📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『御国が来ますように』

📗今日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
📗礼拝メッセージ『御国が来ますように』

新約聖書　マタイの福音書第6章10節　2024年5月19日

　御国が来ますように。　

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

　さて今から20年以上前になります。時の総理大臣がこう発言したことが非常に問題になりました　こんな発言をしたんです。
「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国、このことを国民の皆さんにしっかりと承知をしていただく」
　こんな発言をしたものですから大変なことになりました。野党から物凄い批判がこの時なされたんですね。
　結局この発言を始め、この時の総理の色々な失言が災いして、急速に内閣の支持率が下がりました。結局内閣を解散して総選挙をしまして、この時の衆議院の解散のことを、「神の国解散」と呼ぶ人もいるくらいの、一大センセーションを巻き起こしました。
　その発言についての是非を説教では論じませんけれども、ここに「神の国」ということばが出て来ました。

　その神の国というのは、もちろん、イエス・キリストが語られた神の国というのとは、もちろん異なります。この時の総理大臣の発言を見れば、天皇を神と言っているようなニュアンスの意味合いですね。ところが、聖書の言う神の国は、全く異なるものである、ということですね。

　ところが、これが混同された時代がありました。第二次世界大戦中に、日本の教会でも讃美歌がいくつも作られましたが、その中には、御国、というのを、天皇の皇という漢字を書いて、そして難しい方の國、「皇國」と歌詞を書いている讃美歌もあります。

　もう一つの例として、皇紀2600年奉祝全国基督教信徒大会のプログラムを見てみましょうか。【スクリーンに映す】

　ここに、しょっぱなから国歌斉唱(君が代)、宮城遥拝がありますね。
　それから、説教後の祈祷に「御国建設のために」とあります。これが、神の国という意味ですね。
　説教前の祈祷では、2600年の昔に、神武の御門が大和の国をはじめ、皇国―これは「みくに」とも読みますね―の基をすえたまいしことを感謝し奉る。とありまして、他の全体を見ても、明らかに、神の国と天皇の国というのを、ごっちゃにして混同しているんですね。
　ここの「奨励」では、「日本においてキリスト教徒の為すべきことは、大東亜建設の事業である」と言っていまして、明らかに、日本の国の影響、もっと有体に言えば、日本の国の支配ですね、これが広がることが伝道の広がりになる、ということで、国と一体化してしまっているんですよね。キリストも天皇を応援しているというか、下手したらキリストより天皇の方が上だといった雰囲気の信徒大会だとさえ言えるかもしれません。これが1940年のことです。教会も今とはずいぶん違っていたんだな、とビックリなさるかもしれません。私たちは時代を経ているからこそ、この当時おかしさ、というのにすぐに気付けるわけで、もし当時に生まれていて、その時代の空気の中にどっぷり浸かっていたら、それに気付きにくいかもしれません。

　さて今日は、主の祈りの三回目、第二の祈願、御国を来たらせたまえ、という祈りですね。先週もお話した通り、どこかの国だけの味方をする神なんているんだろうか。もちろんいません。そのような軍事その他のために神の御名を利用、悪用することは、聖なる神の御名を汚し、はずかしめることだと申しました。その祈りの続きに来る「御国」つまり「神の国」というのは、当然、どこかの国とは無関係にある。そう言ってよろしいかと思います。
　あれ？今日はペンテコステ、聖霊降臨日なのに、聖霊降臨、ペンテコステによく読まれる箇所から説教をしないの？と思われたかもしれません。私も主の祈りは今週だけは中断して、使徒の第2章から語ろうかとも思いましたけれども、実はこの「御国を来たらせたまえ」という祈りは、ペンテコステと、非っ常に密接にかかわっているんですね。一見ペンテコステ、聖霊降臨と関係ないようでいて、とってもペンテコステにふさわしい箇所であると言うこともできます。そのことは後で触れます。

　さあ御国が来るように祈る。これはどういう祈りでしょうか？私たちは主の祈りを礼拝の中で毎週祈るんですけれども、案外その意味が頭の中、心の中で、ぼんやりしたままで祈っていることがある。それはこの祈りの意味の物凄い幅広さ、ということが原因になっていることもあるかもしれませんけれども、同時に、私たちの理解が追い付いていない、ということでもあるでしょう。いや、あまりのこのことばの奥深さに、一生追いつけないかもしれないと思って説教者もたいてい途方に暮れる思いがするんですけれども、なんとか、この祈りの心をいくらかでもとらえようとしてみたいと思います。

