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すべての人間は何かにトリップしている

ようやく落ち着いてきたが、未だにワイドショーは沢尻エリカに夢中だ。


MDMAの効果や過去の不祥事ネタは既に出尽くし、わかったようでわからない入手経路や、付き合いがあるのか否かハッキリしない反社との関係、そして胡散臭い元カレの話。


薄すぎる情報は、もはやニュースと言えるのかかなり謎だが、そんな曖昧なネタですらトピックとして成り立っている。


繰り返されるエリカ様の話にすっかりうんざりな俺は、カーナビから流れるワンセグ放送を切り、オーディオに切り替える。


流すのはワンピースやナルトの古い主題歌。ストレスフルな日々で、懐メロをトリガーに幼少期の記憶を思い出すことは、手軽に行える現実逃避だ。

「RUN!RUN!RUN!」のイントロが車内に流れる中、ふと脳ミソに電撃が走る。


「MDMAをやった沢尻エリカと、懐メロ流してる俺…もしかしてやってること一緒じゃね?」





懐メロも大麻も、求むのは現実からの離陸

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考えれば考えるほど、懐メロとMDMAに差なんて気がしてきた。


いや。犯罪か、犯罪じゃないか、という大きな差はある。
でも、先日までサウジアラビアでは娯楽が制限されており、アニメを観ることは固く禁じられていたし、「ポケモン」をすることは宗教令に反しているそうだ。
逆に、知っての通りオランダや一部の国では大麻は合法だ。


「郷に入っては郷に従え」的なこの手の議論は、今さら俺がやるまでもないけれど、要は自分なりの解釈でいくと、法律ってのは大富豪では2が強いけど、ポーカーでは2が最弱って話と一緒だ。

とりあえず何か決まりがないとゲームは進まず、俺たちは混乱する。なんでも良いからルールは必要なのだ。2が強いか弱いかなんてのは、そりゃゲームによっていちいち変わる。



自分でロケットを作って宇宙空間に飛び立ち、月の裏でシャブを打ったら、一体どの法律で裁かれるのだろうか。東京裁判みたいな後出しジャンケンがあるかもしれないが、基本的には咎めようがない気がする。
でも地上ではそんな訳にはいかない。社会が正常に回らないと困る人はたくさんいて、そうならないようにルールは決められる。





ちなみに、マリファナやドラッグを肯定したいわけではない。

「本当は良いものだよ」「合法化することでこんなメリットが」

みたいな議論は一切する気もなく、タバコや酒すら相当な嫌悪感がある自分にとって、そんな誘惑の遥か手前、己の理性はキリッと保たれている。



ちょっと思うことは、人は違う世界にいつだって飛び立ちたいと思ってる、ということだ。そして、現実とは一体なんだろう、ということだ。





炭水化物だってドラッグ、夢を見ることもドラッグ。

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なんてことを思いながら車を止め、昼メシのラーメンをすする。
ああ、これもきっとドラッグだよな。


人間の脳は、高カロリーである糖質や脂質を摂ることで、ドーパミンという脳内物質が出るようメカニズムされている。
糖質を摂って「気持ちいい」と感じさせておくことで、身体はまた糖質を求め、そのサイクルによって生存率を上げているわけだ。


ドーパミンは別名「脳内麻薬」。

全然美味しくないラーメン二郎を、なぜヒトはリピートするのか。
あんな大量の炭水化物と脂質を一気に摂れば、脳ミソはまさに天国なわけで、時間が経てばまたそれを求めてしまうからだろう。


二郎と同じく、夢を見ることもドーパミンを出すらしい。
確かにお金持ちになったり、宝くじがあたったことを想像することは楽しい。
子どもの頃、ワールドカップでオーバーヘッドを決める自分の様子を毎日妄想していたが、きっとあれは妄想中毒みたいなもので、そんなことを考える度に気持ちよくなっていたんだろう。



なんとなくだけど、脳内物質との付き合い方は、自分を大きく変えるし、これをハックすることはそのまま人生をハックすることに近い。



たとえば、サッカーをプレーすることで生まれるエクスタシーに魅了され、俺はサッカージャンキーになったんだろう。それで人生がどう変わったかは言わずもがな。


記憶もそうで、0−0で一進一退の後半ロスタイム、自分の一発でサヨナラ勝利したなんてシチュエーションは、小学校6年生の時に体験した実話で、未だにそれを思い出すとちょっとシビれる。

