日本のオタクに知って欲しい、西洋のオタクスラング「Proship」という単語の意味と「Proshipper」という概念
はじめに
どうも、マロミと申します。
突然ですが英語圏のオタクが使うProshipやProshipperという単語、ご存知ですか?
私がはじめてこの単語を聞いて何を意味するスラングなのか調べた時、正しい解説を見つける事はできませんでした。
このnoteでは日本人の方がProshipやProshipperという単語を使う人に直面した時、理解できない言葉に戸惑わないよう、私が受けた嫌がらせを元に正しい言葉の意味と対処法について記していきたいと思います。
経緯が長いので、単語の意味だけを知りたい方は「Proshipの勉強」と「Proshipperの真の意味」の項目に飛んでください。
事の発端
2022年7月。
とある海外ジャンルで二次創作をしていた私は、生まれて初めて英語のDMを貰います。
内容は「未成年キャラクターのポルノを描いているアカウントをフォローしているが自覚はあるのか?」というもの。
この時提示された二つのアカウントの内一人は性描写のある作品を投稿しているのは見た事が無く、もう一人は海外のファンサントで正しくゾーニングされた形で発表していたので、「私は彼らのアカウントを好きで見ています、特に問題だとは思っていません」と返信しました。
すると「じゃあ子供を性的に扱っても良いって思ってるってコト?それなら貴方のプロフィールにそう書いてくれませんか?平気じゃない人が貴方と交流する事を避けられるでしょ?」と続きます。
お、面倒なのが来たなと思いつつ対応を続けます。
「私個人は大人のポルノが好きだが、日本では二次創作は自由だ。フィクションではどんな表現も可能である。」
「残念だ。英語では貴方のような人をProshipperと呼ぶ、こういう諍いを起こさないためにプロフィールに自分はProshipperだと書いて下さい」
話が通じない相手だと判断した私は最後に「プロフィールの内容は自分で決める。お互いにブロックし合おう、そうすれば関わらないし嫌な思いもしない。私達日本人はそれを"自己防衛"と呼んでいる。この話はこれで終わり、お元気で!」
と送って相手をブロックしました。
これで終わるはずでした。
以後、このDMの主を"A"とします
嫌がらせの始まり
その後は変わらず創作活動を続けていたのですが、10月頃に「貴方に嫌がらせをしている人がいる」というDMが届きます。
内容は私がフォローしてる絵描きさんや感想をリプライした絵描きさんに「こいつはProshipperだ」と告げ口したり、DMでのやり取りを切り取って「こいつは未成年のポルノが好きだと言っている」とファンアートタグに投稿したりと色々。
私はAをブロックしてからAを見ていなかったし、Aも私の事をブロックしていたようなので気付くのが遅れました。
Aが私以外にも同じような事をしていたのもあり、多くの方がそれをただの嫌がらせとして応対せず変わらず交流を続けてくれていたので嫌がらせを知ってからも放置していたのですが、それはProshipperを嫌う人達の間で次第に誇張され、「マロミは幼児性愛者だと公言していた」とか「マロミは裏で未成年のポルノを描いている」という噂へとエスカレートしていきます。
当然事実無根ですが、私がいたジャンルが海外ジャンルだったので、日本語がわからない海外の方からするとファクトチェックが難しかったのもあると思います。
Proshipの勉強
これは適切に対処しなければいけなくなる場面がいつか来ると考えた私は、そもそもProshipperという単語がよくわかっていないのはマズイと思い、検索したりスラングの意味を調べたりしても日本語で解説しているような記事は出てきませんでした。
そこで、交流のあるアメリカの方に教えて貰う事にしました。
shipとは=カップリングの事
proとは=problematic「問題のある」という意味
proshipとは=問題のあるカップリング
proshipperとは=問題のあるカップリングを推す人達の事
(※この認識は後に誤りだと分かります。『Proshipperの真の意味』に続く。)
この「問題のある」というのは例えば成人と未成年の歳の差カップリングだったり、兄妹のような近親相姦のカップリングだったり、暴力的で虐待の表現を含むカップリングだったり、或いは未成年同士の性交描写であったり…
要は、「現実にしたらアウト」な関係性の事を指すそうです。
この成人と未成年というのがアメリカの成人年齢である「18歳」と未成年の「17歳」でもダメだったり、かなりシビア。
ありとあらゆるフィクションの描写が許されていて、こと同人においては少年誌の二次創作が盛んな日本では理解が難しい概念です。
しかし、私が描いているカップリングは15歳と15歳、あるいは成長後の19歳と19歳。
彼らは作品本編で恋人同士であり、私はこの2人の性描写を描いていない。
この作品では様々なファン活動が公式で許可されている。
結局自分の何がProshipperなのかよくわからないまま、海外の創作ルールに反しているのは自分の方かもしれないし、騒ぎ立てるのもちょっとな…とまたしばらく嫌がらせを放置する事となります。
決断
年は変わって2023年2月、とある海外の絵描きさんと相互フォローになります。
言語は違うがお互いのアートを称え、楽しく談笑した直後に私へのリプライが全て消されフォローが外されている事に気付きました。
