「学マス」は次代の旗手になりうるのか
みなさんこんにちは
この度アイドルマスター待望の新ブランドの発表がありましたので、それについて今回は語っていこうと思います。
それではいきます。
■その名は、「学園アイドルマスター」
▶次なる舞台は学園
みなさん、アイドルマスターには現在5つのブランドというものが存在していることをご存じでしょうか。
簡単に言うと坂道グループが「乃木坂46」「櫻坂46」といったようにグループ毎独立しているのと同じように、それぞれ登場するアイドル、コンセプトといったものが異なります。
そしてその5ブランドは下記の通りです。
(※2022年に発表された「vα-liv」は現時点でアイマスブランドではなく、どこにも属していません)
アイドルマスターの新ブランドの発表は2018年に発表された「アイドルマスター シャイニーカラーズ」以来6年ぶりということもあり、アイドルマスターのファンの方のみならず楽しみにしていた方は多いのではないでしょうか。
そしていよいよ発表会当日。
事前のPVによってお披露目されたアイドルマスター6番目となるブランド。
その名は、「学園アイドルマスター」。
舞台はトップアイドルを育てるためのアイドル科が存在する学び舎「初星学園」。アイドルマスター初となるアイドル事務所ではなく学校を舞台としたブランドです。
フォーマットとしてはこれまでのアイドルマスターを踏襲したアイドル育成シミュレーションゲーム。プレイヤーは同じ系列の専門大学のプロデューサー科の学生とのことです。
学園という舞台選定の理由としては「わかりやすさ」「成長を描きたかった」というものが司会を務めた小美野プロデューサーから語られました。
「わかりやすさ=キャッチーさ」というものは現時点において私自身はあまりピンときませんでしたが、成長譚という点に関してはやはりアイドルを描くうえで王道中の王道であると思うので期待したいところです。
▶「学校」+「アイドル」といえば
さて、今回のコンセプトであろう「アイドル」や「学校」といったキーワード。この言葉から皆さんの脳裏に浮かんでくるものがあるのではないでしょうか。
そう、同じく二次元アイドルコンテンツの雄「ラブライブ!」です。
あちらは学校内で結成されるアイドルグループであるスクールアイドルが全国大会「ラブライブ!」を目指すという「部活もの」であり、作中において楽曲の制作も学生で行うなど手弁当的なアマチュアリズムが根底に流れています。
一方、「学園アイドルマスター」はこれまでのアイドルマスターシリーズ同様に「トップアイドルを目指す」という目標があり、いわゆるプロフェッショナルになるための養成機関の色合いが強くなりそうなので両者には明確な差異があると言えるでしょう。
しかしながら、学校でのアイドル活動というものはラブライブシリーズで脈々と受け継がれているテーマ・コンセプトであり、良くも悪くもその影が見え隠れします。
それにも関わらず、取り入れられた学園要素はその設定を見ていけばいくほどにこれまでのブランドにおけるアイドル事務所との立ち位置の違いが曖昧としているように感じます。
(学園モノそのままでいくと「ラブライブ!」との差別化が図れないということもわかりますが)
そして1番気になるのが取ってつけたような「プロデューサー」要素です。
「プロデューサー」というのはアイドルマスターシリーズにとって重要な意味を持つことは承知のうえですが、学園を舞台にしてもまだプロデューサーというロールが残っていては折角の学園が舞台という「学園アイドルマスター」の売りのひとつが弱くなってしまう気がします。
ここはゲームにおいてのプロデューサーという立ち位置のエッセンスは残しつつ新たな表現を見せてもらいたかったところです。
まだPV段階なので早計ですが、外見だけ触れると同じバンダイナムコのIPである先人のレールに乗っているように見えてしまいますし、中身を見ていくとこれまでのアイドルマスターの焼き直しに映ってしまうというのが私の感想です。
ただ上述しているコンテンツはもう十年以上の時を経ていますし、これまでそういった二次元アイドルコンテンツに触れていなければ「学マス」は新鮮に映るでしょうからその点が悪いと言うつもりはありません。