きっと記憶を再生する度に脳ミソから何かが出ているのだろう。


俺にはさっぱりわからないけれど、勉強ができるヤツは、勉強することで何かしらの快感を得ているんだと思う。
目標クリア、100点の答案、塾内のランキング、親から褒められること、何かの中毒になっているはずだ。


音楽もそう。
それが痺れるサウンドだからなのか、聞き馴染みのある曲だから心地よくなるのか、爆音だからか、脳波に近いからか、理由は色々あれども、音楽を聞くことで確実に脳は「イクーーッ」って感じを得ていて、一度その快感に浸かれば、そこから逃げることは容易ではない。






人は気持ちよくなるために生きている。

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人間の三大欲求は「食欲」「睡眠欲」「性欲」と一般的に言われているが、性欲の欄が「排泄欲」とか「集団欲」とかって説もあるらしい。

それ以外に「財欲」とか「物欲」とか「名誉欲」とか、色んな欲求があると言われているが、結局すべて同じだ。

寝ても気持ちいい、メシ食っても気持ちいい、ヤッても気持ちいい、ウンコしても気持ちいい、人と触れ合っても気持ちいい、金を持って快感、物を手に入れて快感、権力を得て快感。


マンガを読んでも、パズドラでコンボ炸裂させても、きれいな夜景を見ても、犬と遊んでも、インスタにいいねがついても、何するにも頭は気持ちよくなっちゃってる。


逆に言うとやりたくないことでは、脳は気持ちよくはならない。
寝ないで気持ちよくはならないし、空腹を我慢することで快感にはならない。オナニーせずとも気持ちよくなる方法があるならこっそり教えてほしい。



人間は脳内麻薬の虜だ。脳内麻薬のためにすべての生活があるといっても過言ではない。

その脳内麻薬を出すための方法が、ある人は女を抱くことで、ある人はコーラを飲むことで、ある人は筋トレで、ある人はクスリで、ある人はリストカットで、ある人は宗教にハマることなのだ。それだけの違いなのだ。







ほら!懐メロとMDMAは一緒じゃないか。







北島康介は偉大だ。
彼にとって金メダルを掴むのは、責任や義務やすべきことではなく「チョー気持ちいい」ことだった。気持ちよくなるために泳いでいたのだ。




BADからHIGHなのか、HIGHからHIGHなのか、それとも。

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ただ、「気持ちよくなった前後」は、人によって様々な違いがある。


マリファナをして、ハイになるどころか逆にめちゃくちゃ落ち込むことをバッドトリップというらしい。
「あいつバッド入っちゃってるな」なんてのは、品がそんなに良くない人種であれば普通に使う言葉でもある。


覚醒剤の類は、必ず“そっち”に引き込まれるらしい。
覚醒剤をやりたくなる欲求は、溺れてる時に空気を吸いたくなるようなモノらしいが、その先に待ってるのは幻覚や幻聴などさらなる地獄だ。


脳内麻薬がドバドバ出るのに慣れると、出なくなった時のギャップに苦しんでしまい、再び何かで脳ミソを気持ちよくするために、再びきっかけを求める。



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俺は、幼少期から喜怒哀楽と感情の起伏が激しく、しばしば周りを困らせてきた。
感情がノッてる時は爆発力があり何でもできるし、落ち込む俺を見て「こいつ死ぬんじゃね」と思った友人はひとりふたりではないだろう。


落ち込んでたかと思えば突然やる気に満ちて、あんなにキラキラしてたのに急にローテンションになって。






「俺って、シャブ中でもないのに、シャブ中みたいだな」と思う。




友人にシャブ中がいないのであくまで聞いた話だが、シャブ中と付き合うってのは結構大変らしくて、じゃあ、そりゃ周りの人は俺と付き合うの大変だよな。ってことだ。


当たり前だが、基本的にはなんでも上がれば下がるし、下がれば上がる。

上がりっぱなしはあり得ないし、下りっぱなしもあり得ない。人はその繰り返しで生きている。



なので最近は、せめて仕事だけでも極力そうならないように努めている。

高いテンションでやる仕事は長続きしないし、”バッド入っちゃった”からって、仕事が手につかないのは大きな問題。
感情のハイローとはしっかり切り離して、淡々と何かを進めていくことはとても必要だ。自分自身のシャブ中的人生を振り返って、そういうノリに左右されないコツコツさは必要だなと反省している。



