よりよい遺言書作成に向けてのひと工夫 ~自筆証書遺言書保管制度と公正証書遺言との比較~

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自筆証書遺言書保管制度が令和2年7月10日に運用開始され1年が経過しました。これにより、遺言がより身近になりものになり遺言作成が促進されるようになりました。しかしながら、従来の公正証書遺言の制度も残っており。運用開始から1年が経過した今でも、どちらが良いか迷っておられる方も多いと思います。
またコロナ禍において不要不急の外出を控えるよう言われている中で、今自宅で遺言書作成に向けて構想を練ることは非常に有意義だといえます。ここでは自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言との比較について考えてみましょう。

① 自筆証書遺言書保管制度とは
一言で言うと、法務局の内部にある 「遺言書保管所」にて、自筆証書遺言書を保管してもらえる制度です。

もともと、自筆証書遺言は自宅(例えば、仏壇、タンス、金庫など)で保管されることが多く、紛失したり相続人による破棄、隠匿、改ざん等が行われたりするおそれがありました。また、相続発生時には、家庭裁判所による検認手続が必要となり、手続負担が重いものでした。このような問題点に対応するため創設されたのが遺言書保管制度です。遺言書保管制度を利用することにより、自筆証書遺言に係る遺言書を法務局で保管してもらうことが可能となりました。

具体的には遺言書の保管申請時には,民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて,遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。遺言書は,原本に加え,画像データとしても長期間適正に管理されます。(原本:遺言者死亡後50年間,画像データ:同150年間)

このように、法務局の厳正な管理を経ていますが、メリットだけでなくもちろんデメリットもあります。
② 自筆証書遺言書保管制度のメリット・デメリット
メリットは、事前に自筆証書遺言の要件が満たされていることを確認してもらっているので、検認が不要です。また検索ができるため自筆証書遺言の有無の確認が早く、全国の法務局で検索ができます。例えば北海道に住んでいる人が沖縄の親戚のデータを調べることも容易にできます。

ここはコロナ禍において非常に大きな意味を持っておりまして、緊急事態宣言が幾度となく発令される中で、遠出をしなくて良いということです。また原本は法務局にあるため破棄や改ざんのリスクがありません。どうしても自宅で保管していると良からぬ心配をするものです。銀行の貸金庫がいい例です。

しかしデメリットも多く、遺言の内容どおり手続きがされる保証はなく、自分で手書きで書かなくてはいけない部分もあります。現在AIを筆頭に自動化が進んでいる中、前近代的な部分も残しています。また法務局に足を運ぶ必要もあり、保管制度の手数料3,900円がかかります。料金の比較をするならば、同じ相続で必要となる印鑑登録証明書の発行が600円(大阪府高槻市の例)とすると割高であるといえます。便利でお手軽に遺言を作成したい方向けの制度といえます。
③公正証書遺言について
一方、公正証書遺言は、公証役場で公証人と証人2名の立合いで作成する遺言であり、自筆証書遺言のデメリットをカバーできる遺言の方式です。作成した遺言は公証役場で長期間保管され、偽造や変造のリスクはなく、紛失の可能性もほとんどありません。

遺言書保管制度であっても同じ効果を期待できますが、公正証書遺言はさらにメリットがあります。遺言作成時の意思確認を公証人と証人が行うことで、将来の遺言無効の紛争を予防することができる点です。遺言者の意思能力が争点になった場合、自筆証書遺言では本人が単独で遺言を作成するため、作成時の状況について証拠を準備することが難しくなります。

一方、公正証書遺言では、遺言作成時に少なくとも3名の第三者が遺言作成の意思や内容の正確性を確認したうえで作成するため、本人の意思能力の有無に疑義が生じにくく、公証人や証人からの証言を証拠として準備することもできます。また、公正証書遺言の場合、公証役場に出張作成を依頼できるため、自宅や入院先の病院で作成することができます(遺言書保管制度では出張や代理での申請受付を行っていません)。ここは遺言書保管制度と大きく違うところで、遺言書の作成をどこでも作成したいという方におすすめです。

このように公正証書遺言のメリットは計り知れませんが、遺言作成時に生じる費用は高くなります。公証役場への手数料を支払ううえ、公証人と遺言案を打ち合わせしたり、戸籍を集めたり、財産を裏付ける資料を取り寄せるなどの準備も必要になるためです。こういった準備を専門家に任せることは可能ですが、その場合は専門家への報酬がコストになります。

費用面のデメリットを許容できるようであれば、公正証書遺言を作成することが最も安心できる相続対策になります。このように公正証書遺言は割高ではありますが、将来のトラブルをできる限り防げるという魅力があります。
④まとめ
自筆証書遺言保管制度と公正証書遺言との比較をご説明させていただきましたがいかがでしょうか。
コロナが完全に収束するまでは政府は自宅での作業を推奨しておりますので、遺言を考えるいい機会となります。またアフターコロナにおいても超高齢化社会はますます進み遺言書の作成は必至となります。

また事務面においても相続・遺言は作成書類も多く大変ですので、依頼者が時間と労力を割いてすることはなく、行政書士等の専門家に依頼する方が日々の生活においての負荷が軽くなります。詳細を知りたい方は、個別にお問い合わせください。
また、相続・遺言業務は、是非丸橋行政書士事務所までご依頼ください。

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