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百日紅は咲きつづけ

あれから、まだ一週間経っていないのに、もういろいろなことが懐かしくてたまりません。
夏という季節のせいもあるのかなあ…
暑い陽射しの中、渋谷の坂の上に通った日々は忘れない思い出です。

渋谷駅からシアターコクーンに向かう道のりで、文化村通りの街路樹として植えられていた百日紅(さるすべり)がとても印象的でした。その名の通り、長い期間、花を咲かせて楽しませてくれる木です。
今はもう舞台の幕は降りていても、まだあのあたりに漂っている気持ちを代弁してくれるように、しばらく花は咲き続けます。

…と、感傷的なのはここまでにして。各シーンの感想、行きます!

あ、その前に… *追記など:ここまでのnoteの間違い箇所などちょっと直しました(まだあるだろうな…(-_-)お許しを)。そして、ずっと気になってた音楽の回、訂正しました。1幕ラストのガイドブックを見る鉄彦と森繁のシーンは、Sigur RósのOlsen Olsenですね。大変失礼いたしました。

■増していくキャストの存在感

千秋楽まで来て、キャストの方々の一体感が増すと同時に、それぞれのキャラクターの存在感もますます濃くなっていました!

記念撮影で頭上に差し出された征治の手の近さに「はわわわあ…!」となっている村長の表情に、この日は抑えてもひくひくするほど笑ってしまいました。村長、最高でした!

四国から来た女性(演じるのは難波真奈美さん)、グラマラスな方だなあと思っていたら、(実際もそうかもしれませんが)けっこうつめものも入ってますね!? プリティ太田さん演じる村人にすれちがいざまおしりを触られ「いやあね」みたいなお芝居が挟まれていたり。舞台のそこここに、最終日になって気づくことがたくさんあって、全員をもっとじっくり、まだまだ何度も観たかった…!(放送&Disc化待ってます!)

■叫び
千秋楽。最後だからといっても芝居はいつもどおりに進んでいくわけですが、やはり叫ぶシーンは、みんな、もう声がかれても構わないというように、激しかったように感じました。
冒頭のシーンの、ノクスの嶋の叫び。
草一の号泣。純子の慟哭。ふたりとも鼻水が流れるのも構わずに泣いていた姿…胸を打たれました。
純子さんは、可憐でぶっきらぼうで力強く哀しく美しく、…複雑な存在感でとても惹きつけられました。必死で森繁を助けようと奮闘する姿、それから「すっごい時間無駄にしてた気がするー」というノクス結に対してかける「無駄じゃないと思うよ」という台詞。良かったです。
同じ「母」でも全然違う玲子さん。でも結に見せる表情はやっぱり母なんですよね。征治に訴える「興味を持ってしまったの」という台詞は、あくまでも理性的に理由を述べながらも、自分の感情に戸惑っているような子供のような声色で、玲子という人の哀れさを感じてなんだか切なかった。そういえば、結に血を与えるシーンも、この日はいつも以上に唇から洋服にまで血が滴って、美しさと迫力に目が釘づけでした。

結を演じるあっちゃんは、回を追うごとに発声が良くなって、あんなに激しく叫ぶシーンがあるし、ふつうならだんだん声が嗄れていきそうなものなのに逆だったから、びっくりしました。AKB時代からの鍛錬の賜物なのでしょうか…。それから、あのノクス変容のシーン、芝居がだめだったら全体がお笑いというか台無しになりかねない難しいところ、大役をしっかり務めていたと思います。まだ23歳。すごいです。

鉄彦も叫びました。克哉への暴力シーンの最後、連続で激しく殴りつけて離れたあとに「あああああ!あああぁ!」と叫んだのを聞いたのは、この時が初めてだったと思います。荒ぶるままの叫びというよりは、慟哭に近いような、助けを求める悲鳴のような叫びに、衝撃を受けました。何度も観てきたシーンなのに、まだこんな衝撃があるなんて…。

そして、その直後に結と目が合うと、狂気の表情から、急にくしゃりと顔をゆがめて泣きそうな子供の表情になる…その変化も鮮やか。

そのあと、克哉が苦しんで死ぬ時、あらぬほうを見ている鉄彦。鉄彦が見ているのはどこなんだろうと以前はわからなかったのですが、太陽を見上げているんですね…。舞台上方のライトが騒乱の終わりとともに強く輝きます。夜が明けて陽が昇った、その太陽をまぶしそうに見上げている。白日の下に晒された暴力の結果と、いつもと変わらぬ明るい太陽。太陽の残酷さ。

克哉の叫びも、ここに来てまた変化が(みんな、ほんとうにもう…涙)。
克哉が死ぬとき、以前はただ「ぐわあーー」と叫んでいたと思っていたのですが、この日は「姉ちゃん、姉ちゃん、姉ちゃん」と純子のことをひたすら呼んで息絶えました。もともとお姉ちゃん大好きな克哉でしたが、この最期はもうずるい。
その後の純子の叫びも、より切なくなりました。

■鉄彦&森繁は今日も
鉄彦と森繁はますます仲良し。灰皿投げも絶好調で、いつものやりとりの後、
森「煙草吸うの?」
鉄「いや吸わない」
森「じゃなんで灰皿持ってるの?」
なんて、今までにない会話があったりして。(綾野さんほんとに禁煙してたりして?)

