📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『復活』新約聖書　マルコの福音書第16章1～8節　2024年3月31日　イースター礼拝

📗【文書版】礼拝の配信を待っていて下さった方、申し訳ありません🙇‍♂️配信がうまく行きませんでしたが、録画の方は音声もクリアに残っていましたので、後ほどアップします。

✴️礼拝メッセージ『復活』
新約聖書　マルコの福音書第16章1～8節　2024年3月31日　イースター礼拝

1さて、安息日が終わったので、マグダラのマリアとヤコブの母マリアとサロメは、イエスに油を塗りに行こうと思い、香料を買った。
2そして、週の初めの日の早朝、日が昇ったころ、墓に行った。
3彼女たちは、「だれが墓の入り口から石を転がしてくれるでしょうか」と話し合っていた。
4ところが、目を上げると、その石が転がしてあるのが見えた。石は非常に大きかった。
5墓の中に入ると、真っ白な衣をまとった青年が、右側に座っているのが見えたので、彼女たちは非常に驚いた。
6青年は言った。「驚くことはありません。あなたがたは、十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのでしょう。あの方はよみがえられました。ここにはおられません。ご覧なさい。ここがあの方の納められていた場所です。
7さあ行って、弟子たちとペテロに伝えなさい。『イエスは、あなたがたより先にガリラヤへ行かれます。前に言われたとおり、そこでお会いできます』と。」
8彼女たちは墓を出て、そこから逃げ去った。震え上がり、気も動転していたからである。そしてだれにも何も言わなかった。恐ろしかったからである。

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。イースターおめでとうございます。
　この日、皆さんとご一緒に復活祭のお祝いができますことを心から感謝いたします。

　ということで、ハッピーハッピーイースターで、終始お祝いムードで、楽しいジョークなどを言ってイースターメッセージを始めようかとも思いましたけれども、一方で、ある意味そうも言っていられないと言いますか、ウクライナでの戦争はまだ終わりません。ガザの市民の虐殺も止まりません。おまけに先日、5日前の26日ですね。日本がイギリスとイタリアと共同開発する次期戦闘機の輸出を解禁するという閣議決定をしたんですね。
　なんでも閣議決定で決めて国会を通さないということも大問題ですし、もう平和国家とはタテマエにすぎなくなり、武器輸出は死の商人などとも言われますけれども、どんどんキナ臭く・物騒になっていると思います。
　そういう問題に関係もしているでしょうけれども、日本全体がどんどん貧しくなっているというのもあります。世界全体にも、日本全体にも問題が山ほどあり、まるで大きな岩が目の前に立ちふさがっているようなものではないでしょうか？
　まぁ今まであげたのは世界とか日本全体を見たマクロな見方でして、もっとミクロに、個人や家庭のレベルで見てみても、家計の悪化であるとか、健康の問題、老化あるいは老後の問題、介護の問題、子育ての問題、職場や家庭での人間関係の問題、そういったものはですね、いつでも私たちの目の前に、大きな岩のように、立ちふさがっているように見えることがあるわけですね。
　
　そう言いますと、まぁそんな悲観的に考えなくてもいいよ、と、まぁ楽観的に行ってもいいんですけれども、やはりこの今日のマルコ第16章のみことばを、神さまからの語りかけとして聞く時に、やはり辛かったり悲しかったりする現実から、この1時間の礼拝時間だけは目をそらして楽しくお祝いして、何の変わりもなくまた日常に戻る、というのでは何か違うと思うんですね。宗教改革者マルティン・ルターは、「聖書は苦難の中で読む」のだと言いました。ですから、そういった問題の中からでも聞こえてくる、爆発するようなイエス様の復活のいのちの喜びとか希望というものを、いただいてここから遣わされて行く、今の時間そういう時に、主によってしていただけると信じております。