何が起きたのか混乱していると、親切な海外のフォロワーが「Aが絵描きさんにマロミはProshipperであると告げ口をしている」と教えてくれたので、
別のアカウントから確認すると私と絵描きさんへのやり取りにいつもの文面を送っているようでした。
他にも、優しいフォロワーや相互フォローの絵師さんたちから「貴方が嫌がらせを受けているのを確認した」とか「酷い噂を流している人がいる」とか
結構な頻度で届くようになり、Aやその賛同者による嫌がらせが激化している事に気付いた私は、嫌がらせを受けている事を告白し、日本の二次創作のありかたについて英語で話し合う必要があると決断をします。
この時にはProshipとは問題のあるカップリングや描写の事で、それは英語圏の創作の標準ルールと認識していたので、英語圏の人達に嫌われる覚悟をして以下のツイートをしました。
https://twitter.com/maromi_ika/status/1626242873715998723
内容はProshipperという考え方や区別が日本には存在しない事、日本で必要なのは正しいゾーニングであり描写を理由に誰かの作品を悪く言うのは良くないという事、そのような声明をするのは現実とフィクションの区別がつかないという事なので好ましくない事、自分は海外ジャンルの作品でProshipに該当する二次創作を描いた事がない事、あとはフォロワーへの感謝等。
自分のフォロワーに向けたツイートのつもりだったこれは、思っていたより多方面に拡散され、その中でProshipperの真の意味を知る事になります。
Proshipperの真の意味
先のツイートが英語圏で拡散された事により沢山の激励を頂く中で、いくつか「貴方のProshipperの認識が間違っているかも」とのご指摘を受けました。
そもそもproshipという考え方は10年ちょっとくらい前には英語圏のオタクの中でも無かった言葉で、事の発端はshipwar、つまりカップリング戦争にあると。
何のジャンルのどのカップリングが始まりだったのかはわかりませんが、カップリング戦争が起きる中で対抗カプが例えば成人と未成年だったり兄弟のカップリングだった時に、幼児性愛や近親相姦はよくないとか社会的常識を利用した中傷が横行するようになり、それに辟易した人達が"Proshipper"という言葉を生み出した。
この"pro"は最初は「賛成」のpro、つまりProshipperとは「どんなカップリングも許容する、差別しない」
日本でいうところの「雑食」…?というか、人のカップリングに難癖を付けませんよという当たり前の意思表示の話だったのだ。
すると今度はProshipanti(以後"アンチ"とする)がproはproblematic(問題的)のproだと対抗し始め、
カップリング戦争を逸脱して全ての"proship"を攻撃するようになってしまった。
言葉の定義が曖昧になる中で相手を悪い方のProshipper、問題のあるカップリングの肯定者だと認定して攻撃をするアンチがアメリカの若いオタク、特にティーンエイジャーの中で増えてしまって、それは時にイジメにも発展して、Proshipperでない事を証明しないと嫌がらせの標的になるとか、ProshipDNI(プロシップとは関わりません)と表記しないとハブられるとか、アメリカのオタク達の間でも問題になっているそうだ。
一方で人種差別にも使われる事があり、主言語が英語ではない人にProshipperかどうか話しかけて、相手がProshipperではないと証明ができないと嫌がらせの対象になったり。(私がやられたのがこれ)
proshipに対する声明を出した事で色んな人から話を聞く事ができて、英語圏の中でもアンチとされる人達はほんの一部である事、Proshipperとされる人達の考え方のほうがデフォルトである事を知れた私はとても安心しました。
Proshipperとは、「誰のどんな描写も許容し差別や嫌がらせをしない、現実とフィクションの区別をつける事ができる人」という意味だったのです。
(ちなみに私が最初にproshipについて話を聞いたアメリカの方がproをproblematicと認識していたのは、その方がオタク活動をしばらく離れて戻ったジャンルではティーンエイジャーが多くproblematicの方が定着してしまっていたからです。)
対処法
さて、proshipの真の意味がわかったところでアンチの偏向や横暴が止まるわけではありません。
私がしてしまった「反応する」という失敗を元に、対処法を考えましょう。
英語でProshipやProshipperといった単語を含むリプライやDMが来た場合、即座にブロックをして無視する。
迂闊に返信をして内容の言質を取られると、嫌がらせの対象になりかねません。プロフィールにProshipDNIと書いてあるアカウントとは接触を避ける
DNI=do not interact(関わらない)
これを記載している人は本人がアンチの感性を持っている可能性が高いのはもちろんですが、彼ら自身も常にProsipperと関りが無いかアンチに監視されている可能性があります。
日本のフィクションに対する感性の何が自分への、また相手への嫌がらせに発展するかわからないので、最初から関わらない方が無難です。
無視を続けても嫌がらせが発生する事例もありますが、結局のところ私達が日本のファンフィクションの感性を持っている以上、感性の齟齬は仕方ない事だと思います。
