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文学館コラボについて考える

上記のツイートがきっかけで、(この方自体には本当に悪意があるとは思っていないが)共有されている文章での「文豪ストレイドッグス」の扱いがとっても気になった。

今回は実際のタイアップ経験から「文アル」のみを取り上げた。近年では「文豪ストレイドッグス」(朝霧カフカ・春河35)や、「啄木鳥探偵處」(伊井圭)とタイアップする文学館もあり、それらも担い手確保に影響を及ぼしているだろう。

「文学館・記念館の役割」影山亮https://www.jstage.jst.go.jp/article/showabungaku/85/0/85_175/_pdf

そもそも、二次元コンテンツと文学館(というより、広義の博物館)コラボは、「文豪ストレイドッグス」が嚆矢である。上記の書き方だと、文ストも文学館コラボやってますよ、というくらいの軽さで書かれているが、併記されている「啄木鳥探偵處」は2020年にアニメ化の際のタイアップなので、2014年に最初に文学館コラボしたものと並列表記にするものではない。

戦後、「斜陽」「人間失格」を世に問いながら、39年の短い生涯を閉じた日本を代表する文豪、太宰治。彼の生誕105年を機に展示会「生誕105年 太宰治展-語りかける言葉-」が2014年4月5日(土)から5月25日(日)まで開催されている。(中略)
また、今回累計80万部を突破した大ヒットコミックコンテンツ「文豪ストレイドッグス」と展示会がコラボした。これは異能力「人間失格」を操る太宰治らが繰り広げる文豪異能力バトルアクションコミック。漫画家の春河35が林忠彦撮影の太宰治の肖像写真にインスパイアされ、太宰展ポスタービジュアルと同じ構図の文豪ストレイドッグスの太宰治を描き下ろした。
“太宰治”画像の原本は太宰展の文豪ストレイドッグス紹介スペースにて展示するほか、コラボポスターは全国の書店にて掲出される予定だ。この機会に展覧会と書店とに足を運び、奥深い“文豪”世界に浸ってみるのはいかがだろうか。

余談だが、この時、私個人は訪れていないのだけれど、描きおろし絵がお気に入りである。文スト太宰治の描きおろし絵には坂口安吾の後ろ姿が入っているが、これは元の写真にはあったがポスターなどで活用されるときにトリミングされている部分を描いたものである。

話を戻して。上記の引用部分が、神奈川近代文学館のwebアーカイブでは古すぎたのか掘り起こせなかったため、プレスリリースを引用しておく。書店でのコラボポスターの掲示もまた、文学館訪問に寄与したと推測するのはたやすい。

特別展「没後50年 谷崎潤一郎展 ―絢爛たる物語世界―」
(中略)
【会期】
2015年(平成27年)4月4日(土)~5月24日(日)
休館日は月曜日(5月4日は開館)
(中略)
本作品と文学館は作品の舞台が横浜で、主人公・中島敦の一大コレクションを文学館が所蔵しているという深いつながりがあったことから、昨年の「太宰治展」でコラボ企画を実施、約2000人の文ストファンが来館し「文豪女子」という言葉も生まれるなど、予想を超える反響がありました。
今回の「谷崎潤一郎展」でも、「文豪ストレイドッグス」に武装探偵社のメンバーの一員として異能力<細雪(ささめゆき)>を操る谷崎が登場することから、コラボ企画を実施することになりました!

https://www.kanabun.or.jp/exhibition/209/

第二回の文ストコラボの際に、前回の数字を概算で発表してまでの人気っぷりを書いているのだから、よほどの反響だったのだろう。

また、「文豪とアルケミスト」と母体が同じだったゲーム「刀剣乱舞」は、2015年に博物館コラボを果たしている。

京都国立博物館で2015年12月15日(火)~2016年2月21日(日)に開催される特集陳列「刀剣を楽しむ─名物刀を中心に─」において、ブラウザゲーム『刀剣乱舞‐ONLINE‐』とのコラボレーションが行われる。

https://www.museum.or.jp/news/3707

広く「二次元コンテンツの博物館コラボ」という意味では、現在ではコラボで圧倒的経済効果を生む「刀剣乱舞」すらも先じてのコラボ企画を果たしているのが「文豪ストレイドッグス」である。