1幕ラスト前、金田と征治と草一の「めんどくさい」やりとりが繰り広げられる背後でこそこそしゃべってる鉄彦と森繁。首に腕を回して引っ張り倒しそうになったり、キャッキャウフフとはこれのことか、と(笑)。

■森繁の美しさ
初日に初めて見た時からなんて美しい人なんだろうと思った成宮さん演じる森繁(綾野さんについてもいつもきれいきれいと思っていますが、鉄彦はそういうキャラじゃないから…(^^;)。

前も書いた気がするけれど、「見返り森繁の美しさ」!
雑誌を返された後に寂しげに微笑む時と、終盤鉄彦を殴った後で泣いている鉄彦を見る時と、見返り森繁+照明フェードアウトの合わせ技は、レンブラントの絵画のようでした(たまにタイミング合わずに、振り返る前に照明が落ちちゃった回は残念でたまらなかった…)。

鉄彦を殴るときのアクションも、この日はただ鉄彦の拳をよけるだけじゃなくて、ひらりっと優雅に跳んでいて、森繁の余裕がより明確に。

そして、隠れた名シーン。
終盤、ノクスになった結を見送った後の金田と草一の名場面が上の舞台で繰り広げられている間、遠慮してその場を外している森繁は、アクリルの床の下の世界でその光景を見上げています。
金田が「申し訳ない!」と土下座をし「ノクスは病気だ…」と泣き笑いしている時、森繁の瞳から大粒の涙が何度も…!(前はここ泣いてなかったですよね!?成宮さん泣いてる!とびっくりしてしまいました)
これまで、あまりこの場面の森繁に意識が向いていなかったのですが、下の世界にひとりでいる森繁は、静かに情感をこめて存在していました。
金田を見上げ、涙し、そして草一がノクスの当選券を鉄彦に渡そうとすると、「だめだ、受け取らないで鉄彦」というように激しく横に首を振る。でももちろん鉄彦にはそれは見えていないから届かない。切ない!
そんなにも鉄彦がノクスになることを止めたいと思っているのに、いざ鉄彦と顔を合わせると「ノクスになるなら歓迎する!」なんて言うし…!

森繁側の通路席だったとき、エンディングでものすごい笑顔で駆け抜けて行った成宮さんが忘れられません。世界の中心みたいに輝いていました。

(もはや完全に成宮ファン。そして欲を言えば、綾野さん側の通路も体験したかった…!2階席から観たときは鉄彦の走りのあまりの速さにびっくり!オペラグラスで表情をとらえるのは不可能でしたー…)

■注目の…
毎回みなさん注目の鉄彦のおしり。この日は見せるだけにとどまらず、ぽりぽりとかいたり、だめ押しにぺちっと叩いたり(この日はおへそも見えるし、肩も見えるし、露出多めの大サービス!…だったことをここに記しておきたいと思います(._.))。

(シーン感想のラストがおしりってどうなんだ…・笑)

■おわりに

今、これまで書いてきた観劇noteを読み返してみると、「あれ、その後で観たときはもうそんなこと思わなかったな」という点もけっこうあります。でも、その時々で感じたことはそれぞれ本物で…。

こんなに同じお芝居に何度も通ったのは初めての経験だったのですが、役者さんのお芝居も毎回違うし、客席側のコンディションも違う。組み合わせで無限に広がり、かつそれぞれが1回きり、というところが舞台の面白さの1つなんでしょうね。

そして、いわば虚構である物語で真剣に人を楽しませようとしている人たち(役者さん、スタッフさん)と、その時間を共有できることの喜び! 生きている喜び、人間であることの喜びをひしひしと感じる時間でした。

もう1つ、幸せだったこと。好きな人(綾野さん!)が、その時間その場所にたしかにいるということを、たとえ自分がそこに行けない日でも感じられる1か月だったこと。こういう幸せもあるんですね~。

こんなに近くで、役を生きる綾野さんを目に焼きつけることができて、本当に幸せでした。

どうか、またこのような機会が遠くない将来にありますように!

(個人的な観劇の記録を読んでくださったみなさま、どうもありがとうございました。)

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