　まず、御国、神の国、天の御国、翻訳によっては天国となっていますけれども、これらは全て同じ意味です。
　で、この世界、この地上において、国として成り立つのは、一般に三つの条件が必要と言われていますね。領土、国民、主権ですね。でも聖書の言う神の国とは、そういうものとは違うんですね。この国ということばの響き、それは、当然領土があるものだろうと日本語では思うんですけれども、原文のギリシャ語では、支配あるいは統治ですね。神の支配、統治なんです。このことばに土地のイメージは無いんですね。ですからケセン語聖書を訳した山浦はるつぐさんは、「神のお取り仕切り」と訳しました。支配という日本語に悪いイメージがこびりついているかもしれませんけれども、神のお取り仕切りとは、力ずくの地上の権力による支配とは全く逆の、神が愛によって治めてくださる、っていうことなんですよね。

　さあ、この神さまが愛によって治めてくださるというのは、どういうことなのか？こういうのを説明する時には、いくつかの分け方がありますけれども、３ポイントくらいに分けて説明した方が分かりやすいかもしれません。

一つは、私の心と体と魂を、神さまが支配してくださるように。

　2つ目は、その神さまの支配が、周りの他の人々にもどんどん広がっていって、多くの人々がイエス様を信じるようになり、世界中に教会が広がるように。これは世界宣教のための祈りになります。

　そして3つ目は、この地に、天の御国を来たらせてください。最終的にはいつ来るでしょうか？それはイエス様の再臨の時なんです。だからマラナタ―マラナタはアラム語で「主よ来りませ」という意味です―、主よ来りませと祈る、再臨を待ち望む祈りでもあるということなんですね。

　これらの3つは、明確に3つにぶつ切りで分けれるものではなくて、相互に繋がっていることなんですね。ですからこういった広い意味を含むことを念頭に置きながら―でも第一にこれです、第二にこれです、第三にこれです、というふうに順番通りにぶつ切りにはしないで―お話したいと思いますが、まず私たちの心と体と魂を神さまが支配してくださるように、というのは、自分の国を手放す歩みというのが、非常に大事なことになってくるわけです。
　自分の国？いえいえ、自分の国なんて持っていません、と思われるかもしれませんけれども、よくよく考えると、私たちは自分の小さな生活範囲の中でも、自分の意のままになるような領域を作りたがる。ある意味でそれは自分の国です。ですから私たちの人生の目的というのが、そのままですと、自分の国を建て上げることである、というのが、人間の本質的な罪と言えるわけです。それが私たちは大変気付きにくいんです。
　考えてもみましょう。イエス様が教えてくださった主の祈り、これは、パリサイ人律法学者批判の山上の説教の文脈の中で教えられた祈りですから、ある意味で、彼らがしていた祈りへの批判も含んでいる、いやパリサイ人律法学者だけじゃない。パリサイ人律法学者にも、人類全体にもある、―ある人は私たちは祈りにおいても罪を犯すと言いましたけれども―自分の思い通りになってほしいという祈りをしたがる人間の原罪というものに、真正面からイエス様は立ち向かわれている、と見ることもできるんですね。
　というのも、アバ、父よ、という呼びかけに続いて出て来ることばが、御名があがめられますように、神さまの御名前が聖なるものとされますように、という祈りであることからも分かります。それが最初の祈りなんです。考えてみれば物凄いことで、革命的な祈りだと思いますね。私たち人間が生れながらの宗教心で出て来る祈りは、学生であれば自分の合格ばかりを、会社員であれば自分の仕事の成功ばかりを、病気であれば自分の健康ばかりを求めて祈る、私もうっかりするとそういう祈りばかりしてしまう、そういう自分勝手な祈りであっても、何も父なる神さまに祈らないよりも遥かにいいわけで、それも祈りと聖書を読むことを重ねる中で神さまはその私たちの態度を修正してくださいますけれども、自己拡大の誘惑というのは、私たち全員にあるわけですね。

　たとえば、つい先日、前にも取り上げた、離婚後共同親権が参議院でも可決しました。まぁ誰も得しない法案なんですが、あえて得する人がいるとしたら、離婚した後も元配偶者と子供を支配したい人が得するんですね。
　この背景には、モラルハラスメントがあるわけですが、モラルハラスメント(モラハラ)とは、無意識にやっている場合もありますが、支配するためのマインドコントロールなんですね。モラハラする人の発言を聞けば、外の人は重んじているようですが、家庭の内の人、つまり配偶者や子供のことを、一人の人間として見ていないふしがあることが共通点なんですね。「あれは俺の子供だと誇りをもって言えるために共同親権だ」などと言って、子供を自分の体裁や面子を保つための道具にしているふしがあるんですね。これも、家族を、自分の一部というか、自分を拡大したもの、と見ているということなんでしょう。

