陰謀論観察メモー母が陰謀論者になった

母が陰謀論者になってからのあれこれについて、自分の中で発酵して変質してしまう前にきちんと書き留めておかなければとは思いながら、色々面倒で先延ばししてしまいました。もうちょっと危うい。アカウントを作ってすぐ放置してたことを思い出してここを使うことにしました。

「岡本市兵衛ことイチベイ」「神真都Q」「陰謀論者」「反ワクチン」まわりの知識がないと理解できないと思いますが、そのあたりの解説までしていると大長編になりすぎるのでとりあえず省いて書いていこうと思います。まあ、半ば自分メモなので。
「母が陰謀論者になった」「母とイチベイと私」「イチベイ氏が煽ってたアドブルー不足とは」「過剰反応VS現状認識不足。デマはどちらだ?え、もしかして私、デマ側…?」あたりの内容を適当に足して割って何回かに分けて書こうと思っています。
自分メモなんで!自分メモなんで!(何かの予防線)
今回は母のこと。

母が陰謀論系反ワクになった

2021年1月。世間ではワクチンという選択肢が現実味を帯びてはきていたが、医療系ではなく基礎疾患もない人間にとっては眼の前のこととして考えるには少し距離がある、そんな時期だった。
同居の母から、何かのコピペのようなものがLINEで送られてきた。
冒頭には「あなたの大切な方に情報を」「以下は現役医師たちの真実の言葉です」とあり、その下にはひたすら医師らしき人の名前と反ワクチン・反感染対策のコメントが羅列されていた。「マスクは酸欠になって害」「PCRは嘘」「新型コロナワクチンは遺伝子改変される」という、今(2023年2月)も反ワクチンたちが言い続けている内容とほとんど変わらない内容だ。
母のコメントや主張は何も添えられていなかった。直接顔を合わせたときに何か言われることもなかった。
普段はLINEでは必要最低限の連絡事項のやりとりしかすることがなかったので、少し変に思いながらも、特に大きな驚きもなく私はそれを躊躇なく無視した。
もともと母はオカルト&スピ趣味&エセ自然派の人で、ドライヤーを頭に向けるなだのヤマザキパンは食べるなだのわけのわからないことを言い出すことは時々あって、それを私や他の家族が無視するというのは通常営業だったのだ。まだその時はその範疇のものだと思っていた。
その頃の母はずっとスマホにかじりついてそういった内容の動画を見るようになっていた。(自分のTwitterを振り返ると2021年2月頃には「母がYou Tubeで真実を知って陰謀論者になった」と書いてある)
それからしばらくは、毎日毎日コロナだワクチンだという動画を見ては熱心にメモを取って「世界のしくみ」みたいなノートを作ったり、一人でぶつぶつ言ったりしてはいたが、私に対してのはたらきかけはほとんどなかった。

それがいよいよ一般にもワクチン接種が具体化してきた6月に入ると、LINEも数日おきペースで送られて来るようになった。相変わらず自分の主張やコメントは無し、ひたすら動画やブログをポイポイ投げつけてくるスタイル。
わざわざ私に聞こえるように動画を再生したり、仕事から帰って一人食事中の目の前に動画再生中のスマホを置かれたこともあった。
それでも母は、反ワクチンの方向性は明らかなのに「情報を提供するから自分で考えて欲しい」ということしか言わず、自分の言葉で伝えてくることはしようとしなかった。
くだらないと思って最初はそれらのほとんどは中身の確認もせず、反応もしなかった。目の前で見せられても、「隠語ばっかりで意味がわからなかった」というコメントでやり過ごそうとした。何か言おうとすると否定することしか出て来ないし、スルーで終わらせたかった。
科学的な説明が何の意味も持たないことはもうコロナ禍前からわかっていたことだった。
今までとは違う、一線を超えているとは思ったが、だからと言って何ができるとも思えなかった。