　さて、安息日(にち)が終わったので、という書き出しから始まります。当時のユダヤの土曜日ですね。日本とは違って、ユダヤでは日没で一日が終わりますので、正確には金曜日の日没から土曜日の日没までが安息日ですね。働いてはいけない日なので、安息日が明けないとお店も開いていなかったんでしょう。買えるようになったら香料をざんじ買ってですね、翌朝明るくなるのを待って、週の初めの日、つまり日曜日の朝に、まぁイエス様のご遺体に油を塗ってお世話をしようと女性たちはしたわけですね。
　けれども彼女たちは綿密な計画を立てていたわけではありません。当たってくだけろという感じですよね。もう使命感にかられて、イエス様を心から慕う気持ちからでしょう。せめて、少しでもご遺体の腐敗を遅らせ、匂い消しをしてさしあげたいという、心からの情熱から来る行動であったのです。「だれが墓の入り口から石を転がしてくれるでしょうか？」と話し合っていました。なんとか手当たり次第に声をかけて、必死で頼み込んで想いが分かって頂ければ、お墓の管理人であるとか、そういう人に手伝ってもらえるように、なんとか主がはからってくださるのではないか？そういう思いでいたのではないでしょうか？その情熱は素晴らしいと思います。
　ところが、お墓に着いてみて、あたりが明るくなって見えるようになると、―当時のお墓は洞窟のような横穴でして―お墓の蓋として、転がしたとしても大の男何人がかりでないと動かせないような、大ーきな石というか、岩と言ってもいいでしょうね。そんな大きな石で蓋をしてありましたがそれがなんとすでに転がされて、取りのけられていました！
　おそるおそる女性たちが墓の中に入りますと、「真っ白な衣をまとった青年が、右側に座っているのが見えた」とマルコは記していますけれども、この「右側」というのが暗示しているんですね。右側というのは聖書では、神の権威を表すんです。そして、この真っ白な衣というのが、天的な存在であるというのを表しているので、暗に、ただの人間じゃない、ということを言っているわけですね。別の福音書(マタイ、ヨハネ)では御使いとなっていますけれども、何も矛盾しないんですね。青年のように見えた天使なわけです。ともかくそりゃびっくりしますよね。番兵でもない、お墓の管理人でもない、得体のしれない人物が、座っているのを見たわけですから。
　この天使が女性たちに言います。

6青年は言った。「驚くことはありません。あなたがたは、十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのでしょう。あの方はよみがえられました。ここにはおられません。ご覧なさい。ここがあの方の納められていた場所です。
7さあ行って、弟子たちとペテロに伝えなさい。『イエスは、あなたがたより先にガリラヤへ行かれます。前に言われたとおり、そこでお会いできます』と。」

　彼女たちは、はいそうですか、と普通に出たわけではないですね。一刻も早くここを立ち去らないと、と言わんばかりに、全速力で去って行ったと思います。

8彼女たちは墓を出て、そこから逃げ去った。震え上がり、気も動転していたからである。そしてだれにも何も言わなかった。恐ろしかったからである。

　ということで、マルコの福音書は、ここで終わっています。この終わり方、いかがでしょうか？皆さん？まぁ消化不良というか、尻切れトンボというか、こんな終わり方は無いだろう、と、多くの人が思うところなんです。(小説や映画でもそうですよね？)
　そこで、皆さんご自分の聖書がおありだと思いますし、それを開いて確認するまでもなく、括弧が付いた結びの文章が付いていたり、括弧が付いて、9節以降に、エマオ途上の出来事が載っていたり、イエス様の大宣教命令が載っていたり、イエス様の昇天が載っていたり、他の福音書の要約のようなことや一部使徒の働きであったできごとを予告するようなことが載っていたりしながら、もっともらしい結び方がしてあるんですね。これだとイエス様のご復活、ハレルヤ！という気持ちで読み終えることができて大変座りがいいんですが、しかしこれらは、すべて、ほぼ確実に、後代の加筆だと言われています。マルコの福音書が書かれて、数十年くらい経って、「こんな終わり方じゃ耐えられない」と思った人たちが、納得しやすいように書き加えたものである、そして、原文は、この8節の、恐ろしかったからである、で終わっている、ということが、写本なんかを突き合わせてですね、ほぼ学者たちの一致した意見なんです。
　
　じゃあなぜ、マルコの福音書は、この「恐ろしかったからである」で終わっていたか。これは、もともと続きがあったけれども、紙が千切れたとか火事などで失われてしまった、あるいは、著者のマルコ自身に、迫害か他なんらかの事情があって、執筆を続けることができなくなって、この8節で止まってしまったというような憶測は色々あるんですけれども、今では、マルコは、意図的にここで止めたのだろう、という説が一番強いんです。

　それには理由がありまして、今一番有力な説は、マルコの福音書には仕掛けがしてあるということですね。この福音書は、実はもう一度最初から読むように仕掛けられている、ということなんです。というのは、7節で「ガリラヤに行け」という天使のセリフがあるからなんです。「ガリラヤに行きなさい。そこでイエス様にお会いできる」
　そこで読者はガリラヤに戻るんです。ガリラヤはどこで出て来るでしょうか？マルコの福音書の第1章です。読者は第1章に戻って今度は、復活のイエス様と共に読むんです。あるいは、第1章からのイエス様を、十字架にかかって復活された主イエス、として読むんです。こうする時に、読者と復活者イエスとの生涯忘れられない出会いが起こるんですね。この主イエスというお方と真剣にぶつかる時に、こちらが変わらざるを得ないという体験をする、(それは他の福音書ももちろんそうなんですけれども)マルコの福音書は読者に、復活者である生けるキリストに出会ってほしいと思って、特別にそういう仕掛けがしてある、ということが現代の聖書学の定説になっています。

