム。
どれも当てはまるようでまたここから妄想が膨らんでくる。

置いていった木彫りは直前の考察と同じ考え。あなたには実体がない、顔がない、つかめない存在だという意味に解釈した。のっぺらぼうの顔。
自分の中では対等に愛し愛される存在ではなかったというメッセージ。
最後に、あなたは俺には理解不能だよ!さようなら!という叫びにも受け取れた。
子宮のようにも思えて産まれ直し=再出発の意味も感じる。
宮子はじっと見つめてあっさりと物置へポン。
ああ、幾度となく繰り替えしてきた行為なのだろうな。

そこから静かでおだやかなクレジット。
風の音が心地よい。
ベランダで満足気にくつろぐ宮子を想像する。
蓉子のようにハンモックに横たわっているだろうか。
それともちんまりと三角座りをして飲み物でも飲んでいるのだろうか。
ススメも蓉子も幸せの形が違っていてそこに向かっていった。
宮子は今のまま充分幸せなのだろう。
今でもそれぞれが幸せでありますようにと願いたい。




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ここまで長文を読んでくださりありがとうございました。
色々と考察しながら観られる作品に出会えて幸せで感謝です。
俳優井口理のファンにも伊藤ちひろ監督のファンにもなりました。
最後にもう一度、何も考えずほわーっと観られたら良いなと思っています。
又新たな発見があって書きたくなるかもしれませんが、もしその時はまたお付き合いいただければ嬉しいです。

お時間下さりありがとうございました。
まるいち


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