　それを支配と呼ぶわけなんですが、そういう人は特に周囲をコントロールしたい、コントロール欲求が強いと思われるわけですが、人間には人によって強弱があるものの、コントロール欲求が全員にあります。それが強い人は、もしかしたら、一皮むけば、とりわけ弱い人間で、とりわけ強い不安や恐れを持っているからなのかも知れません。自分を拡大させて周囲をコントロールすることによって、不安や恐れを感じないで済むようにしているわけです。
　ですからモラハラを含む、そういった色んなハラスメントのうちのいくつかは、支配したい、とあからさまでなくても、恐れや不安から、「自分を拡大させたい」という思いから来る部分があるわけです。そういうのは私たちがたとえもし何らかのハラスメントの被害者であったとしても、人間である限り、心のどこかに必ずかすかには「自分を拡大させたい思い」があるわけですね。

　ある牧師先生がこういう面白いことを言っています。もしイエス様が教えてくださった主の祈りが、こういう祈りだったら、とっても私たちになじみやすいものだっただろうと。こういう祈りです。

【そばにいて下さる神よ
私の名を覚えていてください。
私の縄張りが大きくなりますように。
私の願いが実現しますように。
私に一生の糧を与えてください。
私に罪を犯す者をあなたが罰し、私の正しさを認めてください。
私が誘惑にあって悪におぼれても、私だけは見逃してください。
国と力と栄えとは、限りなくわたしのものであるべきだからです。】

　ちょっと笑ってしまいますけれども、主の祈りのパロディです。人間ってホンネはこういう祈りをしたいんですよね。私の縄張りが大きくなりますように。って三行目にありますけれども、自分の影響力や影響範囲を大きくしたい、こういう、私の国の拡大と、神の国の拡大というのは、真っ向からぶつかるわけですね。

　そして、この自己拡大が、私というよりも、私たち、となった時に、特定の派閥争いなどということになるかもしれないし、もっと大きな、国というレベルになった場合、わが国の拡大、ということに、なっていくわけですね。（わが国ファーストなんていうのはその典型的な現れでしょう）
　これが恐ろしいことで、しばしばこの父なる神の御名が、色んな国で、この「わが国の拡大」というものに、うまーく利用されてきました。それは説教の最初に触れた第二次世界大戦中の日本のキリスト教会の例はモロにそうでしょう？神の国が天皇の国とごっちゃにされている。
　それから先週もお話しましたけれども、今のロシアは特にそうですよね。ロシア正教はそもそももともとが、紀元10世紀の「ルーシの洗礼」というものがあって、国とロシア正教が一緒に歩む、ということを決めていますから、一体化しているのもある意味当然と言えるんですけれども、どこかの時点で政教分離をしていないと、神の御名や「神の国」ということばの、戦争への利用が止まらないわけですね。
　
　ある牧師先生はこう言っています。

【教会と国家の関係は、キリスト教会の歴史の中でいつも重大な課題でした。国家が神さまの前にひれ伏すことなく、キリストの教会を自分の一部であるかのように見なし、教会を好きなようにできると考えるなら、それは国家が神様の位置に身を置くということです。主の祈りと共に生きる私共は、それを良しとすることは決して出来ません。それが主イエス・キリストの祈りと共に歩む私共のあり方です。国家はしばしば自らを「聖なる国」とします。しかし、聖なる国家などは存在しないのです。聖なる方はただお一人、天地を造られた、我らの父である神さましかおられません。】

