9

「ななさんと友達でいたいから、一緒には暮らせない」
男に振られたみたいなセリフだが、将来一緒に暮らそうと猛アタック中の親友に言われている言葉だ。
彼女は同居することで生まれるお互いのストレスにより、仲が悪くなることを懸念してくれている。
確かにかなりリスクがある話だと思う。
彼女を失うと私はいよいよ孤独だ。
たしかに彼女の言う通りだな、と考えている。

でも
少なくとも私は恋人や結婚相手と暮らすよりも、彼女と暮らすほうが向いているかもしれないな、と思っている。
そして他にも友達はいるが、彼女以外では絶対にだめだ、それなら一生男の家に転がり込んでいたほうが性に合っている。

皆、恋愛関係にあるパートナーとは気軽に一緒に暮らすのはなぜなんだろう。
多分、一緒に暮らしたい！という気持ちがお互いに強いからなのではないか。
なぜそんな気持ちになるのかというと、やはりお互いに恋愛感情があるからだ。
これが歳をとり忙しくしている時には本当によくない気がしている。
恋愛感情というのはどう考えても状態異常で、判断能力に欠け「通常では起こり得ないことが起こる」のだ
そんな状態の根源である他人と暮らすよりも
穏やかにお互いを尊敬して、相手の幸せを願える関係の友人と暮らせたら、どんなに良いだろう。

ちなみに、長年連れ添っている仲の良いご夫婦は、そんな関係になれているところが多い気がする。
とても素敵で理想だ。
そしてそれが私にはできないからこんなことになっている。このままでは荒地の魔女だ。

彼女の言うことはもっともだとは思う。
私は友人と一緒に暮らしたことがないし、恋愛感情がないということは、嫌な気持ちになったときのフォロー(でも好きだから、もう少し頑張ろう)ができないかもしれない。
私も唯一の親友をそんなことで失いたくない。
向こうも、実現してもいない同居による不仲を既にかなり心配してくれている。
婚約もしていない2人でマリッジブルーみたいになっている。40近くなって何してんだ。

でも、でも
私は家事が苦手だが、料理は意外と好きだ。
最近、好きな人に作る料理は楽しくて幸せだな、なんて良いことを知ったりしている。

作ったご飯を一緒に食べられたら嬉しい。
別々に食べたっていい。食器は出しっぱなしでも私は気にしない。
一緒にゲームをしたり映画か何かを見たりしてもいいし、1人になりたいときはそれぞれの部屋で過ごしてもいいし
そんな穏やかな生活は夢物語なのだろうか。
彼女とは観たいものや好きなものも似ているし、無理に合わせようとか良く見せようと思わずに過ごせて
大切にしようと思えるのになあ
そんな人は他にいないのにな、と
日々思っている

阿佐ヶ谷姉妹だって今は違う部屋で暮らしているのだから…とも思うけど
一つの物件にそれぞれの部屋があれば問題ないのではなかろうか
彼女の好きな猫を飼ってもいいと思う、私も猫が好きになるかもしれないし…

そして、これはまだまだ、すごく先の話だ
私は忙しいしお金もないし、とても女2人マンション暮らしを実現させるポテンシャルがない
今できることをしっかりやってから、ゆっくり考えていきたい。

お互いの人生がある。他の誰かと一緒に暮らすことに決めてしまったり、どこか安住の土地を見つけて暮らすかもしれない。
それは全然いい。でも電車で行ける距離に住んでほしい

会いに行くよ、ヤックルに乗って。