▶夢に翔けるアイドルたち
今回発表されたのは9人のアイドルたち。
パッと見は淡い色合いでこれまでのアイドルマスターでいくとシャイニーカラーズのイメージに一番近いかもしれません。
いわゆる流行りのキャラクターデザインでしょうか。アイドルマスターのキャラクターデザインはシャイニーカラーズの前後で意図的に方向性を変えてきている感じがあります。
さて、学園を舞台にしているということで合わせて気になるのが登場するアイドルたちの年齢。
ちなみにこれまでのアイドルマスターブランド内でのアイドルたちの年齢幅は下記の通りです。
これまでのアイドルマスターはすべてアイドル事務所という箱の中で物語が展開していったので、そこに所属するアイドルは当然年齢も幅広いです。
一方で今回は中高一貫の学園が舞台であるので、飛び級や留年などを考えなければ満13歳から18歳までがレンジとなります。
年齢だけが個性であるとは言いませんが、低年齢層のいわゆるロリに分類されるようなアイドルや、少し年上のお姉さんといったキャラクターが今回は見られないかもしれないというのは少し残念です。
■気になるゲームの中身は?
▶育成システム
育成シミュレーションゲームとして気になるのがやはりゲームシステム。体力ゲージ、ステータス、レッスンといった項目がみられ、いわゆる一般的な育成画面になっていると言っていいでしょう。
しかしながら、育成の流れについては現状アイドルを成長させてライブへと導くという流れになるというボンヤリとしたものしかわかりません。
あまり一周が長かったり周回要素が強めではないほうが個人的には好みですがどうなるでしょうか。
次からはそれを支える制作陣を見ていきます。
▶美麗なグラフィック
「学園アイドルマスター」の開発は、サイバーエージェントの関連子会社である㈱QualiArts。
同じくアイドルを題材としたゲームである「IDOLY PRIDE」の開発を手掛けており、そちらはライブ映像に関して定評があります。
「学園アイドルマスター」のPVを見ていただければわかると思いますが、キャラクターが滅茶苦茶滑らかできれいです。ライブにいたっては圧倒的な臨場感と迫力を感じます。
よくライブ映像が話題になる「ウマ娘」などと比べても遜色なく、それを上回ると言っても過言ではない出来です。
このクオリティを裏付けているのはキャラクターを描画するポリゴン数にあります。
ここで前述した「IDOLY PRIDE」キャラクターのポリゴン数に関しての記事を下記に抜粋しましょう。
そして「学園アイドルマスター」において、3D体を構築しているポリゴン数はその倍以上の60,000にのぼります。
但し、その代償として現状ではソロライブしかおこなえないとのことなので、ユニットパフォーマンスに期待している層には少し残念。
多人数ライブは今後に期待したいところです。
▶シナリオ・楽曲へのこだわり
シナリオについては外部からライトノベル作家である伏見つかささん(代表作:「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」「エロマンガ先生」)を始めとする作家陣を呼びこみ、楽曲制作陣においてはアニメ・ボカロ界隈の超一流どころのコンポーザーが参画。
さながら関羽と張飛を従えた劉備のような圧倒的布陣です。
クオリティの暴力とでも言うような面々が名を連ねており、次代を担っていく「学園アイドルマスター」にかける覚悟と本気が伝わってきます。
一方で、ここまでガラッと制作陣が一新されると一抹の不安を感じることもまた事実です。
キャラクターデザインなどにおいてはひとつ前の「シャイニーカラーズ」の頃にも「アイマスらしくない」という意見はありましたし、それは少なからず「シンデレラガールズ」「ミリオンスターズ」の頃にもあったでしょう。
しかしながら、「アイマスらしさ」というものは時代に合わせて変容していかなければならないし、変容していくものだと個人的に思います。
「学園アイドルマスター」には新時代のアイマスらしさでネガティブな意見を払拭する輝きを期待したいところです。
