見出し画像

家庭内別居、始めました。

「寝室を別にしたいんだけど」

つい先日、すごく思い切ってダーリンに提案した。それこそ清水の舞台から飛び降りるほどの勇気が必要だった。

「どうして?」

当然訊くよな。

「イビキがうるさいのと夜中にトイレに何度も起きるでしょ、そのたんびに私も目が覚めてしまって。近頃睡眠不足でつらいの」

嘘ではない。ただもう一つ付け加えるなら、ダーリンは必ず私の手を握って眠りに就く。私は体の一部が触れられているだけで眠りに就くことができない。いつもダーリンが高いびきをかき出したのを確認して、起こさぬようそぉーっと手を抜いてから眠るのが常だった。実はそれも苦痛の一つだった。言えなかったけど。

「そうか、横で寝がえり打たれると目が覚めちゃうの、俺もわかるよ。それに夜中に目が覚めてゲームする時にしおんに気を遣ってイヤホンとかしてるから、それ考えたら一人部屋の方が楽っちゃ楽だよな」

てっきり反対されるものと思っていた。こんなにすんなり了承を得られるとは全く思ってもみなかったので、拍子抜けしてしまった。
「じゃあ週末にでもベッドを移動させようか」
ということで、あっけなく私たちは別部屋で暮らすことになった。
それに伴い、私は私自身の机と椅子が持てるようになった。今までダーリンにはあったけれど私のものはなかったので、それが何より嬉しかった。

待望の自分の部屋ができた。以前勤めていた会社でコロナ禍によるテレワークが実施されるということになった時、1回だけお試しで会社からノートPCを持ち帰ったものの、食卓で1日仕事をするのは大層しんどく、高さの合わないダイニングテーブルと椅子で腰が痛くなってしまった。それ以来ずっと自分の書斎、というと大袈裟だが、デスク&チェアが欲しいと思いながら置き場がないので泣く泣く諦めていたところだった。それが思いもかけずこんな早く実現したのだ。

しかし。
別部屋になって初日、これで静かにゆっくり寝られると思いきや、なかなか寝付けない自分がいた。慣れない天井を見上げ、孤独感に苛まれていた。

いつも隣で寝ているのが、いつの間にか当たり前になっていた。
イビキはうるさかったけど、生存確認というか、ああ生きてる、と思って安心していた部分もあった。
手を繋がれるのはウザかったはずなのに、なくなったらとても淋しくなった自分がいた。
なんて勝手な。
私から言い出したことなのに。大変な思いして家具を移動させたのに。
今更ひとりで寝るのが淋しいだなんて。。

悶々とした日々が3日くらい続いて、私はついに音を上げた。
ダーリンは笑って「じゃあ部屋元に戻す?」と言った。
え?怒らないんですか??
「だって清々したって言われるより淋しいって言われる方が俺だって嬉しいよ」
嗚呼貴方様は仏様ですか!!!

結局のところ別部屋生活は未だ続いている。
夜就寝するまでの間、どちらかの部屋に行ってイチャイチャしている(笑)。
シングルベッドでイチャイチャするのはとても狭い。
でも以前よりイチャイチャ度がアップしたような気さえする。
もしまた引っ越すようなことがあれば、もう一つダブルベッドでも買おうかな。
なーんてね♪