『月に吠えらんねえ』展
メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞された清家雪子氏原作のコミック『月に吠えらんねえ』。主人公である「朔くん」は、萩原朔太郎の作品群から清家氏が受けた印象をもとに生み出されています。そんな朔くんと、日本近代の文壇のキャラクターたちが多数登場し、闇鍋的に展開する近代詩ファンタジー。
会場には清家氏による33点に及ぶ原画や特製記念撮影パネル、登場キャラクターたちに関連する貴重な書籍類の展示、この度書き下ろして頂いた「ぐんまーの詩人」に関する漫画、そして清家さんが『月に吠えらんねえ』の世界を描くにあたって実際に使用された参考文献の一覧表とそのごく一部の資料展示ご覧頂けます。膨大な下敷きを感じながら『月吠え』の世界をお楽しみください。オリジナルグッズも多種販売中。

『月に吠えらんねえ』展前橋近代文学館
https://www.maebashibungakukan.jp/kikaku/1657.html

おそらく、文アルのコラボ初出は2017年の武者小路実篤記念館。

武者小路実篤記念館コラボ
武者小路実篤記念館と文アルとのコラボが決定いたしました。
期間:8月2日(水)~8月27日(日)
場所:調布市武者小路実篤記念館

https://bungo.dmmgames.com/news/170710_04.html

ちなみに、コンテンツの開始年で比較すると、
・文豪ストレイドッグス(2013年~)【文学館】
・月に吠えらんねえ(2013年~)【文学館】
・刀剣乱舞(2015年~)【博物館・科学館】
・文豪とアルケミスト(2016年~)【文学館】

という時系列になる。

という、前述の経緯を理解した上で、下記のツイートを見ていただきたい。

(やるとは言ってない) そうなので、とりあえず私が事実関係だけは整理させていただきました。
ふつうに考えるのならば、文アルよりはるか前に2013年にコンテンツが始まっている『文豪ストレイドッグス』や『月に吠えらんねえ』からの文学館来訪者が「定着した」のが、「文豪とアルケミスト」のコラボとのあたり、と推察してもいいくらいである。だのに、「文アルコラボによる集客の質的変化」という表現を用いる。

文ストはアニメ化時期に集中的に文学館コラボをするし、『月に吠えらんねえ』に関しては月刊誌連載が終わっているので、コラボの機会自体は文アルの方が設定しやすいのは間違いない。しかし、コラボ時期は文ストが最初であるし、そこから文学館に通うようになれば、自然と文アルコラボの時期に足を運ぶことになる。文アルと文ストは共通して登場する文豪が極めて多いからである。

そもそも、文豪ストレイドッグスとはタイアップしていない文学館も多い。文アルとコラボする文学館に足を運べば、「文アルありがとう! 文ストと全然違っていい!」と言い続ける文学関係者の声が大きいのであれば、これからは来館時きちんと毎度アンケートに「文ストからのファンです」としつこく書いていかないと、蔑視されてしまうのだろうか、と心が苦しくなる。

KADOKAWAがサイバーテロ状態のため、きちんとしたwebページを参照できないのが残念だが、出版IPで現在においても「文豪ストレイドッグス」はかなりの割合を占めている。そもそもファン人口が明らかに違うのである。「統計的な資料があるわけではない」とは言いたくないので、今後追記させていただきたい。


平成29年4月26日(水)~5月21日(日)
【特集展示】
文豪ストレイドッグス×さいたま文学館

もともとの論文誌の文章の書き手の方、2019年にさいたま文学館で働くようになったそうだけど、そもそも2017年に文ストとコラボしているのに、ちょっと失礼ではないでしょうか……?

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