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【大麻・麻薬取締法違反】宗教を離れ、頼ったのは薬物の効果だった

被告人が宗教2世という裁判を初めて傍聴しました。結審までのメモです。
マジックマッシュルームは2002年から禁止薬物として規制されています。


事件概要

罪 名 大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反
被告人 男性 33歳

被告人は、大麻所持、マジックマッシュルーム(乾燥キノコ)とマイクロカプセル(作用は乾燥キノコと同種)の所持と使用で逮捕された。
当時は温泉旅館に勤務しており、住んでいた寮に家宅捜索が入った。

被告人質問

弁護側主質問

小さい時から、入信している両親に宗教施設に連れて行かれていた。一番古い記憶は多分3歳の頃。
宗教の教義は、暴力禁止、淫行姦淫自慰禁止、薬物・酒禁止、盗みなど犯罪行為禁止、輸血禁止、他にも信者以外と仲を深めない、暴力的な表現(映画・歌)は禁止など。

子どもの頃は、決まりを守らないと懲らしめに臀部を手やムチで叩かれた。叩く道具はゴムホース、ベルト、電気コードだった。
疑問を持つこともなく18歳で入信したが、高校以上の教育は否定され、教団の集まりに参加するため仕事はバイトしか出来ないことが動機となり、25歳で排斥(離脱)。

しかし長年のマインドコントロールのため社会になじめず、人間関係を深めるのが苦手。例えば、人とお酒を飲むような時も規律に反したように感じて楽しめないなど、人付き合いに支障をきたす。そんな状況もあり、自分に自信が持てなかった。

大麻には「抑うつ効果があり、明るくなる」と知り、その効能に惹かれて使用するようになった。大麻はファッション感覚という感じもあった。
大麻はアメリカでは医療用にも使われているし、自然界にあるものなので、比較的安全だと思っていた。

最初は大麻、その後キノコ・カプセルをSNSで購入した。使うと自信が満ちてきて、細かいことが気にならなくなる。
量を多く使うと幻覚を見る作用が起きる。実際に数回あった。

室内にあったメモに、グラム数やカプセルの個数、それぞれの金額を書いてあったことについては、カプセルとキノコの1回量と、かかる金額を比べて使い方を考えていた。3日使って1日休むようにしていた。

今後は、民間の相談機関や精神科で見てもらいたい。
親戚に頼っていいと言われている。(※情状証人として祖父が出廷済)

検察側反対質問

アプリで見つけた売人に注文し郵送で入手、銀行振込で支払った。相手がどこの人か正確には分からない。
普段はカプセル、無くなったときや強い効果感じたいときにキノコと使い分けていた。カプセルの中身はキノコやハーブの粉末。大麻は昔から興味があった。
精神科には行ったことがあるが、「宗教が原因の辛さを聞いて欲しい」という風に相談したら断られた。宗教のことは人に相談しにくいということもあって、薬に頼ってしまった。

裁判官の質問

(裁判官 大麻がゲートウェイドラッグと言われていることについて)
大麻は世の中の目立った人たちが使っているとか、ちょっとしたファッションアイテムのように思った。今はやはり危険なものだと思う。
留置所内で心理学の本を読んで強い関心を持った(薬にかわるものになり得る)。今後、薬物は使わない・所持もしない。

論告

・薬物に親和性、依存性あり
・規範意識が鈍麻している
・捜査段階で供述を拒否し、身上に関してさえも話さなかった
・再犯防止のため実刑が相当
・求刑 懲役2年 麻薬等5点没収

弁論

・被告人は宗教2世、両親が35~40年前に入信、被告人は18歳頃入信。
・排斥された現在も頭に教義が現われ、深い人間関係が築けない。自分に自信が持てない。
・大麻やキノコがうつ病に効果があると知り使用。被告人の計算違いもあり、結果的に1回量はごく少量。また依存にならないように、飲まない日を設けていた。
・宗教からの精神的脱却が目的で、薬では効果が一時的であり、やり方が間違っていることに気づいた。
・新聞報道は密輸で逮捕とされ、事実と異なる。
・供述拒否は憲法で認められた黙秘権。

最終陳述

「違法薬物に手を出してしまった自分の甘さを反省して、今後は手を出すことはありません。違法薬物に頼らなくても生きていけるんだと言うことを、家族に見せていきたいと思います」

被告人は当初、フィリピンから密輸の疑いとして逮捕されていたのですが、それに関しては起訴されませんでした。最初の報道をした新聞社の記者さんも傍聴には入っていましたが、途中経過は記事になっていないようです。判決は報道するのでしょうか。
公判では宗教名は出ませんでしたが、輸血禁止といえば・・・。
被告人は、年齢に比べると幼い印象でした。「きれいな敬語」で話し、私が今まで会った同宗教のかたと共通する雰囲気があります。布教を重視している分、礼儀作法にも厳しいのでしょうか。効能とのバランスを考えてメモしたと聞き、生真面目なところがある人なんだろうと想像しました。
被告人は大麻を使う前に精神科を訪れたようですが、「宗教」という言葉ではねのけられたようです。「宗教」でなく「症状」で相談したら、診察してもらえたんでしょうかね。

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