未修者の未修者による未修者のための答案の書き方② 〜Issue(問題提起)〜

まず答案の最初に書くのが、問題提起文です。

この「問題提起」は論文の中で最も重要な部分です。なぜなら、十分な法律の知識がなければ、そもそも問題を見つけることができないからです。ここでいう問題とは、ルールと、問題に特有の事実と、ルールとを組み合わせて記載します。

筆者訳

問題提起は、最初に、書かれるものである。

法的三段論法で答案の書き方を説明しようとすることの限界の一つがここにあります。法的三段論法では、冒頭に「問題提起」を置くことの説明ができません。実際にはそれこそが最も重要な要求であるにも関わらず、です。(得津先生も同様のことを述べています)。

まてまて、そもそも問題提起は法的三段論法の中で生じるものなのだから、なんでそれが最初の段落に出てくるんだ、というご意見の方もいるかと思います。おっしゃる通りです。本当に論理的に文章を記述しようと思ったら、本来であればこの問題提起の段落で、その事実に一度法を適用し、どこが問題になるかを明示的に説明しないといけないはずなのです。

でもね、問題が生まれる過程の記述は、答案に要らなかったのです。なぜなら出題者が聞きたいのはその問題に対する答えだからです。問題の導出には全く配点がないのです。おお!君は10行使って、問題を正しく見つけられたね!えらいぞ!で、解答は?ここまでたった5点!

いいですか。答案の最初は問題提起から書く。論理の気持ち悪さは無視してください。そういうものです。諦めてください。はい、リピートアフターミー。答案の最初は問題提起から。

もちろん、法の適用をせずに答案を書けというわけではありません。答案構成には必要です。問題提起は法の適用の中で生じるものであり、天から降って湧いてくるものではありません。正しい問いを、原則に照らし、正しく見つける。ただ、答案に書かなくていいというだけです。

事実とルールを並べて書くのが大原則

では早速、書き方に入りましょう。当該Webサイトでは、以下の具体例が述べられています。

The issue is whether ... Don committed a battery, ...when he pushed Pam even though he knew she was in no danger of being hit by the bicyclist.

実際に、日本語の答案で見てみましょう。

  • 商品が損傷したのは地震のせいであったが(特有の事実)、AはBに対して、契約不適合に基づく損害賠償を請求できるか(ルール)

  • Aは既に溺れていたBを傍観したにすぎないが(特有の事実)、Bに対する殺人罪が成立するか(ルール)

  • AとBは⚪︎⚪︎の主張をしていないが(特有の事実)、裁判官は⚪︎⚪︎を認定して判決をすることができるか(ルール)

  • Aが、令状を取得せずに、GPSをBの車に装着し、位置を追跡したのは(特有の事実)、違法ではないか(ルール)

このように、特有の事実と、問題にしたいルールを書き並べることにより、問題提起が完成します。

では、①問題文中の事実のうち、何が「特有の事実」なのでしょうか。②そもそも、当該問題文からルールをどうやって特定するのでしょうか。これらは、前述したように、本来問題を発見する過程において明らかにされるものです。

①についてはローでのケースメソッドを繰り返すことで身についてきますが、問題は②です。②については自分で訓練しなければなりません。私がどうやって訓練しているかは、また別の機会に書きたいと思います。

事実は端的に。

言葉遣いに囚われないでください。法的問題を特定するということができれば、どんな言葉遣いでも構いません。

著者訳

例えば、下記の書き方であれば配点は同じであり、どれでも構いません。

  • 商商品が損傷したのは地震のせいであったにも関わらず、AはBに対して損害賠償を請求できるか。

  • 商品が損傷したのは地震のせいであった。AはBに対して損害賠償を請求できるか。

  • 商品が損傷したのは地震のせいであったので、AはBに対して損害賠償を請求できないのではないか。

  • 商品が損傷したのは地震のせいであったから、AがBに対して損害賠償を請求できるかが問題になる。

しかし、下記の書き方には改善点があると言えるでしょう。

  • BはAに対して、損害賠償を請求できるか。

  • 商品が損傷したのは震度7という大きな地震のせいであった。AはBに対して損害賠償を請求できるか。

  • Aが商品を損傷したのは地震のせいであった。(終わり)

