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「たま」が好き

10代の頃、「たま」というバンドに出会った。
とっても不思議な世界観。
衝撃を受けたのを覚えている。
当時の流行りの音楽だったり、アイドルだったり、
それについていかなければ取り残されるような
雰囲気に飽き飽きしていた私にとって、
このバンドの「突き抜けっぷり」はすごいな、
と思うようになっていた。
アルバムを購入し、楽譜を購入し、少しでも
ピアノやギターで、このバンドが奏でるメロディを
演奏したいと思いギターをお年玉で購入し・・・と、
どんどんハマっていった。
しかし、中学時代、「たま」が好きだと
とあるクラスメイトに話したら、「えーなんで
あんなバンドが好きなの!?」と嘲笑された。
それでも私は、構わず「好き」を貫いていたのだが、
そのクラスメイトから事あるごとにたまをバカにする発言が繰り返されたため、内心ははらわたが
煮えくり返る思いだった。
「そんな奴とは離れればいい」と思われるかも
しれないが、クラスの中で一緒にいる人がいないと、
私は完全に孤立する状況だったので、そうもいかず。
自分の「好き」に対する理解を全く得られないまま、
時が過ぎていった。

それからずいぶん経って、子育てがある程度落ち着いた
頃、私は音楽活動を始めた。
SNSから活動の幅を広げていったのだが、たまファンだというとある方から偶然ダイレクトメッセージをいただき、恐々その方のライブに参戦し、そこから
世界が広がっていき、「たま」をコンセプトに
自主企画ライブを開催するまでにもなった。
彼には本当に感謝しているし、思い切って彼からの
ダイレクトメッセージに応えて行動して本当に
良かったと思う。

現在でもずっと、たくさんの「たま」好きの仲間達に囲まれ、本格的にハマっていた時期からちょっと長めのブランクはあれど受け入れてくれるような
優しい世界に生きることができている。

こんな世界が待ち受けているとは、10代の私は
思いもしなかった。自分の人生はうまくいかない、
私の感性は誰からも受け入れてもらえない、と
ずーっと思っていて、頑なに心を閉ざして
生きてきたから。いつしか、「たまが好き」を
封印して、無意識の彼方に冷凍保存してしまって
いたから。

出会いはいつも偶然。自分の心は、
「好き」を表現するきっかけを常に求めていたのだな、
と思う。冷凍保存とはいえ、氷が溶ければ
瑞々しいままの自分の感性が姿を見せてくれたのだから。曲の歌詞もコーラスも身体が覚えているし、
ひとたび曲がかかれば再現できるのだ。
それを遠慮せずに歌える「場」が常にあること、
本当にありがたいなあと思う。

当時の私に伝えてあげたい。
「数十年後、あなたはたくさんのたまファンの仲間達に
囲まれてたくさんたくさん温かくて楽しい時間を
過ごせるよ、だから安心して自分の【好き】を
貫いていいんだよ」って。

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