傍聴記-反ワクチン団体代表理事

前置き

一般社団法人神真都Q会の代表理事である甲兄氏(仮名)の刑事裁判を見て来たので共有します。
判決についてのニュースはこれ(そのうちリンク切れするとは思いますが)

https://news.yahoo.co.jp/articles/ac6b56def064da937db7b8fd83ab4a02cf124e0f?source=sns&dv=pc&mid=other&date=20240316&ctg=loc&bt=tw_up

※傍聴や裁判について素人なので誤りがあるかもしれません。お気づきの点は優しめにそっとソフトに教えてください。
※見聞きした事実、ある程度の根拠に基づいた推測、自分の憶測や感想、は峻別して書いているつもりではありますが、全て書き手フィルターを通しています。色々感覚が麻痺してるので重要な前提を省略してしまっていたらすみません。
※陰謀論とは何か、何故トランプが出てくるのか、神真都Qとは何か、についてわからないけど知りたい方は、雨宮純さんや黒猫ドラネコさん、朝日新聞の藤原記者、ジャーナリストの藤倉善郎さんの記事あたりを参照願います。

裁判の内容

容疑

ざっくり言うと「令和4年4月から8月にかけて、神真都Q会の寄付金から収入を得ていたうえ堺市に転居していたにも関わらずそれを隠し、大阪市から生活保護費約51万円を受け取っていた詐欺」です。
裁判の初期に少し訴因変更があったようですが詳細はよくわかりません。
寄付金の振込先として使われていた被告人個人名義の口座には7000万円を超えるお金が入っており、私的な買い物に使っていたという話もありますが、本件では主に堺の物件にかかった費用(契約費用・家賃・家具家電等)を”収入”とされたようです。
大きな争点は①被告人は「転居」したのか ②堺の物件の費用は被告人の「収入」にあたるのか   

日程

裁判傍聴初心者なので期間の相場というものがわかりませんが、なかなか時間のかかった裁判でした。初回のみ抽選でしたが運良く当たり、その後も何故か日程があまりにも私のスケジュールに優しかったので、把握している分は全て傍聴できています。ええ、暇です。そして真実を知りたかったので。みんな好きでしょ?真実。

私が把握している範囲で、
逮捕:2022年11月中旬
初公判:2023年3月中旬 人定、検察側陳述
2回目:2023年10月下旬 被告人陳述 
3回目:2023年11月下旬 検察側証人尋問(2名)
4回目:2023年12月中旬 弁護側証人尋問(1名)、被告人質問
5回目:2023年12月下旬 被告人質問
6回目:2024年2月上旬 論告求刑・最終弁論・最終陳述・結審
7回目:2024年3月15日 判決
※書いてある用語には自信ありません

逮捕ー初回ー2回目とかなり期間が空いていますが、どうやら合間に非公開のものは何度もあったようです。否認していたり、その間に弁護士交代があったことも関係があるのかもしれません。

検察側の主張

  • 被告人は大阪市此花区で生活保護を受給していたが、市に無断で引っ越し、それを隠したまま生活保護を受け取っていた。

  • 堺市の物件のうち、事務所に使っていた1階の部屋以外は被告人やその家族の私的空間であり、そこにかかる費用(家具家電等)は被告人の「収入」である。

  • 身勝手な犯行で、複数回の前科もあり、1年8ヶ月での再犯。規範意識に欠ける。再犯の可能性が高く長い時間をかけて矯正が必要。懲役2年6月を求刑する。

被告人・弁護側の主張

  • 寄付金が被告人の銀行口座に入ったこと、生活保護を受け取ったことは事実だが、詐欺には当たらない。無実である。

  • 収入があるかもしれない、引っ越すかもしれないという話は事前にケースワーカーにしていた。

  • 被告人名義の銀行口座に寄付金の入金があった、そこから支払いのために振込をした、此花の物件の解約の連絡をした、家具家電を購入した、荷物を移動させた、車を運転した話はケースワーカーにしていない。

  • 静岡に行くことはケースワーカーに伝えた。

  • 此花から堺に荷物を運び入れたが、引っ越しはしていない。出かけていることが多かったので、此花の家は寝ることができればいいと思っていた。4月以降は正直ほぼ帰れていなかった。

  • 堺の物件は会の事務所やワクチン被害者やDV被害者の避難所として使っており、それにかかる費用は会のものであって、被告人の個人のためのものではない。

  • 銀行口座開設や賃貸契約は会の名義では無理だった。当時の会員が経営する会社名で試したらあっという間にOKだった。

  • 堺の物件は事務所使用・家族以外の居住不可だったことは知らなかった。

  • 何がダメでこうなっているのかわからない。会計士に収入にならないと言われたものが収入ということになっている

  • 反ワクチン団体でなければ刑事事件にすらなっていない、国策捜査だ。

検察側証人

被告人に非常に近しいところにおり、初期の会の運営にも関係していた元会員2名が証言しました。

  • 3階建ての堺の物件の1階は公表しない事務所だったが、2階3階はほぼ被告人とその内縁の妻、子供たちの居住スペースという認識だった。証人含め、会員が避難してきたりトイレ等で出入りすることはあった。

