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3周回ってプロダクトプッシュが必要だ

リテール証券営業現場では必ず言われる「プロダクトプッシュはダメだ、コンサルティング営業だ!」という言葉。営業側のマインドセットとしては確かに必要だと思うんですが、これってきわめて営業目線の話だと思うんです。お客さんのことを考えていない。

コンサルティング営業- Consultative approachは、より包括的にサービスを提供し、囲い込み、価格交渉から距離を置くことによって収益率を上げたいという目的のもとに行われます。でも、これってどうやるのかというメソッドが特にないんですよね。コンサルティングっぽくやりましょう、はい頑張ってください、以上!。ということになります。結局これは、「お前自身を売ってこい」みたいなニュアンスです。

コンサルティング営業を語るときに必ず対局として登場するのは「プロダクトプッシュ」です。この商品はウチでしか取り扱いがないんですよ、めっちゃいいです。これにもあれにも使えますよ。っていう奴ですね。いいプロダクトは売れてしかるべきですが、「プロダクトプッシュ」という時には常にネガティブな意味を含んでいます。なぜなら、純粋に商品性だけで売れたのなら他の商品のセールスにつながらないとか、唯一無二の良い商品というのは恒常的に存在しないから、優位性のある商品に頼っていてはだめだというのが理由です。故に、商品を売るんじゃなくて、ニーズを探るんだ!という結論になります。

証券や銀行は規制業種でもあるし、取り扱う商品も手数料も基本的にそんなに差がない。そして今は特に圧倒的に競合が多い。非常に込み合っているわけです。個人証券営業だったら基本的にみんな証券外務員という資格を持っていないといけないんですが、これが2020年末時点で88000人います。金融資産1億円の富裕世帯が132万世帯あるということなので、単純平均をすると15世帯。証券外務員のうち顧客を持つ営業マンがすべてではないので、仮に20%だとして、75世帯。本当に有料な富裕世帯が75世帯も顧客にいればかない心強いですが、資産一億円をギリギリこすった程度では証券マンの手数料収入を満足させるほどにはなりません。

132万世帯となっていますけど、このうち5億円を超えてくるのは87000世帯程度です、1億円程度持っててもそこまで富裕層って感じではないんですよね。さらに、この富裕層のうち、絶対に証券運用などしないという層も一定するいます。感覚的には富裕層ほど運用への許容度は高いのですけれどもそれでも2-3割くらいは絶対やらない。それと、富裕層ほど一般的には金融リテラシーがあるので自分で運用したい。今はネットで手数料を薄く自分で自由度の高い運用ができるのが実態です。なので、残りの半分くらいは営業マンを必要としない。リスク資産運用に回すのは3-4割くらい。とすると、富裕層向け営業のターゲットとなりえる世帯が2-3万世帯じゃないでしょうか。それに対して証券外務員が9万人。営業担当が2万人程度。客と営業が1対1、どうなんでしょう。その1人が100億持ってればかなりおいしいけど5億なら食っていけない。マクロ的にそもそも結構厳しいのではないかなと思うわけです。

それと、コンサルティング営業という幻想ですけども、上記のようにリテラシーの高い人ほど他人の助言は必要としないのです。コンサルしますよー、へえ、どやって?損しても手数料はとるんでしょ?それコンサルっていうの?となるわけです。コンサルティングというのは、自分と客との間に圧倒的な情報格差がある場合のみ存在しうるのだと思います。金融資産運用って、これでもかというくらいに公式非公式の情報、ブログ、デマ、広告、比較サイト、にあふれていますよね。情報がかなり透明なのです。これだけ透明度の高い水の中には、変な生き物は住めないのです。。。

なので、一つ提言があるとすれば、プロダクトを頑張って作る。プッシュできるプロダクトを作るくらいしか新たな客を獲得してくる方法はないのではないですかね。私が証券の現場を離れてから、かなり運用商品も多様化している印象があります。つまり、金融業界も当然このような状況を認識しているのです。特にETFやETNの種類の豊富さはすごい。東京上場のETF/ETNだけで十分運用ができると思います。コストをなるべく低く、営業要員を通さないで取引することが負ける確率を減らす唯一の方法だと思います。


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