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スタートからゴールまで青信号、なんてない〜公立•新着任校でのwithコロナへのチャレンジ〜

「野望なんてありません」

そう語るのは、公立高校の教員を務めながら、東京学芸大学でも教壇に立ち、一般社団法人ハッシャダイの理事、ミライ国語の会の主催者であり、時に企業の新人研修や教員研修の講師もつとめる上田祥子先生。
野望がないのに、こんなに色々チャレンジってする!?

4月に赴任されたばかりの高校では、ZoomやYouTubeの活用もすこーしずつ進められているそうです。先日登壇された『オンラインを活用した授業を実践者から学ぶ#3』では、コロナ状況下のみならず、人と共に前進していくためのヒントを頂きました。

上田先生3

※注※ 上田先生が語った風に書いてますが、筆者の解釈&要約なので、実際の話の順序とは異なり、言葉遣いの違いもあります。

誰のために、何のために私(教師)がいるのか

公教育は全ての社会活動を支えるインフラ。

自身の国語教師としての役割は
生徒が幸せでいるための、生存率を上げるための、リッチになるための国語力向上に資すること。
そのために、教室の中で教育を完結するのではなく、社会と循環する教育を展開したい、と考えています。

教育はインフラ

オンラインで様々なサービスがある中、休校にどう対応すべきか? YouTube授業? いや、私がそれやっても、林修さんには絶対勝てません。既にいい教材は沢山ある。ならば、今私がすべきは、それらを「生徒につなげる媒介者」になること。「ありモノ」をただ「やっておいてね」と生徒に送付するのではなく、ファシリテートするのが自分の役割だと考えています。

オンラインは、あくまでそのツール。
私は生徒の国語力向上に資するプロであって、YouTubeやZoom活用の専門家になりたいのではありません。これを踏まえた上で「今、何ができるか」を同僚達と共に探り、試しています。

管理職はなぜSTOPをかけるのか

どこの公立校からも聞くのが
「管理職がOKくれません(怒)(ため息)」

待って。そこ怒っても何も生まれませんよ!

教師は、生徒の成長に貢献しようと思索・追求し続ける立場。他方、管理職は、生徒・教職員の命を守り、責任をとり、組織を円滑に運営する立場。毎日様々な情報が入り熟考と決断が迫られる今、ちょっとよさそうに見える取り組みでも、危険や問題発生リスクがある限り、そう簡単に「いいよ」と言えません。管理職のSTOPも、それ相応の責任があるからこそ。

自分と管理職では立場が違うこと、重責を担う管理職をリスペクトすること。これなくしては、組織としての前進はなし難いのではないでしょうか。

自身を振り返っても、懸命に考え抜いた時ほど、そしてそれに上司がSTOPかけられると「分かってない!」と怒りを覚えたり「この組織はほんと遅い」とがっかりしてきた。でも、分かっていなかったのは本当に相手? こちらは相手を分かっていた? 自分の意見は聞いてほしいくせに・・・。

リスペクトをもって接するって?

相手をおもんばかることではないでしょうか。
「知らないこと」って怖いです。自分が使ったことがないよく分からないツールを、いかに便利かとあれこれ説明されても、それがよし、とは言いがたい。だからこそ懇切丁寧に説明する必要があります。よさそうなものを見つけたら、それを一人で調べて力説するのではなく、「一緒に試してみませんか?」と。スモールステップを踏み、ハードルを下げてから、じゃあ何にどう使うのが良いか、を一緒に検討することで、共に前進できるのではないかと。「ドヤッ(ほらっこれ正しいから!)」ってしまうのはNGですね

私がしたことをポイントで挙げると・・・
 1.(使ってみたいモノなどを)「しれっ」と見せる
 2.使い方の簡単・便利アピール
 3.できない部分はサポート
 4.一緒に遊んでみる、という感覚

ZOOM試す先生他達

勤務校の入学式は保護者の参加NG。「晴れ舞台、見せたいんだけどな・・・」という同僚の想いを知り、「Zoom試してみたら?」と職員室でつぶやいた。それに興味を示した先生達とZoom試行中の様子がこの写真。入学式当日は、保護者の方々が控え室からZoom参加できることに! さらに学年会議もZoomで開催! 職員会議は設備不良などもあり実現できていない。でも、何でもかんでもZoomとするのでなく、「できた!」体験を共有し、脳みその数を増やして、便利ツールを何にどう使えばよいか考えていけば良い。

「一緒に試してみましょう」と巻き込んだり、「若手の皆さんならいいアイディアがあるのでは」と圧をかけたり(笑)。一人/単独グループで突っ走るのではなく、相手を尊重して共に歩むきっかけを作ることが大切かと。考える脳ミソの数が増えた方が良い策を講じられるはず。

一緒に組んでいる先生が動画編集が得意と知った時は、課題の解説動画作れません? と相談。すると一晩で素敵なショート動画を作成くださりました。デジタルネイティブな若手ではなくベテランの先生です。早速YouTubeにあげると「あの先生がYouTuberに!?」という衝撃と感動が、周りの先生方にも伝播していってます。

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ベテラン先生の「動画編集技術」と上田先生の「フットワークの軽さ」により生まれた校内初!?のYouTuber(ここまでの話、全て4月に赴任したての高校でのこと・・・。こんな風にできちゃうとは、リスペクトあってこそ)

まだまだできていないことも沢山あります。でも「やってみよう」に一緒に試せた、やってみた上で検討してもらえた、という一歩一歩がふめていることが嬉しいです。

スタートからゴールまで青信号、なんてない

学校の特性として、100%大丈夫な確信が得られないとGOが出づらいところがあります。でも、現実の世に「スタート地点からゴールまで全て青信号です」なんてことはありません。
100%OKになるのを待ち続け、やっと訪れたその時からやり始める、では遅い。20%でGO!!と思ってます。

20%でGO

よく「自信満々だね」と言われることがあるのですが、自信なんてないですよ。分からないことだらけのポンコツです。でも自信がないままでも動き始めるから分かってくる、自信がついてくるんです。

誰のために、何のために私はいるのか。

それを考えたら、20%GOの取り組みについて何か言われたって、懲戒くらいはかすり傷

実際、数年前に営利企業の新人研修講師の依頼を受けようとしたとき、「訓告くらいは覚悟しなさい」という言葉もいただきました。が、今では「産官学民連携の好示例!」「働き方の多様化のモデル!」と称されたりもしてるんです。

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プレゼン後、まずあがったのはこんな質問。

「先生の野望って何ですか?」

この答えが冒頭の通り

「野望なんてありません」

そして、こう続きました

「私、世界平和のために教育やっているので・・・」


・・・。

・・・・・・。

上田先生、それを野望というのでは!?

チャレンジあふれるお話からは色々な事をやり遂げたい方にもみえますが、全ての頭に「世界平和のため」をつけて振り返ってみると

世界平和のために職員室でつぶやき
世界平和のために共に考える脳ミソを確保し
世界平和のために20%でGO

・・・・・・上田先生の取り組みがまた違った輝きがみえてきました。


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あっという間の20分。多くの参加者が「沁みた!」「勇気をもらった!」と歓声をあげる(チャットを打ち込む)セミナーでした。

上田先生、挑戦意欲とそのための工夫の共有、ありがとうございました。もうお二人の登壇者(辻先生、松原先生)、そして今回のオンラインセミナーを主催くださったGaiaxミライプラスの方々に心より感謝申し上げます。

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