　ところで、今日はそこにはそんなに深入りしません。8節で終わった理由が、もしそれだけだとしたら、「ガリラヤに行け」の7節で終わっていればいいわけです。でも、この女性たちの「恐れ」で終わらなければならなかった理由は、やはり他にあるんです。
　この恐れについて、ある説教者がイースターの説教でこういうふうに言っています。

　大切なことは、マルコによる福音書が告げる主イエスの復活は、恐ろしさに震え上がるような出来事だったということなのです。この恐ろしさを抜きに、キリスト教の信仰は成立しません。この恐ろしさは、天地を造られたただ一人の神様が私共の生活のただ中に突入された恐ろしさです。神様は本当に生きて働いておられるということを思い知らされた恐ろしさなのです。私共のために救い主が来られた、私共のために救い主が十字架にお架かりになったという出来事は、この恐れを抜きにして受け取ることは出来ないものなのです。教会は、この恐ろしさが人生を根底から変えてしまうものであることを知らされた者の群れなのです。神様抜きに生きていたということが、どれほどとんでもないことであったのかを思い知らされた者の群れなのです。神様がいなければ、私共はすべて自分の欲のおもむくままに生きれば良いのです。どうせ死んだらお終いなのですから。しかし、この婦人たちの味わった恐れは、そうじゃない、死んで終わりなんかじゃない、神様がおられる。しかも、遠く離れてみているような方ではなく、私の人生に直接関わる方としておられる。そのことを思い知らされたのです。神様なんて、いるかどうか分からない。そんなたかをくくった生き方を許さない、厳粛な恐ろしい出来事として、主イエスの復活はあったのです。

ということで、皆さんもご自身の体験によってこれらのことはすでに知っていらっしゃるのではないでしょうか？人生の中で死ぬような思いをする中で、あるいは聖書のあるみことばに、体中に稲妻が走るように目が釘づけになって離れなくなるようなそういうイエス様との出会い、そんな中で、恐るべき方、全能者と私の間の断絶というものに気付いたということ、そこから主イエスの、罪と死と悪魔に勝利されたあの十字架を見上げて、主に立ち帰った、というような体験をそれぞれ個別にお持ちなのではないでしょうか？
そしてその説教者は続けます。

しかし、この恐るべき出来事の故に、私共は死の支配から解き放たれ、永遠の命の希望に生きる者とされたのです。

(中略)
私共の教会も高齢の方が増えてきました。高齢になりますと、体のあちこちが痛む、思うように動けない、そういうこともありましょう。しかし、最も重大なことは、死が近づいていることを思わされるということでしょう。しかし、イースターの朝、私ははっきり申し上げます。死は、既に主イエス・キリストの復活によって破られました。死は私共の最後ではなくなったのです。墓の入り口を塞いでいた大きな石は、既に転がされているのです。復活の主イエスが、私共の肉体の命を超えて、私共と共にいてくださいます。主イエス･キリストと一つにされた者は、主イエスの十字架と共に死に、主イエスの復活の命と一つにされているのです。ここに私共の喜び、私共の慰め、私共の力があります。だから、私共は主イエスの御復活の出来事を心から喜び祝うのであります。