ただ、たまにスゴイやつがいる。

ハイからハイに移動していくやつだ。




自尊心が高く、脳内物質出すのがうまいやつ。

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エリカ様はもしかしたらそうじゃないかと勝手に思っている。


芸能人なんて裏ではどうなってるかわからないから想像でしかないけれど、なんとなく今まで知り合ってきた人たちを思い返しても、とびっきりスター性のあるやつはハイの状態からハイに動くのが得意だ。


常に自尊心が高く、仕事をやってても脳内物質ドバドバ、遊んでてもドバドバ。
落ち着いても確かに自信に満ち満ちていて、そうこう休んでるうちに再び仕事や遊びにエネルギッシュに突き進んでいく。そういう人は良いサイクルで自分がずっと成長しているような感じがする。



一体どうやってるのかわからない。もしかすると複数の脳内物質を使い分けているのかな。


言うなればハイブリット。

ガソリンで走って、電気で走って・・・そうやって切り替えられる車は、ガソリンだけのやつよりもずっと遠くまで進んでいく。


だけど、俺からすれば「自分が一番」みたいな自尊心や自信は、調子が良くない限りはそう思えない。
だから調子良ければ自信満々だし、気分が落ち込んでると本当に自分が嫌いだ。



てなわけで、ラーメンを大量に食って、音楽を爆音で聞いて、過去の日記を見て自分を奮い立たせて、世の同年代の活躍に刺激を受けて、なんとか自分をハイに持ってくる。

そして万策尽きて、地獄のように落ち込む。

こりゃシャブ中や。



話がズレた。
エリカ様はそういう風に見えない。落ち込んだり辛いことがあったから、それをぶっ飛ばしたくてMDMAをやってるんじゃないように思う。

あっちのハイに飽きたから、こっちのハイに移動して、こっちのハイからそっちのハイに…そういう繰り返しで常に自分を高めていたように感じる。
自尊心高いノーマルな自分、仕事をしているハイな自分、遊びながらハイになる自分。


だって、美人だって以上に自信満々のオーラが凄くて、画面越しに見てもちょっと威嚇された子猫のような気分になるわけで、あんな人が裏で地獄のような顔をしてる気がしない。知らんけど。




テンションとの付き合い方

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繰り返すが、自分のメンタルは本当にシャブ中的だったんだと思う。



苦しい泥沼の底みたいな毎日(メンタル)から抜け出すために、デカイ目標を立てて、強い言葉をノートに書いて自分を盛り上げて、海外に飛んだり、無理難題な壁にチャレンジして、一般的な脳内物質の100倍ぐらい出して、ギンギンに興奮してきた人生だった。思い返せば



その反動で、現実がうまくいかなければ酷く凹んで、脳内物質も枯れ果てて、目が死んで、ベッドに寝っ転がって、未来に絶望していた。


絶対になれない自分を思い描いて興奮して、それになれないから酷く落ち込んで、またそんな自分を思い描いて興奮して、落ち込んで、興奮して、落ち込んで、興奮して、落ち込んで、興奮して、落ち込んでた。



いやあ、これは良い加減疲れる。
アゲアゲな日があってもいいと思うけれど、下がってくるのは純粋に結構キツイ。
それに、上がり幅もエクスタシーが高まる要素のひとつだから、わざと落ち込んでいるようなところもあったと思う。


リストカットは、手首が切れた痛みを紛らわせるために、エンドルフィンという脳内麻薬がメチャクチャに出るらしい。
これがまたすべてを忘れるぐらいの快楽らしく、厚切りタン塩みたいに傷が重なった手首は、無数の注射痕と同じ。そして、クッソ落ち込んでからアホ見たくテンション上げてた自分も、また厚切りタン塩の手首と一緒なのだ。きっと。




気がつけば27歳になって半年になる。もう半年後は28歳だ。やば。
いい大人というかオッサンなわけで、もう少し日々の業務は淡々とやりつつ、まあまあハイな状態からまあまあハイな状態に飛んでいくことを意識したい。




放っておいたって、人はなにかにトリップしている。


無理にテンアゲとテンサゲを繰り返さなくても、メシ食うのも、ウンコするのも、結構な快感なわけだ。考え方によっちゃ、なんの変哲もない単純作業でも、そこそこの脳内物質を出すことはできるはず。


無理に何かの行動に出なくても、実は普通に生きてるだけでドーパミンはドバドバ出ている。



それを理解して、もっと気張らず、着実に生きていこうじゃないか。ね。

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