その調子で家族が母に反論する横でしれっと食事をしていたら母に「あなたはいつも知らんふりだもんね」という感じのことを言われて、よろしいならば戦争だ、となりかけはしたが、お互いに戦闘民族ではないので結局のところ激しい罵りあいみたいなことにまではなっていない。
というよりも、話がすぐに終わってしまうのだ。何をどう言っても「それは隠蔽されている」という最強のカードで処理されるとこちらは何も言えないし、わざわざ向こうから質問を求めてきたときでさえ、こちらの疑問には答えてもらえることはなかった。しかも、送って来ている動画にはおかしな部分もあると言いながらその詳細については教えてくれない。
「何か説得したいならまともな根拠をよこせ」と言っても、それまでと寸分違わぬレベルのデマ動画が送られてくる。
あちらから投げつけられるばかりで対話にはならないのだ。
私の否定ありきの姿勢が透けて見えていて何かと言いづらかった部分はあるのだろうけれど、あちらからの働きかけに反応を示したというせっかくの説得の機会なのになぜ逃すのか。

わけの分からない人のわけのわからない動画を解説もなしに見せられて、普段から理屈っぽい私が信じるとでも思ったのだろうか。本当にワクチンが危険だという事実があり、それを伝えようとしているのなら、なぜ私が信じそうな説明を持ってこないのだろうか。なぜちゃんと母の考えを教えてくれないのだろうか。なぜ質問に答えてくれないのだろうか。なぜ、わからないならわからないと言わないのだろうか。
「科学ではわからないこともある」と諭すように言われたけど、たとえ機序はわからなくても、現象があるのだと主張するからには何らかの根拠があるだろうにそれを見せてくれればいいだけなのに。
そんなに文章より動画がいいのかとこちらから動画を送っても何の反論もない。

これは、母は私をバカにしてからかっているのか、信じないならワクチンを打って死ねばいいと思っているのか、もしくは母が狂ったか。このどれかだと思った。

「情報提供しているだけ、それを見て考えてくれればそれでいい。接種を止めはしない」とは言いながら、私の接種を知った時にはショックを受けていたようだ。
接種券を捨てたり、表向きは強硬に反対することはなかったので、その点はまだ理性のようなものが勝っていたのかもしれないし、自分への逃げ道を残しておいたというふうにも考えられる。
まあ、自分ひとりで動ける成人の接種券を捨てたところで、止めることなどできないし怒らせるだけだ。ましてや、普段から「健康についての助言」を無視されまくっている相手だ。
おそらく母は、それでもこれだけは伝えなければならないという強い切迫感でアプローチしてきていたのだろう。それなら、なおさらあんなによくわからないものばかり見せてくる謎は深まるばかりなのだが。
おかげで早期に「自分で調べて」迷いなくワクチン接種へ向かうことができて、母の意図とは逆効果だったのだけど。

母は特に頭が悪い人ではなかったし、私も子供の頃のワクチンは人並みに受けさせてもらってきたし、何かあれば病院もちゃんと連れて行ってもらってきた。
オカルト&スピも「胡散臭い趣味」程度のものだった。
世の中には反ワクチンというのがいるとは知っていたけれど、あまりそれについて考えたこともなく、それとこれが頭のなかで結びつかなかった。加齢によって認知力が衰えて来た部分はあるのかもしれないが、ワクチンやコロナについて以外には大きな変化は見られない。
本当にそれに関連する話題の時だけ様子がおかしいのだ。


ネットリテラシーってなぁに?

あるとき母に「もう少しネットリテラシーを持って欲しい」と言った事がある。

同居の家族の証言で私が直接目にしていないものも含まれるが、その時の母は、
・反ワクチンの動画配信に遅延が起こったら、何者か(国とか)に邪魔されていると騒ぐ
・著作権侵害や掲載期間終了で削除された動画や記事は「都合の悪い真実だから消された」
・神戸のお医者さんとか「みんな」治験が終わってないって言ってる
・今までの私は何も知らなかった。あなたも調べればわかる。
とかなんとか、今となっては陰謀論者のテンプレですね、みたいなことばっかり言っていた。
配信の遅延は、時代の寵児たる星野源でもなりますけど。著作権侵害は消されるものですけど。みんなは言ってないし。
「そんなことない、邪魔されてる。隠されてる」と聞く耳を持たない。

あまりにも目に余るので「せめてネットリテラシーを」という発言になったわけだが、母はそんな言葉聞いたこともないという様子だった。
「こいつらわざと私にわからないことを言って煙に巻いて自分をバカにしようとしている」とでも言いたげだったが、まさか言葉さえ知らないとは思っていなかったので、こちらの方が面食らってしまった。