　こういうふうに、力強いメッセージなんですけれども、ここで具体的に、身近な問題として、高齢の問題を挙げてくださっていることは、大変分かりやすくしてくださっていて感謝なんですけれども、私もまだ40代でまだ早いと言われそうけれども、体のあちこちがガタが来まして、薬の種類が増えてきまして、毎食前食後に何を飲むのか頭の中で整理しづらくなってきたんですね。いやまだまだ序の口ですよ。私らぁはもっとたくさんの種類を飲んでいますよ、と言われそうですけれども。
　まぁそれは人それぞれだと思いますけれども、ともかくですね、最初に挙げたように、健康や老後の問題、こういうのがなぜ怖かったり、大きな岩のように目の前に立ちふさがっているかのように見えるかというと、どこかで死とつながっているものだからでしょう。経済の問題もそうです。もし経済的に貧しくなれば、それだけ死が近くなりやすいと殆ど本能的に思うから、恐れたり、大きな岩のような問題だと感じるのでしょう。他の問題も、遠回りではありますけれども、間接的に死に近くなりやすいと感じるから、大きな岩のように立ちふさがっているように感じるところがあるのではないでしょうか？
　けれどそれはすでに取りのけられた岩なのです。最大の敵である死は取りのけられました。そしてその他の石も取りのけられました。
　ところで細かいようですが、少し文法的なことを申し上げますけれども、「その石が転がしてあった」というのが、少し不自然な書き方をしていて、マルコがこの福音書を書いたのが、復活のできごとから約30年後の紀元60年ごろとして、その時点でも転がされた状態が続いている、という表現なんです。土佐弁でゆうと分かりやすいですね。普通は「転がされちょった」と書くところを、そうではなくて「転がされちゅう」という書き方なんです。つまり、石が「転がされた」状態が30年前の出来事ではなく、現在もそのままである、という書き方なんです。これはマルコは、狙って書いていると思います。つまり、読者よ、今、あなたの目の前にある大きな石は、すでに取りのけられている、そう2,000年後の読者にも語りかけている、いや、主なる神が、マルコの筆を通して、皆さんに、語りかけておられるのです。

　そこで私たちは、「ガリラヤに行け」というみことばをまた新しく聞くのです。

7さあ行って、弟子たちとペテロに伝えなさい。『イエスは、あなたがたより先にガリラヤへ行かれます。前に言われたとおり、そこでお会いできます』と。」

　皆さんにとってガリラヤとは何でしょうか？弟子たちにとっては漁師の仕事をしていたホームグラウンドでした。私たちにとってのガリラヤは、普通に日々のつとめを果たす職場や家庭などの場所です。そこに、イエス様があなたがたより「先に行く」とありますけれども、この「先に行く」ということばは【導く】というのが基本的な意味でして、導くというニュアンスがもうちょっと出るような翻訳だったらもっと良かったなとは個人的に思います。つまり、「先さき行っちゅうき早よう来んと会えんなるで」とか「早よう来んと置いて行かれるで」というようなニュアンスではなくて、「先頭に立ってあなたがたを導かれる」という、そういうニュアンスなんです。つまりあなたのホームグラウンドには、イエス様が先頭に立って導いて行かれる。だから、そこで待っているものを恐れるな。石はすでに取りのけてある。イエス様と一緒に、その問題に向き合って取り組もうと思って行ってみたら、もうその問題は無くなっていた、ということだってあるでしょう。最大の問題である死に打ち勝ってくださったイエス様と一緒ならば、私たちもまた、本質的に死に勝つ力を、主イエスからいただいております。だからこそ、あの長崎26聖人で、ルドビコ茨木という12歳の少年がいましたが、さらし者にされながら歩いているのを見たあるお侍さんが「俺がお前を引き取ってやる。もったいない」とそう言いました。ところが少年は「私の中にあるこの内側から出る喜びは何にも変えがたい。お侍さま、あなたにもその喜びが欲しくありませんか。私と一緒にあなたもまいりましょう。」と言いました。そんなふうに、自分の身を守ろうとは考えなかった。そして、長崎で磔になって、「パライソ、パライソ」つまりイエス様のくださる天国、天国、と言って死んで行った。
　そんな立派なクリスチャンの生き方を、私たちもしなければならないということではない。復活の喜びと希望が、この先も信仰生活の中で、どんどんどんどん主によって与えられて行ったら、そういう行動も私たちの中から出て来るかもしれない、ということですね。またそういう殉教というようなことが遠ければ、問題やピンチの時に、自分の身を守らず・顧みずに、かえって人を助けるという生き方を、復活の命と喜びをいただいて皆さんは、すでにそうしているのですから、ますますそうしようでありませんか。

お祈りいたします。
恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神
あなた様は御子主イエス・キリストをおよみがえらせなさいました。本当に恐るべきお方と今日出会いました。十字架と復活はとんでもないできごとです。この十字架と復活によって、罪と死と悪魔は滅ぼされ、私たちは明るいいのちに生きる者とされました。大―きな石は取りのけられていて、今もその状態にあります。死という最大の問題は、取りのけられました。人生の諸問題も、取りのけられました。私たちは主イエスに導かれて、それぞれのガリラヤに行きます。そこで主イエスと共に、すでにあらかじめ勝利している問題に立ち向かっていきます。主よいつも、このイースターの1時間だけではなくて、人生のすべての日において、復活の喜びと希望の中を生きることを、おひとりひとりに得させてください。いやすでにそうして下さっていることを信じて感謝いたします。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。