　ですから地上の国の拡大と、神の国の拡大をごっちゃにして語る向きにはよく警戒しておくことが大事だと思います。全く別物だと押さえておくことが非常に大事なことです。

　そして、三つ目のことですが、御国を地上に来らせてください、という意味がこの祈りにはあるわけですね。
　この場合、再臨を待つ祈りですので、ヨハネの黙示録が語る、新天新地、新しい天と新しい地というのが、来るように、という祈りなんですよね。
　国が来る、ってなんだかピンと来ませんよね。たとえば日本が来る、アメリカが来る、というとおかしな話になると思うんですけれども、申しました通り、文字通りの土地を伴うものではないので、神の国、神のご支配が、来る、ということなのですけれども、私たちの心と体を神がご支配、それが広がって神のおとり仕切りが世界に広がる、それに加えて、終末のできごととして、新天新地が来る。
　新天新地は、単純化して、天国と呼ぶ場合もありますけれども、私たちが主イエスの再臨の前に地上の生涯を終えたら、即、主イエスのみもとに召されて、祝福された安息に入ります。これも天国と呼んだりするのでややこしいんですが、最終的なゴールは新天新地なんですね。ルターは、祝福された安息は、地上の睡眠と同じで、眠って目覚めるまでは一瞬、だから数百年でも一瞬なんだと、すぐに目覚めて新しい天と新しい地に入るのだと言いましたけれども、（いずれにせよ）この再臨のために祈るんですね。マラナタ主よ来りませって。
　ここで「来る」という表現に違和感があるとしたら、私たちは「天国に行く」という表現に慣れすぎているからだと思います。よく日本のキリスト教会でも、「肉体は死んでも魂は決して滅びることなく、主のみもとに召されて」と言ったりしますけれども、これもギリシャ哲学の霊肉二元論の影響を受けた表現なんですね。
　体を霊魂が離れて、天に昇って行くというのはギリシャ哲学的な考えで、マタイがユダヤ的婉曲（えんきょく）表現で、単なる「神」の言い換えとして「天」という表現を使っただけなのに、それをギリシャ哲学風の解釈をしてきた歴史があるから、こういう誤解が広まっている部分がどうもあるみたいなんですけれども、聖書が明らかに告げている最終的な希望は、

私たちが天に昇っていくという上向きの運動ではなく、神が地上に降りて来られるという下向きの運動

なんですね。だからこそイエス様は、その宣教の始めにですね、

「時が満ち、神の国が近づいた。」（マルコ1章15節）

　とおっしゃいました。これは、近づいたと言っても、ちょうど「電車が来た」という表現なんです。たとえばスポーツで、残り3か月と、大会の日が近づいてまいりました、ということではないんです。それだと大会までまだずいぶん時間がありますよね。ところが、神の国という電車が近づいたという表現は、ここでは、もうホームに来たっていう表現なんですよ。だからこの福音という電車に乗って、すぐに神の国、神のご支配に入ってください、という意味なんですよね。ですからイエス様の登場が、まさにすぐに神の国の突入だったわけです。まさに神が地上に降りて来られるという下向きの運動ですよね。
　そしてイエス様のたとえ話は、ほとんどが、この神の国について、天の御国についてのたとえ話だったと思い出すでしょう。その中でも、からし種のたとえ、パン種のたとえがありました。
　天の御国はからし種のようなものです。こーんなに小さい種が、空の鳥が巣を作るほどになる。3メートルとか5メートルという話がありますけれども、拡大率が凄いんですよね。
　パン種の話もそうです。イースト菌を含む天然酵母のことですね。それをパンに入れると、ほんの少量で凄く膨らむ。神の国とはこういうものだ、そうイエス様はたとえ話をなさいました。
　しかし、その時にちゃんとイエス様が意図した意味で、正確に理解した弟子はいなかったと思います。この当時弟子も群衆も、ほとんどが、神の国とは、政治的なものだと思っていたからです。
　エルサレム入城の時、イエス様をホザナホザナと迎えた人たち、彼ら彼女らは、やっぱり革命のリーダーみたいに思っていたんですよね。政治的なメシア、力でもって、ローマ帝国を追い払ってくださって、かつてのダビデ王国のような、独立王国を打ち立ててくれるために、今イエス様はエルサレムにお入りになったのだ、こう捉えたからこそ、ホザナホザナと言って迎えたわけです。ダビデソロモン王朝の頃は、これが栄えて栄えて、諸外国にも影響力が強くて、ユダヤの国、という私たちの地境が、拡大すること、つまり私の国が広まることを、弟子たちも群衆も期待した。だけどそれとは全く違う仕方で、イエス様は愛のご支配を実現されたわけです。「あなたがたは、もう自分の国を拡大させなくてよいのだ。不安や恐れに突き動かされて、得体のしれない人間の作った国などというものと一つにならなくても良いのだ。そうしたくなるあなたの罪をゆるすためにこそ、今、わたしは十字架にかかりに行くのだ。」そう言ってくださっているのです。この愛に満たされて、このお方のお取り仕切りの中に、安心して憩うんです。

　宗教改革者マルティン・ルターが、単純にこの祈りについて教えています。

【御国が来ますように、これは何？

たしかに神の国は、われわれの祈りがなくても、みずから来るものです。しかしわれわれはこの祈りにおいて、み国がわれわれのところにもくるようにと祈るのです。

それはどうして実現しますか。

それは天の父がわれわれに聖霊を与えて、われわれが、神の恵みによって、聖なるみことばを信じ、この世においても、永遠の世においても、信仰ある生活をするときに、実現します。】

