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両面柄ピックは200円で飾れる


あの日、奇跡的に拾えた大好きなギタリストのピック。

ついに今日、満足のいく飾り方を見つけたので流布したい。ぜひご参考に。


このピックは両面柄。
故に写真立てのような平面に張り付ける方法は避けたし。

・両面ともいつでも手軽に拝めるように
・埃が被らないように
・柄が剥げたり傷が付かないように

これら全てを叶えるアイテムが下記の2点。
いずれもセリアで発見。


サイズは数種類あったが、とりあえず狭すぎず広すぎずのこのサイズを購入。



ケーブルクリップはさまざまな形状があったが、これがベストかと思う。


これらを組み合わせて…

こうなるのだ!



ケーブルクリップは下面が両面テープになっているので、使用して固定することもできる。

クリップ自体はシリコンなので、ピックを傷つけない。厚みが多少異なっても挟めそうである。

また、このディスプレイキューブのサイズであれば、ピック3つほどなら同じ要領で飾れそうだ。


我ながら大変満足のいく方法を見つけ出せた。
今までチャック付き透明ビニールに保管していたこと、本当に申し訳なかった。


さて、飾り方についてはここで完結。

以下はこのピックを手に入れた思い出をつらつらと溢す。


バンドマンがステージから投げるピック、スティック、ペットボトル、タオル、他。
あれが掴めたら…といつも想像しては、途方もない夢だと物わかりのいい大人な気持ちに戻っていた。


何年も前の話だが、渋谷某ライブハウスで某バンドのライブを観に行った。
整理番号が大変若く、所謂最前列のバーを掴んだまま開演を迎えた。が、

彼らがステージに現れフロアのテンションが上がった瞬間、背後にいらっしゃったガタイの良い女に肩を掴まれバーから引き剥がされてしまった。

其奴の後ろに回された自分は、そのまま最前には戻れずライブを観ることとなった。

最前に拘っているわけではないが、故意に引き剥がされるのはやはり不愉快である。
しかしライブの素晴らしさがその不愉快も掻き消してくれていた。

さて、ライブ終了時我らの目の前にいらしたギタリストは、最前の客たちに自分用であったであろう未開封のペットボトルを配っていらした。
そう、其奴も受け取っていたのだ。ちょっと悔しかった。

そんなギタリストがフロアに手を振りながら袖へ捌けていく。あぁ行ってしまう、と見えなくなるまで彼を見届けていたところ、最後に悠々とステージ際まで歩いて来られたドラマーが恐らく間抜けな自分の顔を見て笑ったかのように、こちらに口の空いたペットボトルを投げて来たのだ。

ものの1〜2秒の出来事で頭も回らず、咄嗟にペットボトルを捕まえようと手を伸ばしてみたが、ボトルは頭上で逆さになり半身びしょ濡れとなった。

少し背後にいた方が、落ちたボトルを捕まえていたのを見届けた。


ペットボトルは貰えたとしてどうするのだろう。
自分だったらどうしただろう。
やはり自分は頂けるならばピックが欲しい。
という脳内呟きをしながら、この日は帰路についた。


後にどこかでこんな話を耳にした。

ピックが自分の近くに落ちて来たら、手で拾うのではなくまずは足で踏みつけろ。
自分の足の下に収められたら、もう他の人に奪われる心配はほぼない。

と。

なるほど。上体を屈めるより何倍も速い技だ。
覚えておこう。


さてつぎは、都心から離れたとても小さなライブハウス。先程の話とは別のバンド。
この日の整理番号も大変若く、最前で観ることが出来た。

今日はこんなにも近い。
ベーシストが目の前というより頭上にいらっしゃる。ピックは今日は無理だな。

と頭の片隅で少し考えていた。

さあライブもそろそろ終わる。
最後の曲、最後の一音を鳴らし終えたベーシストは、案の定フロアの後ろの辺りを見つつピックを投げた。

はて。
遠くを見据えていた彼は次の瞬間、真上を見上げた。

自分も、隣の人も、彼に釣られたのか何か感のようなものが作動してなのかわからないが、彼と同じ真上に目をやった。

小さくカチャンと、プラスチックの欠片が落ちる音が聞こえた。どこから?
そう、自分と隣人の間の足元から。


彼は遠くへ投げるつもりだったのだが、どうやらベースの竿に手がぶつかりピックは真上へ跳ね上がり、飛距離10cmという結果に至ってしまったのだ。


足元を見た。
自分の左足と、隣人の右足のちょうど間ど真ん中にピックが落ちている。

この瞬間考えてしまったのだ。

ピックだ
欲しい
でも少し隣人寄りかも
いや自分が拾っても許される
取り合いになったら嫌だな
踏もうか
いや足蹴になんてできない
でも、あ、欲しい…

逡巡している間に、隣人が拾い上げたのだ。


未だにこの時のことが鮮明に思い出され、悔しいような、これで良かったような、今後の教訓にしたいような、なんとももどかしい気持ちになる。

ただ一つ言えるのは、この瞬間に戻れたのなら間違いなくピックに飛びかかっている。


前置きが長くなってしまったが、いよいよ初めてピックを手に入れた日の話。

この日は今は亡き新木場コーストでの対バンだった。
毛色の大きく異なる2つのバンドであったため、フロアの客の見た目も様々で面白かった。

チケットは一般でやっと取れたので、一番最後なんじゃないかというくらい遅い番号だった。

バルコニーに行ってもいいが、やはり後方であってもフロアに立っていたい。
この判断が吉と出た。

最後の曲が終わる時、ギタリストはピックを投げた。
あ、投げた、と視認できたが、それは放物線のてっぺんまでの行方しか追えなかった。きっと落ちるスピードとはとても速いのだろう。

真正面から見ていた為、距離感は全くわからなかったのだが、きっとあの辺りに落ちたのだろうなと思った瞬間、近くでカチャンと鳴ったのだ。

右斜前には二人組の男が喋りながらライブを観ていた。そんな彼らの間の足元に落ちたのだ。

もう迷わなかった。
ただ足蹴にはできなかったので、恥も外聞も捨てて両手でピックを押さえつけ確保したのだ。

きっと周りからはなんだアイツ状態だったのだろうが構わない。

そっと摘んでいる最中も心臓が鳴り止まず、もし誰かのゴミだったらと予防線も張りながら手を開いた。

ピックだった。
このギタリスト特注のものだ。


たった今までこの欠片が、音楽を掻き鳴らして人々を沸かせていたのだと感慨深くなった。


ライブは1人で行っていたので、誰にこの興奮を伝えることもできず、ポーカーフェイスの無表情で過ごしていた。

そのピックがこれである。
わかる人にはわかる。
何のバンドの、誰というギタリストのものか。


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