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シネマ歌舞伎『桜姫東文章 下の巻』に心かき乱された(イヤホンガイド無し初回感想の記録)

えらいもんを見てしまった…。と頭が未だに混乱状態です。
自分でもこの感情をどう処理するべきか分からないので、感想を書き留めるうちに何かが見えてくるかなと思いながら書きます(希望的観測)。
自分の頭の整理のために書いた果てしなく長い記事ですが、お読み頂けたら超絶ハッピーです!

これを書く前に参照したのは映画本編と、インターネットで検索してざっと答え合わせのためだけに読んだあらすじと、Wikipediaの項目です。感想や考察などの情報はあまり入れずに書きたいと思いました。
なお当方、歌舞伎初心者かつ記憶力に自信がないため、不正確な記述が多々あるかと思われます。
後ほどパンフレットを通読した際にパンフの感想を追記しようかと思うので、その際に明らかな間違いについては修正します。

あまりにも長くなったので目次を作ったのですが、あんまり意味ないかも。

1.玉三郎丈と仁左衛門丈のインタビューの感想

下の巻もインタビュー入ってるんですね、嬉しい!!
玉様がおっしゃってた、仁左さまの早替わりのご苦労に関しては、やはりとてつもなく大変なのだなぁと…。
下の巻は一瞬で清玄から権助に替わって登場する場面があり感嘆させられますが、そうでなくても役が替わるときは時間ないよなと、上の巻を2回め観たあたりで思っておりました。

というのも、以前YouTubeで、猿之助丈が早替わりの舞台裏を見せて下さっている動画を視聴したことがありまして。


舞台裏の糸が張り詰めたような緊張感の中、見事な連携プレーによって衣装や鬘などが恐るべき短時間で替わり、猿之助さんご本人も雰囲気からして全く違う人物になって舞台に出て行くので、もちろん驚きと感動があるんですけど。
それ以上に、役者さんも裏方さんも、めちゃくちゃ大変!!と思いまして。皆様神経を研ぎ澄まして本番に臨んでおられるのがひしひしと伝わる映像ですね。このような舞台裏を見せて頂けるのがありがたいです。
舞台に関わる方々の尽力により夢の世界を見せて頂けることに、改めて感謝したくなりました。

そういえば上の巻のインタビューでは、玉様は仁左さまのこと「松嶋屋さん」と呼んでおられましたけど、今回「仁左衛門さん」になっていたのは何か理由がおありなのかな、とふと思いました。
ご本人としては特に理由はないのかもしれませんが、当方しょうもないことを深掘りしたくなるオタクなので、呼び方が変わるときは相手に対する感情や関係性が違うという可能性を念頭に置いてしまうんですよね。
それこそ考えすぎというか、余計な詮索なのだろうと思いますが。


仁左さま、よう言うてくれはりました!!
わ か る!!!!玉様の、ために、書かれた、演目!!!!

ちょっとテンションがおかしなことになってますが、こちらとしては言質取ったどーーーー!!!!ぐらいの勢いなので。大変失礼な物言いだとは重々承知ですが!
(仁左さまの仰っていた正確な言葉が実は思い出せません、演目とも言うてはらへんような…。何せ衝撃がすごくて…ええ…。
あとどのテレビ番組かは忘れましたが、仁左さまが玉様のことを「惚れてます、惚れてないとできないです」って言うておられたらしいのは小耳に挟んでます…ウフフ(๑・̑◡・̑๑))

上の巻を映画館で複数回観たあとのめっちゃ個人的な感覚としては、玉様が演じている、ではなくて、桜姫が実在している、というくらいの感覚だったんですよ。演じているとかいう次元でなくて、桜姫というひとりの女性、全人格を持った存在がそこに立ち現れている、くらいの。
なので、仁左さまがおっしゃっていることとは逆のようですが、感覚としては多分おそらく近いのかもしれないなと感じております。いやほんと畏れ多いことを言っているのは承知の上ですが。

うわぁまた本題のお芝居の感想に入るまでが長いんだけど。大丈夫???

