今は設備投資のチャンス??②(設備費用に関して)

 今回は、「今は設備投資のチャンスなのか?」に関して、設備費用の面から考えたいと思います。というのも今まで設備を販売する仕事をしてきて、設備費は需要と比例して大きく変化すると感じてきたからです。
 直近では、2018年のように景気がよければ、どのメーカーも生産が追いつかない程受注しているため、機械メーカーも強気の価格設定をしてきました。受注できなくなっても値引しないといった風潮でした。さらに材料費、人件費の高騰もあり、年々設備費用は上昇しているイメージを持っていたため、今後の景気が悪くなると予想される今は設備費が下がるのではないかと考えました。

 結論としては、設備毎に変動の有無があり、設備価格が変動しにくい設備は経済対策がある今、変動が激しい設備は景気が急落した次の年が投資のチャンスではないかと考えました。

 2007年から2019年の設備販売台数の統計を参考に、設備販売台数と設備一台あたりの費用を分析してみました。
参考資料 経済産業省生産動態統計年報 機械統計編(2007〜2019)
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu6

 まずは、統計を各年毎の設備台当たり費用を算出しました(図1)。中でも縦型マシニング センタ(MC)が、年によって台数差が非常に大きいため、縦型MCを省いた数値にしてみました。(2009年は5,302台、2015年は53,092台、2019年は、16,345台...)

図1 金属工作機械全体の販売台数、金額、台当たり金額画像1

図2 販売台数画像2

図3 1台当たりの金額画像3

 縦MCを抜いた全体の販売台数(図2緑)と台当たり金額(図3緑)を比較すると、販売台数は、リーマン直後の2009年に急落し、2010年、2011年と反発して上昇した後は平行線を辿っていると言えます。反面、台当たり金額は、2009年に急上昇し、その後急落、そこから徐々に上昇傾向で2019年にはピークの2009年に追いつきそうな勢いです。このことから、1台当たりの設備費用は年々上昇しており、景気が悪くなった(販売台数が極端に少なくなった)年では逆に設備費用が上がっていることがわかりました。実際のイメージとは違ったので、もう少し詳細を確認してみました。
 表をうまく載せられないため、表と台数比較は割愛します。(台数は、2009年に急落したのち、旋盤や研削盤等のNC加工機に関しては、徐々に上昇、ピークの2007年に届きそうな状況でした。

図4 台当たり比較1.画像4

図5 台当たり比較2画像5

 図4は旋盤や研削盤、MC等の切削加工用NC機の台当たり金額です。これを見るとその他のNC加工機以外は、2009年に値上がりした後、2010年には急落しています。その後徐々に上昇するという形でどれも同じような傾向と言えます。図5は放電加工や、プレス、鋳造関係の設備のグラフです(機械プレスは100t以上の設備は台当たり金額が他より高額なため省きました。傾向は100t未満と大きな違いはありませんでした。)。
 図5を見ると上昇傾向はあるものの、リーマン前後でも切削機程の大きな変化がみられないように思います(機械プレス、ダイカストマシンは除く)(販売台数は全体の傾向と同じく2009年に急落)。よって、これらの機械は金額が景気によって左右するものではないのではないかと思いました。

 これらのグラフだけで判断すると、切削機や機械プレスであれば、景気の影響を受けやすく、今後景気が悪くなり設備投資が減ると、設備費用も一時的に上昇した後、次の年には設備費が下がるのではないかと予想されますが、放電加工機や液圧プレスは、今後も金額の大きな変化はないのではないかと考えます。よって、切削加工機やダイカストマシンであれば2021年、放電加工機等のその他の機械であれば、補助金や経済対策のある今が設備投資のチャンスではないかと考えました。

 この他にも様々な理由で、設備費用は変動することが予想されます。実際にメーカーやメーカーの営業マン単位でも、景気が悪くなれば無理をしてでも受注を取りたいと思い値引きしてくれる場合もあります。そのため一概には言えませんが、設備費用を考える参考になれば幸いです。

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