  • 会名義での銀行口座が作れなかったので、代表である被告人の口座に寄付金を集めることになった。寄付金を集めた目的はトランプさんの銅像を作るため。

  • 会に入ったキッカケはYouTuber(被告人ではない、別件で逮捕、会からは離脱済)の呼びかけに応じて。

  • 別の場所に事務所を作ってからは、堺の物件の1階の部屋の中身はほぼ新事務所に移動した。

  • 荷物を運び出した後の此花の家は空っぽで住める状態ではなかったが、「誰かが住んでいるように(見えるように)してほしい」と被告人に言われた

  • 被告人が「市長とアポを取ってくれれば俺がワクチンを終わらせる」と言ったのに、いざ実行しようとしたら逃げに終始した。

  • 多くの使途不明金があった。被告人は月100万円以上の領収書を(経費として処理するようにと)持ってきた。内容は食材、服、小物等。

証人二人とも受け答えはしっかりしていて、反ワクチン等の思想は変わらないものの常識的な態度でした。その中で「トランプさんからお金が入る」「(被告人が)超能力がある、7回死んで生き返った」等の話を当時は信じていたと言っていてたのが印象的でした。

弁護側証言


会員から内縁の妻になったという人物が証言しました

  • 会に入ったのはキッカケはYouTuberの呼びかけに応えて

  • 堺の物件にいる当時は内縁関係ではなく、自身はいち会員の避難者であり、被告人と同じ部屋に寝泊まりしたことはない。他の人も何人もいて、その日その日で空いている部屋に寝ていた。

  • 2階には人がしょっちゅう出入りしていた

  • 被告人はしょっちゅう(外に)出ていた。静岡、此花の家、等。堺にいたのは月の半分程度。

  • 被告人からは堺の物件は事務所兼避難所と聞いていた。

  • 会の仕事で「礼金」をもらってる人が複数人いた。被告人の礼金はないという認識だった。

  • 家宅捜索を受けたことにより家主に出て行けと言われ、被告人の提案で、もともと会の中心にしようと考えていた静岡に移った。被告人と関係をけじめつけたのはその頃。堺の物件にあった荷物は静岡の被告人/証人の家と、本部に分けて運んだ。

  • 家の契約はどういったお金で支払ったのかは知らない。

  • 此花から堺に荷物を運んだあと、洗濯機か冷蔵庫かが残っていた。被告人の衣類は把握していないが、空ではなかったイメージ。

受け答えはしっかりしていました。曖昧なところは時々ありましたが、まあ結構前の話だし仕方ないよね、という程度で少なくともあからさまに何かを隠しているというような感じではありませんでした。「被告人が日常的に車を運転していたかどうか」等、検察側の証人の話と食い違う点もいくつかありました。

判決

懲役1年6月に処す。未決算入310日。執行猶予なし。

  • 家具家電等の購入費用約296万円(※求刑の時点では403万円でした。家電分の一部が減ったっぽい?)の収入があったにもかかわらず、生活保護約51万円の給付を受けた

  • 堺の物件の契約時申込時に、事務所には使えず家族しか住めないことを了解していたはず

  • カレンダーの4月11日に「引っ越し」との記入

  • 此花の家のライフラインの使用量が、引っ越しとされる日付近から極端に減っている

  • 検察側の証人は被告人と敵対関係にあり、証言の信用性は慎重にする検討する必要があるが、事実と整合していてどちらも信用できる

  • 被告人と此花で同居しているはずの家族が遺失物届を出した際に堺の住所を記入している

  • 弁護側の証人は被告人に不利な証言を避けている。具体性を欠く。

  • 被告人は此花の家に2台ずつあった冷蔵庫と洗濯機の1台ずつを運び出したと証言したが、以前から生活保護であり、また部屋の見取り図からしても2台ずつあったという話は信用しがたい