私「インターネットリテラシー。略してネットリテラシーとも言う」
母「そんな英語言われてもわかるはずない」
私「あんたの好きな(You Tubeの)You もTubeも英語やろが!!!!!!わからんもん見るな!!」
という明後日の方向のブチ切れをかましてしまったのだった。
これはその日か前日ぐらいに「母が(自分は無難にマスクしてるくせに)孫にマスクは奴隷の証と教え込もうとした事件」があって私がイライラしていたのも大きいのだけれど。

我が家は、父の仕事と趣味の関係で世間の一般家庭としてはパソコンやインターネット環境の導入が比較的早く、ある程度触らせてもらえていたし、知識もそれなりにある人が家庭内にいた。それなのにまさかインターネットリテラシーの概念ごと知らないとは油断していた。
電話回線で、モデムをピーヒョロガガガと鳴らし、ネットスケープでカテゴリ式のYahooを使ったことのあるネット初心者がこの令和にいたのだ。

信頼性が低いものをわざわざ選んで送ってきているかのようなのが不思議だったけれど、個人ブログやSNSやYouTubeは信頼性が低いという発想自体がなかったのかもしれない。
「インターネットリテラシーってなにそれ」って言っている人から「インターネットで見つけた隠された真実」として送られてきたYou Tubeをそのまま信じる30代がどこにいるのかと。
そういうことにも思い至らないことがリテラシーがないってことなんだろうけど。

「陰謀論者の話を否定しない」は家族には難しい

こればっかりは経験してないと実感としてわからないかもしれないが、よく陰謀論者の対処法として言われる「話を否定しない」は家族には本当に難しい。
一番対応に困っていた時期はその話を知らなかったけれど、知っていたところで対応を変えることは出来なかったと思う。

単に言っていることを聞き流して済むだけのことならまだいいのがだが、今回のワクチンの場合は「否定しない」を家族が実際にやろうとすると、つまるところ「隠れて接種してそれを隠し続ける」か「自分(と家族)の生命リスクを許容する」の2択になってしまう。そして「おかしくなってしまった相手」の現状維持も肯定することになる。
認知症など病気だとわかっていれば、しんどいながらも気持ちの割り切りようもあるのかもしれないが、陰謀とワクチンの話以外は今までと変わらない様子の人を相手になかなかそれも難しい。「おかしくなった、変わってしまった」といいながらも陰謀に関わる部分以外は存外普通で、何かスイッチが入る話題だと途端に様子がおかしくなる。
「話を否定しない」って具体的にどうすればいいのだろう?
「不安だ」「怖い」と言ってくれればそれを否定する気もないし、どうにか話を聞く試みもできようが、陰謀論者やスピの人は往々にして自分の不安を認めようとしない。自分の内側の問題の答えを宇宙に求めたりする。
私もワクチン接種せず、シェディングだ宇宙人だディープステートだっていう動画を見せられても疑問を挟まず、親戚にまで言って周るのも止めず、ワクチン接種CMに出てきた尾身さんを口汚く嘘つき呼ばわりするのをそう思うのねと聞き、孫にマスクは奴隷のしるしなどとと吹き込んでも咎めず…って無理じゃないか?
そういうのは利害関係のない人が、お金をもらってやらないと無理だ。
動画を送りつけてくる状態の陰謀論者は、こちらの考えを自分の思うように変えたくてしつこくそうしているわけだから「私はあなたの思う通りにはならない」はすなわち否定や拒否でなかったら何なのか。
私が私を守るには相手を否定するしかない。
家族という立場で、真面目に丁寧に真摯に向き合おうと思えば思うほど泥沼にハマっていく。
特に心優しくも真面目でも丁寧でもない私は、この件については理解しあうよりもまるっと無視することを選んだし、母は母で私が接種したと聞いたら急に興味がなくなったのか私へのLINE攻撃はなくなり、3回目4回目を止めてくることも解毒を勧められることもなかった。

結局母の主張を把握しきれないままだったので、教えてくれと言っても、「伝えることは伝えた」というばかり。新型コロナのワクチンは反対なんだなということ以外何も伝わってないんだけど…。
それすらも私が状況から読み取ったことであって。
今やすっかりワクチンやコロナの話はしなくなったけれど、思想が変わったとも思えない。今どういう考えなのか確認したい気持ちはあるけど、あの変なスイッチが入った状態にまたなったらと思うと恐ろしくて聞けていない。



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