人の気持ちがわかる人になりなさい


「君は悪魔がいると思うか?」


「いや、いないだろう?なんの話だ?」


「ふむ…君は人の気持ちがわかる人間か?」


「あー、まぁそこそこはわかるつもりだよ。だからなんの話だ?」


「いや、最近ニュースになっている連続猟奇殺人だが…」


「あぁ、あれは酷いな…」


「犯人がなぜ、あのようなことをするのかわかるか?」


「…いや、わからないよ。まったく理解不能だ」


「…ということは、君は人の気持ちがわからない人間だということになる」


「いやいや、ちょっと待て。それは違う」


「どう違う?つまり殺人犯は、人では無い。そういうことか?」


「う…まぁ、そうだ。まともな人間のやることじゃあない。たとえるなら…悪魔の様な人間ってことだ。悪魔の気持ちはわからんよ」


「しかし、君は言ったじゃないか。悪魔は存在しないと」


「いや、まぁそうだが。それは例えとしての話だ」


「…ふむ。ならば、私は、存在しない…ということだ」


 そう言うと奴はポケットからなめらかにナイフを取り出し、


俺の胸に深く、するりと突き刺したのだった。


そう、まったくもって俺は、人の心がわからないのだった。

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