日本の採用問題はヤンキー問題

日本の新卒採用とは、やる気採用であり前向きかつ人当たりの良い人ほど採用されやすい傾向にある。変なことをすると落とされるリスクが増す。すなわちヤンキー気質がないと受かりにくい傾向にあるのである。

これが日本の伝統的な企業が技術的ブレイクスルーを起こせず、営業力と言う国内のみに通用する手法で押すことしかできない原因である。

だいたいの上場企業とかはカバンを風呂敷にすると落とされるし資格欄に狩猟免許(網・わな)と書いていくと落とされる。環境問題の根本から志望企業の事業内容を問う質問をすると落ちる。

合理的なオタクが「3年修業して、独立します」とか言うと古き企業ではやっぱり落とされると思う。就職面接において将来の夢を、自分の生活について語ってしまうレゲエも厳しいだろう。

オタクやレゲエには厳しいのが新卒採用である。

常識に染まっていない若者は、経営者の怠慢を見抜き鋭い質問を投げかけることもあるが、たいがいの経営者や人事は物事の合理性よりも、人間関係の上下を大事にするため、これも落とされる。

それは当然である、上司部下の関係性の円滑さと企業への忠誠心(見かけだけでも良い)は古めの企業における優秀さの指標だからである。日本の企業での重要な能力は、合理的な解決策を提案すること自体ではなく、それをいかに上司の口から言わせるか、という回りくどい政治力が求められるからである。

中国の王朝で家臣が皇帝に進言するのは生きるか死ぬかということなので、オタクは大変である。歴史オタクの司馬遷の苦労を見れば平和じゃないとオタクには厳しい時代が続くことが分かる。

一定の慣習ができあがっている企業において、オタクのようなトリッキーなことをする人は受け入れる素地がない。レゲエもである。(そのため、日本のメーカーは革新が生み出されないし、生活実感から乖離するプロダクトを作りがちであるから衰退する、これ必定)

朝日新聞2012年2月10日付に「出よ関西のジョブズ」などと関西財界セミナーで講演されたという記録がある。

そこでiPhoneなどについて「ハードウェアとしては大したことがないが、生まれた付加価値はハードの50倍、100倍近い。こういう製品を作れるかが日本企業の課題だ」とある企業の会長が述べている。

だが、興味のないことには口数が少なく、興味のあることが未来を向いている人が面接で将来展望を語れば、落選する確率は極めて高いだろう。

また、上述の発言がiPhoneの評価がハードウェアとしては大したことがない、と焦点がズレているところを見ている時点でかなりのヤンキーである。「品質なら俺らは負けない」というヤンキー特有の、同一線上での戦いを意識しているからである。

プロダクトは文化を生み出すためのものであるから、単なる性能勝負では成立しない(性能がどういう可能性を開くのか、そこが重要だ)。

古き企業の人事は人当たりがよく根性があり、プレゼンテーションが若いうちからうまい人が多い。このような人にとってオタクは理解不能だし、人当たりと事務処理能力で出世してきている人には潜在性が分からない。

現在の就職活動を学生の方を通してかいま見ると、オタクもレゲエも一緒くたにヤンキー有利の就職活動に挑んで疲弊しているように思う。人格改造を強いられているわけだからなかなか辛いものがあるかもしれない。

レゲエやオタクは別の作戦を考えないといけない。方向性としては以下のようなかんじだ。

人格改造して、もぐりこんでオタクのまま政治力を身につけるか(ジョブズが人格改造したかは分からないがオタクでありながらどこかで高いプレゼンテーション技能と政治力を身につけた、これは最強であるが早々出てこない)。

あるいはもっと小さい規模でなら、なんとかナビとかを使わずに、採用募集をおおっぴらにはやらないけど1人採用したいぐらいの小さい企業を自力で調査して独自の職業紹介サイトを立ち上げるとか、そういう方向に行った方がいいのではないかと思う。

あとは新しい企業か古すぎておじいちゃんレベルに枯れた渋い老舗のなかにはオタクやレゲエに適した職場があるかもしれない。親はあまり賛成しないだろうが。

なにしろ、製鉄職人集団よりも大和朝廷に仕官できるたほうがいいやん、と言うのは昔話から続く伝統だからなかなか手強い。そういや、高畑勲氏の「かぐや姫の物語」もそういう話だったのではないか。

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