  • 此花の家の家主に4月10日に解約の連絡、5月に撤回している

  • 弁護人が指摘した捜査の違法性は見当たらない

  • 累犯であり、前回の刑の完了から1年8ヶ月での再犯。常習性が高い。

  • 不合理な弁解に終始している。

裁判内での被告人の気になる発言


今までの記述の中には省いてありますが、公判中の被告人の発言には反ワクチン、陰謀論めいたものがたくさんありました。容疑そのものはその主張とは全く関係ない金銭目的のものですが、その経緯や主張については警察官、検察、裁判官もどこまで理解できていたものか疑問が残ります。私もさっぱり全然わかりません。
弁護側からの質問の時には打ち合わせをしていたのかそれなりに返答出来ていましたが、検察、裁判官からの質問になると話の方向が定まらずに質問が何だったか忘れてしまって聞き直す場面もありました。
反ワクチン的陰謀論的な発言メインに私が気になった点に絞って紹介します。言い回しは異なります。

【被告人質問】
弁護士:会の目的は?
被告人:全ての悪権悪政…腐った…善なる清き…
(わたし:なんか聞いたことあるな…)
弁護士:会員は今何人?
被告人:一年以上閉じ込められているので把握していません
(わたし:念波は?ビューイングは?)

【被告人質問】
裁判官:4月に(別の会員たちがワクチン接種を止めようとして建造物侵入で逮捕された)事件がありましたが、あなたは関係していますか?
被告人:2日前にいっちゃんから電話があった。前日にもあった。みんなで飲んでるらしかった。「誕生日プレゼント用意してる」と言っていた。察知して、徹底的に法律は守れと言った。そうしたら「決めてんねん、喜ばすにはどうしたらいいかわかってる」と。それで泣いてしまった。
裁判官:反対したのですか
被告人:反対した。どうなるかわかってましたから。
(わたし:止めたってホントにホント??)

【被告人質問】
検察:甲という弟がいる甲兄(こうにい)と名乗っていましたか?
被告人:義理の弟
(わたし:義理の弟なのか本当の弟なのか従兄弟なのか結局どれなの…)

【被告人質問】
裁判官:神真都Q会はどのようなものですか
被告人:本来やまと国ニッポン古代の正確な歴史が隠蔽されている。正しい歴史を表に持ってきて真実を世に示していこう。悪習慣…いくら税金を払っても苦しい…明るい未来…古き良き日本の文化を取り戻して…
(わたし:メモしきれぬ…)
裁判官:それは理念を言っているのだと思うのですが、具体的には?
被告人:偽コロナ、天然のコロナは存在しない…

裁判官:寄付金の目的は?
被告人:いっちゃんに寄付金が送られてきているからどうにかしてほしいと言われた
裁判官:なんのため?
被告人:トランプ、前大統領のトランプが子どもたちを救ってくれたので銅像を立てる。ワクチンを防ぐ活動のために。
(わたし:ちょっと!!!!!!今”前大統領”って言いましたけど!!!!現役大統領じゃなかったの???????前!!ぜん!ねえ!!衝撃発言だぞこれは!!!あ、会員のみんな完全スルー…?気になることあったらいつもお気軽に騒ぐのに…え…?なんで!!!!!!??ありがたいお話ちゃんと聞いてる??)

【被告人質問】
弁護人:5月の此花の家の家賃の出どころは?
被告人:生活保護から。一部、会からの借り入れにして払っている場合がある。貸借対照表に書いてある。
(わたし:それってその処理にあなたが怒って何人か会から追い出したやつでは…?アルコンさんがやったこと正しかったってこと?利用しようとするの?アルコンさんに謝ったほうがいいのでは?貸借対照表って言葉はアルコンさんに教えてもらったのかな?)

担当弁護士


初回公判では当時会の顧問であった反ワクチン系弁護士2名が担当していましたが、その後(おそらく本件とは別の理由で)その弁護士とも仲違いし、2回目からは新しく会の顧問となった別の弁護士が担当しています。
反ワクチン系弁護士たちはから従前から反ワクチン活動をしており、思想を同じくする会に近づいたようです。会に関わっている間は、会が毎月行っているデモ活動にもしばしば参加していたようで、弁護士たちが右翼思想を会に持ち込んだりよくわからない人物を会に引き込んだりもしていました。私など外野からすると、彼らは仲間や同士というよりは「突然現れた弁護士が会を上手く利用し、乗っ取ろうとしている」ように見えましたが、本件以前にも会員の逮捕事案が複数あり、思想を理解してもらえる弁護士を見つけるのもなかなか難しいでしょうから、会と弁護士の利害はある程度一致していたのでしょう。
ただ、会の本分とも言えるオカルトスピ陰謀思想は理解しにくいらしく、「トランプを信奉してゐるのではない」「Qアノンの日本支部ではない」等と明らかに会の過去の主張や思想に反している発言も時々見られました。
初公判で弁護士が本旨に関係のない反ワクチンや陰謀論の話を延々と続け、時間超過で裁判長に咎められても続けて自分のステージのようにしていました。別件で東京や静岡で逮捕された会員達の裁判弁護士も務めており、漏れ聞く話によるとそこでも同じような感じだったようです。
これは会員たちが「トリガー」と呼んで望んでいた事でした。「法廷でワクチンの危険性やDSの人口削減計画を暴露し、それにより全世界が目覚める。逮捕や裁判はその全世界が目覚めるための舞台装置、トリガーに成りうる」というような発想です。誰が言い出したことなのかはわかりませんが、そのステージを利用したい反ワク弁護士達には好都合だったに違いありません。
結局、関係悪化のため初回公判後のタイミングで会の顧問と会についての全ての裁判について解任されています。

