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PL学園硬式野球部1年(学校生活編)

心地がいい。寮での辛いことや、練習の厳しさが嘘だったのではないかと錯覚するほどの別世界に僕はいる。聞こえてくるのは他の生徒の寝息と教科書を抑揚なく音読する先生の声だけだ。今僕は一年生とって唯一の楽園である学校の教室にいる。

寮では毎日平均4時間しか寝れていない。週7日で野球の練習をしている僕らにはあまりにも少なすぎる睡眠時間だ。心と身体の回復を促すためにはなんとしてでもこの教室で睡眠時間を確保しなければならない。体育科である僕たち硬式野球部の授業時間は5限のみ。一限が50分だからマックスで4時間は授業中に寝ることができる。

寮では常に先輩に気を遣いながら睡眠をとっているため、まるで寝た気がしない。なので学校の教室で授業中に寝る時間だけが唯一僕が心置き無く眠れる時間だった。

一限目 数学

一限目、僕は前日の寮での死闘を潜り抜けやっとの思いで楽園である教室にたどり着いた。一限目は数学。半ば意識が朦朧としてる中僕は席に座り、授業が始まった瞬間に意識を失ったかのように眠りに落ちる。数学の担当の先生は赴任してまだ4年目である女性教師のN先生だ。彼女は僕たちにバレンタインの日に生徒全員にチョコレートを配ったことで硬式野球部の生徒からの支持は絶大だった。糖に飢え、甘いものに枯渇したいた僕たちに一欠片のチョコレートはまさに砂漠にある水溜りだった。

そんな彼女には真面目すぎるが故の欠点が一つあった。それは寝ている僕たちを起こしてくることだった。ここで寝られるがどうかは死活問題に関わるので大変だった。

トントン、肩をたたかれる。「ほら、起きてください。この問題を解いて」
深い眠りについていた僕は現実に引き戻された。脳は起きているが体が全身麻酔にかかっているように動かない。
「分かったわ。そんなに眠いのならこの問題を5問といたらもう起こさないから」

大体このような睡眠を許可するための交換条件を持ちかけてくる。僕は死ぬ気で目を開けてなんとか数学の問題を5問解き、睡眠をとる条件を獲得し、また深い眠りについたのだった。

2限目〜4限目

2限目から4限目までの記憶はほぼない。硬式野球部の実情を理解してくれているベテランの先生方は僕たちの睡眠を最優先にしてくれるのだ。3限目までは自分の腕を枕に机に突っ伏したフォームで眠るのだが、4限目だけは眠るフォームを変えなくてはならない。昼休みになれば、また昼飯を食べに食堂に行かなければならないので顔に眠った痕を残すことができないのだ。授業中に寝てはならない。という野球部のルールがあるので、寝てる事がバレれば一発アウト。寝た痕跡は残してはならないのだ。

決して顔に寝た痕をつけないように顔を上げて目だけ瞑る方法で爆睡する方法を身につけた。そうすれば眠った痕跡は残さずに食堂に行く事ができる。

昼食堂

昼の食堂は比較的平和だった。上級生もに眠気から解放され、昼だけにでる僕たちには手に届かないホットスナックやアイスを堪能している。

僕は昼食を固定していた。毎日チキンカツカレーの大盛りを食べていた。まだあのカレーを超えるカレーに出会ったことはない。それほど美味しいカレーだった。そのチキンカレー大盛りを必死でかきこむ昼休憩を過ごした。

                 後編に続く

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