2.下の巻本編の感想

残月&長浦、小物カップルかと思ってたんですけど、ついに人を殺めてしもうたか…。
トカゲの毒ってそんなに強いのか!と驚きましたが、この場面では私、長浦のことがちょっと心配になっちゃいまして。

長浦、局としては優秀じゃないですか。気を利かせて桜姫と権助を二人きりにするように取り計らったり、桜姫が密かに産んだ子を腰元達にも知られないように里子に出したり。
そんなデキる女が、何故しょうもない男に引っかかって金づるにされた挙句、道連れになって追放されてるのか。
しかも残月の悪事に加担してるけど、この男は世話になった師匠にトカゲの毒を飲まして殺して金を奪おうなんて男だよ!?あんたのことも邪魔になったらあっさり始末するの分かりきってるのでは!?
と思うんだけど、それもこれも惚れた弱みとかいうやつなのか。分からん…私には分からんぞ…。

直後にあっさり捨てられてて、ああやっぱり!と思ってしまいましたが。残月がお囃子さんにダメ出しするところ、メタ目線で面白いですよね。

この後怒涛の展開すぎてツッコミどころ満載というか、感情がついていかないままあっという間に終わったので、気になる部分を列挙したいと思います。
本編の時間を今見たら、138分もあったんですね!?嘘でしょ!?

権助が話してた幽霊話、清玄が幽霊になって桜姫のところに出てくるということの伏線なんですね!
「玉三郎によく似た娘」なるほどそういうことか…。

清玄、雷がAEDがわりになったのか!?心肺蘇生した!?と思いきや、はずみで包丁が刺さるという、何ともやりきれない最期ですね。せっかく息を吹き返したのに、無念といえば無念か。
桜姫にとっちゃしつこいストーカーとは言え一応恩人なんだから、桜姫が彼を手にかけなかったのは良かったのかもしれないと思います。

私は最後の最後まで、権助の血の色は果たして赤いのか問題に興味があったんですが(ちょっとは情があるところを劇中で見せてくれるのかと思いながら見ていたという意味で)
私の完敗だな…残念だな…。桜姫のことも言いくるめてあっさり女衒に連れて行かせるしな…。
個人的に一番許せないの、布団敷くのに邪魔だからって赤子を足で蹴ってどかすところだよ!!
桜姫も、他人の子と思ってるからそこまで関心無さそうだし!まじかよ!!

この辺の権助と桜姫を見てたら、恋敵の子と分かりながらもちゃんと世話していた清玄が一番情のある人物なんじゃないかと思ってしまいますね。
もちろん桜姫の子だからという理由はあれど、他人の赤子を世話するという行為自体が途方もない忍耐力が必要だろうし、惚れた女を追いかけるという一念のみでできることでも無さそうだと勝手に信じています。
清玄に良心を見出したいのは、こちらの勝手な思いではありますが。
私にとっては桜姫も権助もちょっと思考回路が理解しづらいところのある人物なので(権助の思考回路、理解できたら悪人の素質がありそうですけど)清玄にはこちらの理解できる心情が備わっていてほしいということだと思います。

権助が長屋の大家になってからの場面、本筋にはあんまり関係ないので細かいところは分からなくていいのかもしれませんが、あんまり理解できずにちょっとモヤッとしてます。
仙太郎の女房のお十を家賃がわりに人質にして赤子の世話をさせるという流れになり、結局は桜姫の代わりに女郎屋に行かせることにした、ということで合ってますか…自信がない。

ただでさえ話が分からん中で、仙太郎がお十に三行半を突きつけて、なんかそこで軍助の妹とか言ってる???えっちょっと理解が追いつかないです…。お十があえて桜姫の身代わりになったことは分かるんですが。
吉田家の家臣達、七郎さんを中心にして、権助=惣太ということを突き止め、悪事を暴くため身元を隠して権助にうまく近づこうとしてたんですかね?それで合ってる???