  • (いきなり何かの検討に入る)

1番目は悪くはないのですが、事実を添えた方が採点者の印象が良いでしょう。もちろん、問題の形式によっては事実を添えようがないこともありますので、その場合は不要です。

2番目も悪くはないのですが、「震度7という大きな」という文言自体は点にならないので、単に時間がもったいないです。根幹の事実を装飾する記載、言い換えれば、細かな事情は、当てはめで使って初めて点が入ります。

3番目は最悪です。結論と問題提起が対応しないからです。ルールも特定されていません。君はこれからなんの話をするんだ。

4番目は一般的に「論証貼り付け答案」と揶揄されるものです。時間がないと特にこうなりがちなんですが、全く点が伸びません。本当に、ダメ。それなら規範書かないほうがまだマシ(らしい)。時間がなくてもサッと書けるように、自分がしっくりくる文章の「型」をあらかじめ作っておくことをお勧めします。

ルールを特定しましょう

話を単純化するために一旦省略したのですが、先ほどの例ではまだ満点は取れません。なぜなら、「損害賠償請求」だけではルールが特定されないからです。

117条「損害賠償の責任を負う」
198条「損害の賠償を請求することができる」
200条「損害の賠償を請求することができる」
415条「損害の賠償を請求することができる」
709条「損害を賠償する責任を負う」
・・・

民法

しかも、損害賠償請求ができる法律は、民法だけに留まりません。

あなたはどの条文を根拠に話をしているのでしょうか?
仮にあなたが415条を根拠に請求できないと結論づけても、709条を根拠に請求できるのではないでしょうか?

もし、単に「損害賠償」とだけ述べて415条の話をし、結論を終えてしまうと、読み手はこうした疑問を脳内に残したまま読み進めることになります。これを防ぐために、ルールをしっかりと特定しないといけません。

商品が損傷したのは地震のせいであったが、AはBに対して、契約不適合に基づく損害賠償(民法415条)を請求できるか。

「〇〇に基づく」(※6)について試験でド忘れしたとしても、とりあえずこれを書いてください。

商品が損傷したのは地震のせいであったが、AはBに対して損害賠償(民法415条)を請求できるか。

はい、今、理解しました。「三段論法は出来てるんだけどね」と言われ続けた私が試験で点を取れなかったのは、これが原因でした。やれ訴訟物を書けだの、条文から始めよ、だのいろいろ言われましたが、つまりはこの特定が出来ていないということだったのです。ああ、期末前に戻りたいね。もし貴方が論文で伸び悩んでいるのならば、まずこの問題提起の訓練から始めると良いと思います。

(※5)「ルール」は条文に書いてないものもあります。物権的請求権がその代表的な例ですが、そのような場合でも、そのようなことを言える根拠、すなわち原告の持つ権利を特定せずに話を進めていいわけではありません。このような場合、「所有権(民法206条)に基づく返還請求権として建物の収去および土地の明渡しを請求できるか。」と書くことになります。

(※6)この「〇〇に基づく△△」は条文のタイトルを書き写せば大体大丈夫なのですが、タイトルがない条文もありますし、※5の場合にも困りますよね。ここで参考になるのが、要件事実論のテキストに登場する「訴訟物」です。ここで要件事実論を勉強してくださいというのは簡単ですが、初学者はパニックになるだけ。それに、100%訴訟物だけでいいかっていうと、そうでもないんですよ(例:債権者代位権)。新問題研究にある6つのバージョンを記載したので、丸暗記してしまいましょう!

・売買契約(民法555条)に基づき代金〇〇万円の支払いを請求できるか。
・売買契約(民法555条)に基づき商品〇〇の引渡しを請求できるか。
・消費貸借契約(民法587条)に基づき貸金〇〇万円の返還を請求できるか。
・所有権(民法206条)に基づき不動産の明渡しを請求できるか。
・所有権(民法206条)に基づき不動産登記手続を請求できるか。
・賃貸借契約(民法601条)が終了したとして不動産の明渡しを請求できるか。

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