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スーパーマイクロ・コンピュータの疑念

スーパーマイクロ・コンピュータ社(Super Micro Computer Inc.)は、アメリカ・シリコンバレーに本社を置く、350億ドル規模のサーバーメーカーです。

最近のAIブームに乗り、注目を集めていますが、その内部には多くの問題が隠されていると懸念されています。ここでは、ヒンデンブルグ・リサーチのレポートをもとに、スーパーマイクロの懸念点について、まとめます。

Super Micro: Fresh Evidence Of Accounting Manipulation, Sibling Self-Dealing And Sanctions Evasion At This AI High Flyer
Published on August 27, 2024


ヒンデンブルグ・リサーチとは?

**ヒンデンブルグ・リサーチ(Hindenburg Research)**は、企業の隠れた問題や不正を調べて暴露する調査会社です。彼らは「企業の隠された爆弾を見つける」ことで知られています。過去には、中国のドローンメーカー「イーハン(EHang)」が未来的な「空飛ぶタクシー」で注目を集めましたが、その裏に実態のない話が多いことをヒンデンブルグが暴露しました。その結果、イーハンの株価は急落しました。今回は、スーパーマイクロが新たなターゲットとなっています。

スーパーマイクロの問題点:具体的なリスクと懸念

1. 会計不正:収益を操作し、コストを少なく見せる

スーパーマイクロは2018年に、財務報告を提出しなかったために一時的にナスダックから上場廃止となりました。

2020年には、アメリカ証券取引委員会(SEC)から「広範囲な会計違反」で訴えられました。主に、2億ドル以上の売上を不正に認識したり、コストを少なく見せたりしていたことが原因です。これにより、会社の売上や利益が本来よりも高く見えるように操作されていました。

レポートでは和解金として1,750万ドルを支払ったものの、わずか3か月後に再び問題のあった幹部を戻し、同じような不正を繰り返していたとされています。

2. 関連会社との不透明な取引

スーパーマイクロは、CEOの兄弟が経営するAblecomやCompuwareといった関連会社と非常に密接な関係を持っています。過去3年間で、これらの会社に約10億ドルを支払っていますが、これらの取引の99%以上がスーパーマイクロ向けのものでした。

これらの会社は他の事業をほとんど行っていないようで、スーパーマイクロから部品を受け取って組み立てた後、再度スーパーマイクロに販売しているという複雑な取引構造が存在します。

このような取引関係は、スーパーマイクロが自社の財務状況を実際より良く見せるために取引を操作している可能性を生むリスクがあります。例えば、関連会社との間で取引価格を不正に高く設定することで売上を水増ししたり、架空の売上を計上することが考えられます。このような不透明な取引は、投資家にとってのリスク要因となり得るため、注意が必要です。

会計上、関連会社との取引が不透明であれば、利益を操作する手段として使われる恐れがあります。透明性のある取引が求められる現代の企業環境では、こうした構造は大きなリスクを伴います。

3. 未公開の関連会社と秘密取引:さらなるガバナンスの問題

スーパーマイクロのCEOの別の兄弟も未公開の関連会社を所有しており、これらの会社はスーパーマイクロと密接な取引をしていますが、その取引内容は公表されていないようです。

こうした未公開の取引は、企業の財務状況や経営の透明性に疑問を投げかけます。投資家は、企業の実態を正確に理解しにくくなり、リスクが増します。ガバナンス(経営管理)が不十分であると、将来的に問題が表面化する可能性も高くなります。

4. 液冷技術の裏側:本当に独自の技術なのか?