■自社ブランド間の競合問題
▶「アイマス」ゲームの行方
「学園アイドルマスター」が始動するに当たって、巨大なIPとなったアイドルマスターにとって悩ましいのが肥大化した各ブランドの扱いでしょう。
冒頭で紹介したようにアイドルマスターには5つのブランドが存在しており、特定のブランドのみ応援している人もいればブランドを横断して応援している人などさまざまな方がいます。
これまでもそれぞれに異なった魅力を私たちに提供してきたアイドルマスターですが、大きくなっていくほどそれらすべてを追っていくということは難しくなっていくと言わざるをえません。
そんななかで、5ブランドのスクエアとしての役割を担うことを期待されていたアプリゲーム「アイドルマスター ポップリンクス」はリリースから1年半程でサービス終了。
サービス終了の要因はゲーム性や収益の問題などさまざまあると思いますが、根本的な問題として「そんなにいくつもゲームを追うことができない」というものがあるのではないでしょうか。
1日は24時間、人生の時間は有限であり当然ながら余暇の時間は限られています。
現在アイドルマスターブランドにおいてサービス中であるソーシャルゲームは下記の通り。
「学園アイドルマスター」がリリースされていない現在でも4つ存在しています。
すべてをやっている人は少ないかと思いますが、仮にこの中で2つやっているというだけでもそれなりの時間を取られているでしょう。今回の「学園アイドルマスター」のゲームジャンルは育成シミュレーションゲームであり、プレイ時間(=拘束時間)が長くなることは想像に難くありません。
そういった面でブランド戦略というのはアイマスにおける大きな強みであると同時に、アイマス顧客というパイを取り合う明確な弱みでもあると言えます。
既存ファンがここから新たにゲームを始めるというのもなかなか大変になってきそうです。
ただ、「シアターデイズ」「スターライトステージ」についてはすでに全盛期に比べれば落ち着いており、後継のブランドたちの今後のためにも徐々に縮小させていくことは間違いないでしょう。
それは同時にソーシャルゲームとして、そしてアイマスブランドとして「シャイニーカラーズ」「学園アイドルマスター」が両輪としてこれからのアイドルマスターを支えていかなければいけないということを意味します。
しかしながら、両ブランドは育成シミュレーションゲームとして食い合いが発生する部分があるでしょうし、同じく育成シミュレーションゲームとして確固たる人気を獲得している「ウマ娘」などの大きな壁が存在しているのが現状です。
果たして「学園アイドルマスター」は新規ユーザー獲得と合わせて既存ブランドのユーザーを上手く獲得することができるでしょうか。
■おわりに
アイドルマスターは2000年代から現在に至るまで「二次元アイドル」の最前線を走ってきたのは言うまでもありません。2011年に放送されたアニメ「THE IDOLM@STER」は大きな転換期となり、その後のアイドルマスターのみならず、後発のアイドルアニメにも多大な影響を与えました。
アイドルマスターが産声を上げたのは2005年。
20周年を迎えていくタイミングでこれからアイドルマスターにはさまざまな大きな変化が起きていくでしょう。
二次元に生きるアイドルはいつまでも若々しく、時を経ても老いることがありません。
一方で、アイドルを演じる声優は当然のことながら年齢を重ねていきます。
アイドルマスターはアイドルを演じる声優のリアルライブというのがコンテンツにおいて重要な役割を占めていますが、いつまでも元気にパフォーマンスをすることが難しいことは明白です。
そういった面でも、アイドルマスターは大きな世代交代のタイミングに差し掛かっており、「学園アイドルマスター」がこれからのアイドルマスターの行方を占う分水嶺であることは間違いありません。
彼女たちは二次元アイドルの次代の旗手になりうるのか。
春のリリースを楽しみに待ちたいと思います。
それではまた
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