仮にアンチの言う事に従って健全な絵だけを描き続けて、人間関係の取捨選択を行い、健全なアカウントとだけお付き合いをしてアンチの機嫌を取ったところで、アンチは私達の創作活動に責任を持ってくれるわけじゃありません。
私達が困って言う事を聞く様を見てほくそ笑んで、それを成功体験にして次のターゲットに移行するだけです。
もっと自由に交流して自由に創作をしてください。
私達は表現の自由が許されている国に住んでいます。
アメリカンお気持ちヤクザ
結局のところ、私が守らなきゃいけないと思っていたアメリカの創作のルールなんてものは存在しなかったし、私に嫌がらせを続けていた人は単なるアメリカンお気持ちヤクザでした。
私が今のジャンルで一年近く活動してきた中で、Proshipperだと攻撃されて筆を折った絵描きを見た事があるし、現在進行形で嫌がらせを受けている人が何人かいるのを知っています。
これは海外ジャンルだけの問題では無く、日本のアニメやゲームが当たり前に海外で消費されるようになった今、いつ自分の身に起こるかわからない事故のようなものです。
プロシップ・アンチにとってそれが日本の作品で相手が日本人であるかどうかなんて関係無いのですから。
もし貴方が、突然あらぬ疑いをかけられProshipperだと定義付けられ中傷されるような事があって、このnoteに辿り着いたのだとしたら、この言葉を言ってあげたい。
「そいつら、アメリカのお気持ちヤクザだから気にしなくていいよ。」
最後に
特に深い意味は無いんですけど、『OMORI』というゲームがSteamで1980円、ニンテンドースイッチで2980円なのでオススメです。
終わり。
(追記1)何が"問題的"なのかの危うさ
この記事は「同じように困っている日本人がいたらProshipperの正しい意味とその対処法に辿り着いて欲しい」という意図で書いており、なるべく内容を簡潔にする為にアンチの中で特に「問題的」とされている幼児性愛、近親相姦、虐待、未成年同志の性行為などを例に挙げていますが、私が直接見た被害の話では「原作では未成年だが成長した女の子を想像して描いた絵の胸が大きかったからProshipper扱いを受けた」とか
「人種は設定されていないが色黒のキャラクターを描いたら肌の色がアンチが考えるより薄かったので怒られた」といった事例があります。
寄せられた体験談の中では「過去に虐待をしていたが本編で和解したキャラクターを推していたら虐待の肯定者だと叩かれた」とか
「成人設定ではあるが絵柄が幼く見えるキャラクターが好きだと言うと幼児性愛者の扱いを受ける」等も。
これらは海外ジャンルだけの話ではなく、日本のアニメ・漫画作品の話も含みます。
そして私は「未成年キャラクターの性行為描写を適切なゾーニングで公開しているアカウントと、描いていると疑われているアカウントをフォローしていた」ので嫌がらせを受けました。
流石にそれはもうわけわかんないよというのでは「未成年キャラクターの性描写を描いてるアカウントをフォローしているアカウントをフォローしてた」とかも。
アンチが考えるproblematicの基準は日々移り変わっており、それは個人によっても違うし、性描写を含むか否かとかカップリングであるかどうかは関係無く、アンチの気分によって変わり続けています。
大人と未成年の年の差カップリングはオッケー!この2人は可愛いから!でも近親相姦は義兄弟でもアウト!絶対に許さない!と言う人もいます。
アンチにとってproshipとは、自分の気に入らないものを攻撃する手段でしかないのです。
「差別されても仕方がない描写」が全ての理由ではない事を知っておいてください。
(追記2)アメリカのファンダム
私にproshipの概念を教えてくれた人はアメリカ人だし、この件でずっと相談に乗ってくれてた人もアメリカ人だし、アンチの嫌がらせをいち早く察知して私を気遣ってくれたのも英語圏の人だし、私へのリプライ等でも見られるように声明を出してからは英語を使う沢山の方々が私を励ましてくれました。
『Proshipperの真の意味』でも記した通りアンチの考え方はここ数年で生まれて主にティーンエイジャーに蔓延る考え方であり、アメリカのアニメファンやゲームファン・二次創作者もアンチからの被害を受けながら戦っています。
最初の声明を出してからも、この記事を出してからも、「TLでこの話をするとイジメの対象になってしまうからこっそり言うけど、貴方を応援しています」と言ってくれるDMが沢山届きました。
「お気持ちヤクザ」という言葉が日本の面倒な人々から由来しているように気に入らない作品を中傷する事自体は日本人同士でも起こりえる事で、この問題が特別なのはそれを"他国の人にも強要する"という一点だけです。
そして、SNSでのコミュニケーションを円滑に行う為だけに英語を使う非英語圏の人も沢山います。
この記事が原因で恐怖を感じてしまってアメリカのファンダムや英語を使う人と距離を取る選択をした人を責める意図は一切無いことを前提としますが、私はアメリカで作られた作品のカップリングを愛していて、同じカップリングを推す英語圏の人達との楽しかった思い出が沢山あり、「私自身はこのコミュニティにいて楽しい思い出の方が多かった」という事は記しておきます。
本当に終わり。
(以後、誤字の修正以外の更新や修正を一切致しません。)
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