スーパーマイクロは、液冷技術が業界の「革命」を起こすと主張し、この技術が自社の競争力の源であるようにアピールしています。しかし、実際にはその技術の多くが関連会社Ablecomによって提供されており、その関与については全く開示されていません。

この構造にはリスクが伴います。もしAblecomが他社にも同じ技術を提供することを決定すれば、スーパーマイクロの競争優位性は失われる可能性があります。技術の独占が保証されないため、スーパーマイクロの技術的優位性が揺らぐリスクがあります。

5. 制裁と輸出管理の問題:法的リスクも大きい

スーパーマイクロの輸出管理には深刻な問題があると指摘されています。ロシアによるウクライナ侵攻後、米国政府はロシアへのハイテク製品の輸出を制限しましたが、スーパーマイクロの製品はロシアに流れ続け、スーパーマイクロの製品を輸入したロシアの企業のうち、46社以上が米国政府による制裁リストに載っています。

さらに、スーパーマイクロは過去(2006年)イランにも禁輸対象の部品を輸出した罪を認めており、この事件は同社のコンプライアンス不足を強く示しています。

また、中国の政府関連企業であるFiberhomeとの合弁事業も問題視されています。Fiberhomeは、少数民族コミュニティに対する「人権侵害と虐待」、ハイテク監視、抑圧に関与しているとして米国政府から監視対象に指定されていますが、スーパーマイクロは同企業にコンピュータ部品を販売し続けています。

6. 顧客離れと競争の激化:ビジネスの将来に影響する問題

スーパーマイクロは、製品品質やサービスの問題により、主要な顧客を失い始めていると懸念されています。例えば、Nvidiaのパートナー企業やTesla、Amazon AWSなどは、信頼性の高い他のサプライヤーに乗り換えています。

CoreWeaveやTeslaは、品質やサービスの問題から他の供給元に切り替えました。また、Digital Oceanも同様の理由で別のサプライヤーを選択しました。このような顧客の離反は、スーパーマイクロの成長と収益に深刻なリスクをもたらしています。

顧客が離れる主な原因は、次のような問題にあります:

  1. 製品の品質問題: 複数の顧客が、受け取った製品にファームウェアの問題や高い不良率を報告しています。例えば、GMI Cloudは、注文したスーパーマイクロのサーバーの17.5%が不良であったと報告しました。

  2. サービスの不備: 顧客サービスの質が低いと批判されており、サポート体制が不十分だと感じた顧客が他社に乗り換えています。これにより、顧客の満足度が低下し、他社への切り替えを促進しています。

  3. 競争の激化: DellやHPEなどの競合他社が、より信頼性の高い製品と優れたサービスを提供しており、顧客がこれらの企業に流れていく原因となっています。特に、TeslaやCoreWeaveなどの大手企業が他社に乗り換えることは、スーパーマイクロにとって大きな打撃です。

こうした問題が解決されない限り、スーパーマイクロの将来の成長見通しは暗いままであり、競争力を回復するための対策が急務です。顧客の信頼を再び得るためには、製品品質の改善と顧客サービスの強化が必要です。

7.ヒンデンブルグ・リサーチのレポートは信頼できるのか?

ヒンデンブルグ・リサーチのレポートは、スーパーマイクロの問題を詳細に指摘していますが、その信頼性には議論の余地があります。

反対意見のポイント:

  1. 調査の偏りの可能性:ヒンデンブルグは、元社員の証言など一部の情報源に依存しています。これらがすべて正確かどうかは不明です。

  2. 企業の反論:スーパーマイクロは過去の問題に対処しており、現在は規則を守っていると主張しています。また、関連会社との取引にも透明性を持たせていると述べています。

  3. ヒンデンブルグの意図:ヒンデンブルグは、批判的なレポートで株価を下げ、空売りで利益を得るビジネスモデルを持っています。そのため、彼らの動機には投資利益が含まれているかもしれません。

投資家としては、レポートの内容を鵜呑みにせず、複数の情報源を確認して独自の判断をすることが重要です。

投資家へのメッセージ:リスクを理解し、慎重な判断を

ヒンデンブルグ・リサーチのレポートには、スーパーマイクロの経営や取引の透明性に関するいくつかの懸念が示されています。特に、会計不正や制裁に関わる問題、関連会社との取引の不透明さに注意が必要です。

また、最新の年次報告書が遅れている点も心配されます。こうした情報を考慮しつつ、投資の判断をする際には慎重であることが大切です。信頼できる情報をもとに、リスクを十分に理解した上での判断を心がけましょう。


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