　ここで注目していただきたいのが、「聖霊を与えて」というところなんです。つまり、神の国が来るのは、聖霊のみわざだって言うんですね。こういうことは普段あまり考えないかもしれません。どちらかというと父なる神のわざでしょう、というイメージを持つ方もあるかもしれません。けれども、考えてみるとその通りで、イエス様の十字架はまさに今生きているこの私のためだったと悟らせてくださるのが、まさに聖霊様ですよね。そして、その聖霊を受けた人たちが、イエスを主と告白することができる。そして、使徒の働き第2章で語られているペンテコステのできごとは、その聖霊を受けた弟子たちが爆発的に語り、3000人もの人が聖霊を受けて、イエス様を信じたという教会の誕生日なわけです。
　ここでその1章前の使徒の働き第1章では、なお神の国を待ち望んでいる弟子たちの姿が描かれています。第1章6節では、復活のイエス様にお会いしながら、なおまだ「主よ。イスラエルのために国を再興してくださるのは、この時なのですか。」と地上の王国の復興のように、神の国のことを、まだとらえていた、ところがペンテコステの日に、領土とか軍事力とかそういうのは全然関係無い、愛と平和に満ちた、あらゆる人種、民族の壁を超えた、そういう神の国がブワーっと広がったのです。ここでもしかしたら弟子たちは、イエス様が教えてくださった主の祈りを思い出し、そして「御国を来らせたまえ」という祈りの意味は、こういうことだったのか！今、目の前にまさに今まで考えもしなかった神の国が実現している！と、まさにあのペンテコステの日に、確信したかもしれません。
　そしてその神の国の拡大は終わりません。愛と平和に満ちた、地上の力を用いない教会という神の国は、今日（こんにち）まで、―確かに「神の国の宣教の拡大などと言いながら戦争をしたり植民地政策に協力したりと」（まさに自分の国を拡大するという）過ちも多々ありましたけれども、それでも曲がりなりにも―教会はそれらを悔い改めつつ2000年の旅を続けてまいりました。そして世界中に、教会という神の国が実現して、その愛のわざが、広がっているのです。
　私たちはだからこそ、世界宣教の幻を与えられています。キリスト者みんなが宣教師だというのは本当で、海外になんか行けないと思う。けれども私たちが海外宣教のために、また宣教師のために祈る時に、世界宣教のわざに一緒にあずかっているのです。そしてそれは、終末のビジョンを見据えてのことでもあります。神の国というのは、ペンテコステで終わりません。黙示録の最後まで続きます。
　私たちが神の国の市民として、自分の国の拡大をやめて、主イエスの福音を宣べ伝え、さらにただひたすら愛のわざに励む時に、神の国は地上においても拡大して行きますが、それでも決して完全というわけにはいきません。だからこそ、「主イエスよ、もう一度来てください」と祈るんです。主イエスが、かつてこの世界に来られたように、いや、もっと鮮やかな仕方で、神の支配を実現し、完成してくださることのない限り、この地上の戦争や紛争、虐殺・ジェノサイド、政治の腐敗や貧困、あらゆる差別、虐待、飢餓、人権侵害、その他もろもろの悩みは、完全に無くなることはないでしょう。だからこそ、新約聖書の最後のことばは、「しかり、わたしはすぐに来る」という主イエスのことばであり、「アーメン。主イエスよ、来てください」という再臨を待つ祈りなのです（黙示録第22章20節）。これは、「御国が来ますように」「御国をきたらせたまえ」を言い換えただけです。私たちは皆、主が再び来てくださる日を待ち望みつつ、日々この「御国を来らせたまえ」「御国が来ますように」という祈りを祈りながら生きるように、今、主に招かれているのです。

お祈りをいたします。
アバ、父よ、愛する天のお父様
御名が聖なるものとされますように。
御国が来ますように。私たちの心も体も魂も、あなたがお取り仕切りください
そしてその神様のおとり仕切りが、ペンテコステの日に、世界に広まりましたことを、そして今なお、それが広がっていることを心から感謝いたします。
主よどうぞ、その恵みのご支配を、なお周りの人に広げるために、私たちの口や手足をお用い下さい。
そして、マラナタ主よ、来りませ。涙も叫びも苦しみも無い、そのような国を、すべての人にお与えください。主イエス・キリストの御名によって祈り願います。アーメン。