2回目以降、後任の弁護士が会の顧問ごとこれを引き受けた真意はわかりませんが、どうも思想に賛同や共鳴したわけではなさそうです。検察側証人の名前の読みをずっと間違えていたり、神真都Q会への理解が浅い感じは見受けられましたが、前任と比べるとかなりまともな印象を受けました。
被告人質問を始める際に被告人に対して「意見でなく事実を言うように」と言い含めていたことからも被告人とのコミュニケーションへの苦労が伺えました。
弁護で陰謀論めいたわけのわからないことは言っていましたがおそらくそれは単に被告人の主張に沿っていただけなのかなかと感じました。
 

傍聴人


抽選となった初回公判は傍聴者希望もそこそこいてメディア席もありました。また、元会員が証言する回には他の元会員も多く訪れ、特にトラブルは見受けられなかったものの「現役会員」対「不信感を覚えてやめた元会員」の構図で少しヒヤヒヤしました。それ以外の回ではだいたい現会員らしき人15~30人程度、その他傍聴マニアや仕事で来ているらしき人が5人程度という感じでした。
ただ、遠方から来るなど毎回かなり熱心なように見える傍聴席の会員の彼らが何故か2回目にだけは全く現れませんでした。
彼らが来ている時には傍聴待ちの廊下には目眩がしそうな音量の話し声が響き、法廷内では必ず毎回飲食や私語、携帯電話の着信音、不規則発言で裁判官や職員に注意をされていたので、気づかないなんてことはありえません。もしかしたら1人や2人が来ていた可能性を否定出来るものではありませんが、少なくとも傍聴していた者の中に”会員らしい”振る舞いをしていた人は見受けられませんでした。
誰も来なかった理由はわかりませんが、おおかた同時期に起こっていた会の内部揉めでそれどころではなかったか、期日を把握していなかったかのどちらかでしょう。何の伝手も情報源もない私でさえ把握できた公判日程を、ごく親しい関係者で弁護士とも連絡を取れるような者が知らないなんてことあるのかはちょっとよくわからないですが。
この回は被告人が自らの主張を述べるという、甲兄トリガーを期待していた会員が一番楽しみに見るべきだった回じゃないかと思うのですが、特にトリガーらしきものは発動せず数人の静かな傍聴人とともにそれはもう粛々と終わっていました。

それにしても会員らの傍聴時のマナーの悪さはわざとだったのでしょうか。飲食や携帯の音や不規則発言でほぼ毎回裁判の進行を妨害し、まるで友人の習い事の発表会にでも来たようにキャッキャしている様子は、刑事裁判なんておおごとだと思っている私には到底理解できないものでした。
傍聴席は審理に影響を与えないはずと日本の司法を心の底から信用しているのでしょうが、それにしても一応被告人本人が「自分は徹底的にルールを守る人間だ」と主張しているのだから彼を信奉している仲間もそのように振る舞って見せてあげればいいのに…と思ってしまいました。
どうしても言いたいことがあって単発の不規則発言はなら気持ちはわかるとしても(もちろん良くはないけど)、何度注意されても単にルールを知る気がない、守る気がないように見えました。被告人が戻っていくであろう場所の“仲間”の規範意識の無さをアピールし、身柄が自由になった後の環境の不安をわざわざ裁判官に印象づけたいのか…。
「彼らは本当は味方の振りをした工作員なのか?」と私まで何かに目覚めてしまいそうでした。

まとめ感想


かなり内容を割愛して書きましたが、どこからどこまで書いていいものか迷いました。全部順番に書いてやろうとしたらあまりにも冗長になりそうだっったので、あまり良くないのかもしれないけどざっくり内容をまとめた表記にしてしまっています。

最初は認識が甘かっただけの解釈間違いだったら逮捕長期勾留はちょっとやり過ぎ違うかと思ったりもしましたが、実態として一度堺にほぼ完全に住まいを移したあとに元の住居を住んでいるように見せかけるような行動をしていたり、かなり意図的で悪質という印象でした。刑が妥当なのかはよくわかりません。
このまま実刑で確定となれば一般社団法人の理事の欠格事由にあたるそうですし、色々今後どうなるのか気になるところです。

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