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現代アーティスト紹介:豊田涼介

オンラインギャラリーを眺めていたら、ふいに「自分が魅力を感じたアーティストの方々をもっと色々な人に紹介したい!」と思いついたので、記事にしてみようと思いました。
今回は豊田涼介さんという現代アーティストについて紹介したいと思います。

合板の上に映し出された世界

ヘッダーに表示している画像は、豊田さんの「Move」という作品です。この作品は、合板に定点カメラの映像をプロジェクターで写した後、その光を元に合板を掘り、補修用パテで埋め合わせることにより制作されています。
この独特な制作方法は、初めから確立していた訳ではありません。美術大学に入学した当初、油画を専攻した彼は具象的な油絵を描き続けていました。その途中、彼の関心は油絵具の素材感や絵画の素材といったものへ向けられ、そこから木材を使う、という今の作風へ至ったそうです。

Self-portrait 2021.11

相反するふたつの視点

豊田さんの作品には、しばし相反するふたつの視点が現れます。そもそも、合板という素材自体が、木という「物本来」の材質を使いつつ、合板という人間の手により「加工された」素材でもあります。作品の「創造」には、合板を削り、傷付けるという「破壊」という行為が不可欠です。作品を作るのは豊田さんという「人間」ですが、その制作過程は塗る、掘る、擦るという、効率の悪い印刷機のような「もの」としての作者の存在を思わされます。そして、木目という「自然」的な模様の中に映し出されるものは、定点カメラからの映像のような「人工」的な世界です。

Plain composition -Parking- 2021.8

こうした相反するふたつの視点は、実は偶然作られたわけではなく、豊田さんの意図しているところでもあるようです。

もの(身体)とイメージ(精神)の関係性から、アナログとデジタル、意識と無意識、自然と人工、実像と虚像、創造と破壊、主観と客観など二元性のあるものをその両方の視点で捉え、それらが溶け合うような作品を目指しています。
豊田涼介 アーティストインタビュー 身体と精神に宿る二つの視点

皆さんは、相反する二つのイメージが共存する作品に対し、どのような感情を抱くでしょうか。異なる概念の調和をそこに見出す人もいれば、矛盾した価値が存在することに対して不思議な違和感を感じる人もいるかもしれません。そこは個人の受け取り方、考え方にもよるでしょう。

自分が注目したのは、異なるふたつの視点の対比により、それぞれの視点が持つイメージが、お互いの視点の隠された本質を明らかにする、という関係性です。ヘッダーにも載せた「Move」という作品で映し出されている定点カメラからの映像の世界は、映像単体で見れば人工的で都会的な、冷たい印象を与えるかもしれません。ところが、この世界が木目調の素材の上に映し出された瞬間、木目の持つ温かさという正反対のイメージが混ざることで、今まで映像単体だけからでは見えてこなかった本質が私たちに伝わってくる、そうした対比は、まるで双方の欠けていた物事の本質を補い合うかのように働いているように、個人として感じました。

Move 2021

豊田さんによる合板を用いた作品の制作は、確立した作風という訳ではなく、より多くの素材を用いた絵画の制作にも関心を向けているようです。素材への着目、対立する視点の融合、そのような方法を用いた豊田さんなりの物事の本質、核へのアプローチの仕方には、今後も注目が持てそうです。

よりアーティストの詳細が知りたい人へ

tagboat 豊田涼介 作品ページ
今回紹介した、豊田涼介さんの作品が購入できるオンラインギャラリーです。
低価格の作品では3万円台から購入することが可能です。

豊田涼介 アーティストインタビュー 身体と精神に宿る二つの視点
特集 豊田涼介 「創造と破壊」対立する二つのテーマ
今回、記事を書くにあたって参考にさせて頂いたインタビュー記事です。

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Instagram - Ryosuke Toyoda
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