清玄と権助が兄弟とか、なにその情報!?
その設定、要る!?とまで思っちゃいますけど、兄弟だからこその因縁ということで江戸時代は納得できた設定なのか…。
兄弟だから顔が似てるということで一人二役なんですかね…。
清玄さん、弟が悪党になっちゃうの止められなかったのかな…いやそもそも知らなかったんですかね。清玄さんずっと寺で修行してたから普通は兄弟とも離れ離れですよね。

権助、悪五郎も殺っちゃってたかー!!
さりげなく言われるから驚きましたが、でも当然ですかね。権助が昔は侍だったのに何故落ちぶれて悪党に堕ちちゃったのかも本人に語ってほしかったな。
桜姫が権助に酒を飲ませて自白を引き出すあたり、手慣れている…。恐ろしい…。女郎生活で身につけた手管なのか、天性のものなのか。
思い切りの良さは前世からだと思いますけどね!

桜姫が権助と赤子を殺すところから最後まで見てる間ずっと、幸せって何だろうって思ってしまいました。
結末は何となく予想していたので、最後はもっと爽快感というかカタルシスが得られるかと思ってたんですけど。

後になって親兄弟の仇と判明したとはいえ、惚れに惚れた男と結ばれて、しかしその男と自分の血を分けた子まで殺して、都鳥の一巻は取り戻せてお家再興できるかもしれないけど、
果たして大団円を迎えても、幸せになりました、めでたしめでたしではないよなと思ってしまって。

もし私ならという前提で考えますが、例え相手が大悪党とその子どもでも、いっぺんは惚れに惚れた男と自分の血を分けた子どもだもんな…。あそこまで思い切り良く殺せないし、殺したという事実を一生気に病みながら暮らす…絶対ずっと夢に見る…。その後誰かと良い縁組ができても結局は出家しちゃうかもしれない…。

しかしあの時の桜姫は己を天涯孤独と思っていたから、例えば権助をお上に突き出して自分はうまく逃げおおせようと思い、そのためにあの場を脱出して誰かに助けを求めようなどとは露ほども思ってなかったろうし、あれが彼女のできる唯一の行動だったろうな。

幸不幸という尺度で測るなら、もちろん桜姫の親兄弟が殺されたのは不幸だけど、惚れた男と再会しなかったらこんな悲劇は起こらなかったと思うし、いやでも前回の感想で勝手に邪推した通り、出家騒ぎ自体が親兄弟の仇を探すための行動で、結果がこれだとしたら目的は達成されているわけで…。

しかし一番謎なのが、親が賊に殺された夜に襲ってきた得体の知れない男のこと、普通は犯人だと思うでしょ!???惚れちゃうの!?!?というところなんですが。
おとんが殺されたんと権助が夜這いかけてきたのって別の日なんですかね…。それならまだ納得いくけど…。
その辺、劇中で言及あったんですかね…。セリフが分からなくて聞き落とした?
それか、世間知らずのお姫様だから人を疑うことを知らないとかそういう設定なのか。もう分からん。

何にせよ桜姫の思い切りの良さと行動力が尋常じゃないですね。彼女にとって一番後悔のない選択をその時その時でしたのだろうと感じます。
お姫様という恵まれているけど不自由な立場にあったり、そこから零落して男にいいように扱われたりされようとも、女性として与えられる運命をよしとせず、自らの意志を持って行動できるだけの胆力が彼女にはありますもんね。すげえや…。そこは本当に見習いたい…。
なかなか桜姫のような勇気はないなと思いますけど、先人たちが桜姫に託した思いを少しでも汲んで、自分なりにしたたかに生きていければなと思います。

少なくとも、一見幸せに見える出来事も単純に幸せだとは短いスパンでは考えられねえな!その逆も然り!人生万事塞翁が馬だぜ!!と肝に銘じようと思いました。

本編を見終わって劇場を出るとき、後ろにいた20代か30代くらいの女性二人連れが、笑い声が聞こえるところで何故面白いのかわからない、みたいな話をしてまして。
私も同じことを思いました。しかし私の場合、笑いのツボがわからないのか台詞が理解できておらず面白みが分からないのか、どちらなのかも不明という残念な状態なんですよ。
2回目以後リベンジしたらわかるんですかね。少しずつでも理解できる箇所増えると思いますし、台詞の意味が分かったけど面白みがわからないというのなら、ツボが違うんだろうな〜ということでしょうか。

以上、本編の感想です。お付き合い下さった皆様ありがとうございました。

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